希望を胸に高校卒業〜震災乗り越え、今後の活躍が復興の後押しに
在校生と最後のエール交換をする釜石高の卒業生
釜石高(互野恭治校長、生徒530人)の卒業式は1日、釜石市甲子町の同校で行われた。全日制の卒業生177人(普通科147人、理数科30人)が夢や目標を胸に、3年間を過ごした学び舎(や)を巣立った。
卒業生は文武両道を実践し、多くの友情を育んだ。2年生の時に迎えた創立100周年では記念行事で活躍。今月下旬に野球と空手道の全国選抜大会が控えており、卒業生の3年間の頑張りが今回の出場につながった。
保護者や在校生らが見守る中、卒業生はしっかりとした足取りで入場。一人一人に卒業証書を授与したあと、互野校長は「厳しく困難な環境の中で前向きに生きてきた諸君に感謝する。故郷の復興はまだこれからだが、みなさんの今後の活躍が復興の後押しとなると信じる」と、はなむけの言葉を贈った。
卒業生を代表して平松航大君が「新しい希望を胸に、夢に向かって進んでいきたい。自分なりに未来を切り開いていくので、温かく見守ってほしい」と答辞を述べた。
「岩手の山川 太平洋の…」。校歌を斉唱したあと、在校生、卒業生が最後のエール交換をし、式を締めくくった。
作業療法士を目指し、仙台市の短大に進学する及川史佳さん(釜石市中妻町)は「父が義足で、そういう人を手伝いたい。医療で地元に貢献できたら」と夢を膨らませた。「野球一色だった」と振り返る前川柊哉君(大槌町吉里吉里)は千葉市の消防局に就職。「早く消防士として活躍したいので、就職を選んだ。いろんなことを学び、地元に戻って復興の力になりたい」と意気込む。
釜石商工高(千葉尚校長、生徒367人)の卒業式は1日、釜石市大平町の同校体育館で行われ、4科の121人が巣立った。釜石工高と釜石商高が統合して7回目の卒業式。一人一人に卒業証書が贈られ、3年間皆勤賞22人、精勤賞9人を在校生や保護者らが拍手でたたえた。
保護者に感謝の気持ちを伝える釜石商工高の卒業生
千葉校長は式辞で「みなさんの3年間にわたる活躍、挑戦は心と体の財産となる。釜石商工ブランドを色濃くしてくれて、ありがとう。東日本大震災から間もなく5年。生徒諸君に感謝の芽が育っていると実感する。きょうは社会人となる自覚、決意を固める出発の日。種をまく社会人になってほしい」と、はなむけの言葉を贈った。
生徒会長の石川凱生君(2年)が送辞。卒業生の大瀧美輝さんは「仲間に支えられた3年間だった。家族に感謝し、先生の教えを思い、社会に貢献できる大人になる。1、2年生は笑顔あふれる学校にしてほしい」と答辞を述べた。
退場する生徒はクラスごとに教職員に一礼。保護者席の前では、「これまで育ててくれて、ありがとうございました。これからも、よろしくお願いします」などと感謝の思いを伝えた。
東京の企業に就職する岩井大悟君(電子機械科)は「震災の時は釜石東中1年で、小学生を連れて避難した。高校3年間の一番の出来事は卒業できたこと。ぎりぎりだったから。これからは親孝行できるようにがんばりたい」と、最後のホームルームに向かった。
卒業生の8割は就職する。そのうち地元は62%、県内外38%で、就職者の2割は関東の企業に内定している。
(復興釜石新聞 2016年3月5日発行 第467号より)
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