現場に居合わせた3人が人命救助 消防本部から感謝状 助けられた男性「感謝しかない」

人命の救急救助の功績で感謝状を贈られた(左から)小岩昭さん、佐藤結香さん、東谷剛さん
釜石市内の施設駐車場で突然倒れた男性に救命処置を行い、救急隊につないだ男女3人に9日、釜石大槌地区行政事務組合消防本部から感謝状が贈られた。現場に居合わせた人たちが連携し、迅速、適切な処置で救われた命。駒林博之消防長は「勇気ある行動が手繰り寄せた見事な救命劇」と3人をたたえた。贈呈式には助けられた男性が家族を伴って訪れ、命を救ってくれた3人に深い感謝の気持ちを伝えた。
感謝状を贈られたのは釜石市の郵便局員、東谷剛さん(48)、大船渡市の介護士、佐藤結香さん(43)、釜石市のシルバー人材センター会員、小岩昭さん(78)。救急の日(9月9日)に釜石消防庁舎(鈴子町)で贈呈式が行われ、「消防協力者として多大な貢献をした」として、駒林消防長が3人に感謝状を贈った。
救急事案が発生したのは8月3日午前11時30分ごろ。釜石市大平町の市立鉄の歴史館に郵便配達にきた東谷さんは配達を終えて帰ろうとしたところ、大きな物音で異変を察知。入り口付近の自動販売機に飲料の補充作業をしていた男性(45)が倒れているのを発見した。つまずいたか、熱中症かと思い、駆け寄って声をかけたが、意識がなく、「舌が喉に落ち込み、呼吸が止まりそうな状態。『これは』と思い、助けを求めに館内に駆け込んだ」(東谷さん)。同館スタッフと東谷さんが119番通報。

傷病者をいち早く発見、館内にいた人に助けを求め119番通報した東谷さん
夏休み中の子ども3人と同館を訪れ、受付にいた佐藤さんは緊迫の事態に、中学2年の長男に同館のAED(自動体外式除細動器)を借りてくるよう指示。東谷さんが119番の電話をつないだまま、佐藤さん、同館スタッフとして勤務していた小岩さんと3人で、胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAEDによる除細動(電気ショック)を試みた。「電気ショックを与えると一時、呼吸が戻り、顔色も良くなったが、再び止まるの繰り返しで…。電話で救急隊に逐一、状況を伝え、指示を仰ぎながら処置を続けた」(東谷さん)。3回目のショックボタンを押そうとした時に救急隊が到着し、引き継いだ。

AEDを操作し心肺蘇生の処置を開始した佐藤さん(右)。東谷さん、佐藤さんとともに胸骨圧迫などの処置を続けた小岩さん(左)
3人はいずれも職場などで心肺蘇生法の講習を受けており、救急隊が到着するまでの間、一連の処置を交代で行った。AEDの電極パッドを男性の体に貼り、操作を開始した佐藤さんは「講習を受けていたのとAEDの音声ガイドがあるので、比較的冷静に安心してできた」と話す。救命の現場に遭遇した子どもたちは衝撃を受けていたようだったが、「今後、同じようなことがあった時、子どもでも人を呼んだりAEDを取りに行ったり、できることを実践してくれれば」と佐藤さん。
男性が倒れた場所は同館の事務所の前ではあったが、飲料を積載していた車両が視界を遮り、「中からは分からなかった。東谷さんが早期に発見してくれて、本当にラッキーでした」と小岩さん。現役時代を含め3~4回、心肺蘇生法の講習を受けており、「限られた知識でも、とにかくやるべきだと痛感した」。回復した男性の姿を目にし、「まさか今日お会いできるとは。元気になられて本当に良かった」と安堵の表情を浮かべた。
倒れた男性を発見し、即座に周囲に協力を求めた東谷さんは「(驚いて)一瞬固まりつつも体が動いたのは、やはり講習を受けていたからだと思う。居合わせたのが私たちだけだったので『やるしかない』と。男性のことがずっと気がかりだったので、元気な姿を拝見できてうれしい気持ちでいっぱい」と顔をほころばせた。
表彰後、駒林消防長は“救命のリレー”をつないだ3人に「皆さまが示してくださった勇気と見事な連携は、釜石大槌地区の救命意識の輝ける模範。尊い行動に対し、敬意と感謝の意を表する」と称賛の言葉を送った。

感謝状贈呈後、駒林博之消防長(右上)が3人の行動をたたえ、人命救助への協力に深く感謝した

「助かって本当に良かった」。3人は当時を振り返り、居合わせた人がためらうことなく行動する必要性を改めて実感した
助けられた男性によると、倒れたのは心室細動によるもの。心臓のポンプ機能が失われ、直ちに治療をしなければ死に至る危険な状態で、3人の迅速な処置がなければ、さらに重篤なことになっていた可能性もある。男性は幸い後遺症もなく、8月25日に退院し、自宅療養中。この日は、3人に直接お礼を言いたいと、感謝状贈呈式の場に足を運んだ。「命を助けていただき、本当に感謝しかない」と男性。式の後、涙ぐむ家族とともにあふれる感謝の気持ちを3人に伝えた。
同消防本部は2010年度から、人命救助などに功績のあった人を消防協力者として表彰する制度を開始。今回の事案を含め、これまでに14案件54人が火災の初期消火、救急救助、水難救助などで表彰されている。

釜石大槌地区行政事務組合消防本部の消防協力者等表彰要綱に基づき表彰。3人の行動は傷病者の救命に大きく寄与するとともに地域住民の模範となるもの

釜石新聞NewS
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