待望のホール公演で艶舞 柳家細川流舞踊コロナ禍にひとときの楽しみを提供
柳家細川流舞踊師範らによる舞「漁火挽歌」
釜石市の「柳家細川流舞踊」=細川艶柳華(伊東恵子)家元=は5月30日、大町の市民ホールTETTOで震災復興支援チャリティーショーを開いた。当初、昨年4月に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2度の延期を余儀なくされ、1年余りを経て待望の発表会が実現した。会場にはこの日を楽しみにしていた観客が集まり、コロナ禍を忘れさせるひとときに笑顔を広げた。
釜石、大槌、山田の各支部などで稽古に励む24歳から85歳までの22人が出演。家元による長唄舞踊「松のみどり」で幕を開け、演歌や歌謡曲、民謡などに振り付けをした新舞踊を中心に27演目を披露した。名取の踊りでひときわ注目を集めたのが、今回の出演者中唯一の男性、細川恵ノ丞(千葉陽斗)さん(24)。「夜叉のように」であでやかな女形を披露した後、「狼」では一変してりりしい男踊りを見せ、観客から盛んな拍手を送られた。
色香漂う舞に拍手喝采!観客を魅了した細川恵ノ丞さんによる「夜叉のように」
同団体の発表会には、通常は子どもたちも出演し観客を沸かせるが、コロナ禍の諸事情から今回は出演を取り止め。師範や名取などベテラン勢を中心に大人の舞い手が総力を結集し、舞台を創り上げた。きらびやかな衣装を身にまとい、たゆまぬ稽古の成果を発揮する見応え十分の舞台に観客は酔いしれ、明日への活力をもらった。
箱崎町の佐々木長市さん(80)は「最高だね。踊りも演出も素晴らしくて。準備も大変だったろう」と関係者の労をねぎらい、「自分も老人クラブの集まりなどで踊ったりする。やっぱりこういう楽しみがないとね。またやってほしい」と大満足で会場を後にした。
同団体が震災後、市内で発表会を開くのは、2016年のホテルでの開催以来。新設された同ホールでの初公演を目指し、19年から準備を進めていたが、新型コロナのため、開催までに3年を要した。この間、門下生らが体調を崩したり、学校や仕事との両立が難しくなるなど、実現には数々の試練を伴った。会場では各種感染症対策を徹底し、客席は通常の半分400席ほどに制限。観客の協力を得て無事に公演を終えた。
ソーシャルディスタンス席で舞台を楽しむ観客
曲の世界観を円熟の舞で見せた「藤十郎の恋」。細川艶柳華家元(右)らのステージ
艶柳華家元(72)は「客数を制限するのは寂しいが、こういう状況下で見に来てくれた方がいたことが何よりうれしい。コロナが落ち着いたら福祉施設のボランティア慰問も再開し、皆さんに喜んでいただけるようにしたい」と望んだ。本発表会では会場案内や受付、感染症対策などの要員として高校生アルバイトが活躍。「これを機に若い人たちが舞踊に興味を持ってくれたら」と艶柳華家元。
同団体は、細川流舞踊を立ち上げ、30年以上率いた細川艶奨柳(ツヤ)家元が13年1月に逝去(享年75)後、一番弟子だった艶柳華さんが先代の遺志を引き継ぐ形で、「柳家細川流舞踊」として再スタート。今年、改名から8年を迎えた。
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