思いは一つ「第九」響き渡る、大平中生は校歌を高らかに
県内外から集った約150人の合唱愛好者らが「歓喜」の声を上げ、師走の釜石を彩る=6日、釜石高
師走の釜石に今年もベートーベンの「第九」が響き渡った。6日に釜石高校体育館で行われた「かまいしの第九」演奏会(同実行委員会主催、釜石市、市教委共催)。東日本大震災で釜石市民文化会館が被災した後も会場を移して途切れず続き、今年で38回目。県以外から集まった合唱愛好者や釜石高の生徒など約150人が震災からの復興を願い、高らかに声を上げた。「オーケストラと歌おう」のコーナーには大平中(高橋亨校長)の全校生徒124人が出演。最後に客席を埋めた約400人の市民と共に「歓喜の歌」の声を上げ、復興への思いを一つにした。
演奏会は大平中生の歌声で幕開け。同校の校歌のほか、復興支援ソング「花は咲く」をさわやかに響かせた。客席には父母らも詰め掛け、晴れの舞台に大きな拍手を送った。
心一つに「校歌」などを歌い上げた大平中の全校生徒
そして、「第九」。約50人編成のオーケストラが第2楽章までを奏でた後、第3楽章から4人のソリストが入場。第4楽章の途中から合唱団が立ち上がり、「歓喜の歌」でクライマックス。150人が一つになり、壮大なハーモニーを響かせた。
大手ゼネコンの熊谷組から派遣され、2年前から嬉石・松原地区のかさ上げ工事など復興事業の現場代理人を務める相見秀毅さん(50)は「みんなの気持ちを一つにする音楽の力に感動した。今後の仕事にも励みになる」と感激に浸った。
鳥取県出身で、釜石に来るまでは音楽とは全く無縁の生活。第九メンバー募集の新聞記事を目にし、「まちの歴史や市民の思いを少しでも知りたい」と昨年から活動に飛び込んだ。しかも、2年目の今年はバスからテノールに転向。見事に歌い切り、「怖いもの知らずです」と大きな体で笑い飛ばした。現場の仲間も舞台づくりなど裏方として全面的に協力した。
相見さんは「(釜石での復興事業は)最低でもあと4年はかかりそう。仕事に区切りが付くまで、まだまだ釜石のみなさんと感動の日々を重ねたい」と意を新たにした。
初めてオーケストラに合わせて歌った大平中2年の堀切友裕君(次期生徒会長)は「最初は合わせるのが大変でしたが、自分たちの思いは届けることができた」と胸を張る。高橋校長は「生徒たちの一生の思い出になる」と感謝した。
6年前の長男に続き二男の今井宙翔君(2年)がステージに立った平田の今井沙織さん(38)は「ちょうど私が生まれた38年も前から続く第九は、その歴史がすごいと思う。その演奏会を2人の息子が体験できて、とてもうれしい」と拍手を送った。
(復興釜石新聞 2015年12月9日発行 第443号より)
釜石市
釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。