夏の高校野球県大会、釜石 春夏甲子園ならず〜2回戦 延長13回、激闘実らず 一関学院に1-2
終盤のピンチ。内野陣が岩間投手に駆け寄り、肩をほぐして緊張をやわらげる=11日、盛岡市の県営球場
第98回全国高校野球選手権岩手大会は8日から盛岡市の県営球場などで行われ、春、夏連続の甲子園出場を目指す釜石は2回戦で第1シードの一関学院に1-2で敗れ、連続出場はならなかった。惜しくも敗れはしたものの、春の県大会の覇者を相手に延長十三回までもつれ込む激闘を演じた。甲子園1勝の立役者となった岩間大(3年)が153球を熱投。バックも最後まで集中力を切らさず、堅い守りでエースを盛り立てた。文武両道、理想の高校野球を体現した釜石はファンに強烈な記憶を残し、短い”夏”を終えた。春の県大会でベスト8まで進み、シード校として夏に臨んだ釜石商工は2回戦で一関一に1-3で逆転負け。甲子園出場の夢は初戦で散った。
理想の高校野球を体現 さわやか、球史に記憶残す
◇2回戦(11日/県営)
一関学院
0000100000001 2
0001000000000 1
釜石
(延長十三回)
(一)大竹―斎藤
(釜)岩間―大尻
▽本塁打 大竹(一)
▽三塁打 千葉愛(一)新沼(釜)
▽二塁打 小椋(一)
釜石は四回、大尻(2年)の左越え本塁打で1点を先制したが、五回に岩間(3年)が本塁打を浴び同点とされる。その後は双方が譲らず、延長にもつれ込んだ十三回、一関学院が1死満塁から中犠飛で勝ち越し、そのまま逃げ切った。
釜石は九回、新沼(2年)が右中間を破り、守備の乱れを突いて本塁を狙うもタッチアウト。十回、十三回にも出塁したが、あと1本が出なかった。
2時間48分に及ぶ激闘。153球を投げ抜いたエース岩間を、佐々木偉彦監督は「ワクワクするような試合にしてくれた。最後まで彼らしいピッチングだった」とたたえた。エースの熱投を堅守で盛り立てたナインについては、「本当に下手くそだが、気持ちの強い子どもたち。個性にあふれた彼らが最後にその気持ちを見せてくれた」。そう言うと、監督も涙をこらえることができなかった。
春夏甲子園出場に向け、早くも2戦目で当たった第1シードの壁。九回には新沼が右中間を深々と破り、ランニング本塁打であわやサヨナラ勝ちかと興奮させる場面もあった。佐々木監督は「普通に勝って、もう一度甲子園に行こう」と選手を送り出した。ナインもこれに応え、最後まで落ち着いてプレー。相手を上回る10安打を放ち成長を示したが、夢の再現はかなわなかった。
熱投岩間 153球投げ抜く
不動のエース岩間大が夏の大一番で、センバツ1勝の熱投を体現して見せた。帽子に書いた「強気」の文字を見ては気持ちを奮い立たせ、強力打線に立ち向かった。
先頭打者を三振に打ち取ると波に乗った。伸びのある直球を内外角に投げ分け、スライダー、チェンジアップでタイミングを外す絶妙の投球術で第1シードを苦しめた。延長に入るあたりから肩が張り、足もつりそうになったが、こらえて延長十三回を投げ抜いた。
延長十三回、153球を投げ抜いた岩間大投手。センバツ1勝の快投を再現した
選抜大会から帰った後は疲労で投げられない時期が続き、春の大会ではエースナンバーを譲りベンチから戦況を見守った。夏の初戦ではスタミナ不足も懸念されたが、その不安も吹き飛ばす激投。先制本塁打で岩間を助けた大尻悠矢捕手は「直球のスピードはセンバツを前にした昨年秋より増していた」と目を丸くする。
強気の配球も岩間がリード。最後は「自分の弱さが負けにつながった」と声を詰まらせたが、2年の大尻は「岩間さんに厳しく、こうしろと言われて目が覚めた。強気の攻めを引き継いでいく」と誓う。
打っては3安打の大活躍。延長十三回には右前打で出塁。意地で同点の好機をつくったが、あと1本が出なかった。
父母会長を務める父、金田茂さん(48)は「小学校から続けてきた野球の集大成。肘の痛みも口にせず、最後まで意地と覚悟で投げ抜いた。敗れはしたが悔いはない。よくやってくれた」と息子の粘投をねぎらった。
(復興釜石新聞 2016年7月13日発行 第503号より)
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