復興支援の救命艇 根浜で進水、スクール開校 水難救助技術向上へ〜便利なコンテナ格納型、英国人が中心となり開発
神事の後、救命艇を海に運ぶ関係者。開校式に続き、さっそくスクールの講習がスタートした
東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた釜石市鵜住居町根浜で18日、新たに導入された救命艇による水難救助のスクールが開校した。コンテナ格納型の救命艇は、復興支援活動で釜石を訪れた英国・ウェールズのロビン・ジェンキンスさん(ロンドン芸術大講師)が中心となり開発。根浜での活用をモデルに、日本の水難救助技術向上の一翼として貢献したい考えだ。
同スクールは、救命艇を贈られた一般社団法人根浜MIND(岩崎昭子理事長)とジェンキンスさんが代表を務めるNGO「アトランティック パシフィック レスキューボートプロジェクト」が主催。開校式には受講する県内外の大学生や地元関係者ら約30人が出席し、救命艇の安全を祈る神事や進水式が行われた。
ジェンキンスさんは2013年12月、芸術文化による心の復興支援を行うフューチャーラボ東北実行委(東京都)の活動で来釜。根浜の惨状に心を痛め、自身がボランティアで取り組む水難救助活動を通じた支援を思い立った。地域奉仕の一環で海難救助員を養成するウェールズのアトランティックカレッジ(国際的高等教育機関)の教師、生徒らと2年をかけて救命艇を製作。今回のスクールには、製作に携わり訓練を積んでクルー資格を取得した5人も指導者として参加している。
ジェンキンスさん(後列右から3人目)ら開校式の出席者
救命艇は、強固な素材を用いた全長4・8メートル、幅1・8メートルのゴムボート。動力付きでエンジン込みの全重量は230キロ、乗員3人での最高速度は26ノット。艇庫となるコンテナは長さ12・5メートル、高さ、幅ともに2・7メートル。内部には乗組員が装備を整えるスペースもある。コンテナは、フィッシャリーナの復興工事終了後、防潮堤に隣接して据え付けられる予定。
根浜MINDの三浦勝理事(釜石ヨットクラブ会長)は「緊急時の救命活動はもちろん、トライアスロンやヨット大会での救助支援体制にも活用したい。根浜を先駆けに他の水域にも広げていければ」と将来を見据える。
スクールの訓練は、150年の歴史を誇るイギリス王立救命艇協会の救助法を基に実施。19日まで初級・中級コースの指導が行われ、22~26日まで消防職員などを対象としたプロフェッショナルコースが開講する。
ジェンキンスさんは「24時間対応できるアクティブなボートになることを願う。スクールの期間中、皆さんと話し合いを重ね、継続的な使われ方、訓練体制を模索していきたい」と話した。
(復興釜石新聞 2016年8月20日発行 第513号より)
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