防災、伝承と小泉八雲の関わりは!? 釜石市郷土資料館で特別展 「明治三陸大津波130年」にちなみ

「明治三陸大津波130年」にちなみ開催中の特別展
東日本大震災から15年。そして今年は、1896(明治29)年の三陸大津波から130年となる。釜石を含む三陸地域は津波被害を幾度となく体験。「地震津波はいつか必ずあるものだ」と心に留め、備えることを考えてもらおうと、「明治三陸大海嘯(かいしょう)130年」と題した特別展が釜石市鈴子町の市郷土資料館で開かれている。テーマは「稲むらの火と小泉八雲、そして釜石」。防災教材として知られる物語、明治の文豪との関わりから、地域の歴史を振り返ることができる。
特別展は同館津波・震災展示室(常設展示139点)の一角に開設。明治三陸大津波発生当時の英字新聞ジャパン・ガゼット社の記者が釜石を中心に被災状況をリポートしたリーフレット「日本の大災害(The Great Disaster in Japan)」(複製)、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン/1850~1904年)との関わりを紹介する解説パネル、「稲むらの火」が掲載された昭和初期の教科書「尋常科用 小學國語讀本 巻十」などを並べる。

津波・震災展示室の一角(左)に設けられた特別展コーナー

外国人による明治三陸大津波に関するリポートの文面
津波発生は1896年6月15日。現在の釜石市にあたる区域での死者・行方不明者は6400人余り、海岸近くの家屋や漁具、漁船などの大部分が失われる大被害を受けた。同社の記者ら2人は21日に横浜を発ち、花巻から人力車、荷馬車を乗り継ぎ遠野に宿泊。22日には仙人峠を越え釜石に入った。当時の釜石町を歩き、インタビュー。23日には海路、南の集落を取材、途中の海上で遺体を収容した。同夜、横浜へ戻るため釜石をあとにした。
このリーフレットは2011年4月、富山大学附属図書館にある小泉八雲の蔵書「ヘルン文庫」から発見された。八雲研究、顕彰を目的とする八雲会会員の中川智視さんが訳出。取材した被災地が釜石であることから、中川さんが複製した資料、抄訳、独自の解説文を郷土資料館に提供した。展示ではファイル資料として英文、和訳が用意され、手に取ることができる。

ファイル資料としてリポートの和訳が展示されている

防災教材や釜石と小泉八雲の関わりを示すパネルが並ぶ
小泉八雲は、1897年に「仏の畑の落穂」という随筆集を米国の出版社から出した。この中に、江戸時代の1854年に起きた安政南海地震津波で多くの人命を救ったとされる和歌山県広村(現広川町)の逸話を元にした「A Living God」(生き神)という物語がある。ここに「Tsunami」(津波)という言葉が出てきて、世界に知られるきっかけになった。やがて、物語に感銘を受けた小学校の教員が「稲むらの火」として普及し、小学校の教科書に収録された。

「稲むらの火」が掲載され尋常小学校で使われた国語の教科書
「八雲は96年に起きた明治の大津波に衝撃を受け、のちに『稲むらの火』と知られることになる『生き神』という物語を書いたのではないか」。そう考察するのは、この特別展を企画した同館職員の川畑郁美さん。NHK連続テレビ小説(通称・朝ドラ)「ばけばけ」で注目された小泉八雲が「防災教育につながる物語を書いたのはなぜか」と思ったのをきっかけに、同館所蔵の資料から答えにつながるヒントを探った。
そして形にしたのがこの特別展。「日本の大災害」の中には、「釜石の悲劇と苦難を細かく語るには…重い精神的負担となることだろう」などとつづられている。目を通した川畑さんも「生々しい惨状を伝えている」と胸を突かれた。
このレポートを「八雲は目にしたはず」と、川畑さんは推察する。「津波のこと、逃げること、命を守ることを伝えたかったのではないか。見知ったことを伝え、語り継ぐために、明治とは時代は異なるが、和歌山のエピソードを世に出した。その伝えたい思いにつながるものの一つに釜石の出来事もあったのでは。そう考えると、とても興味深い」と想像を膨らませている。

三陸を襲った地震津波の被害状況を伝える常設展示のパネル

130年前の津波被害や人々の様子をとらえた写真パネル
関連展示として、明治三陸大津波が発生した後の釜石市内を捉えた写真パネル12点も並べる。陸に打ち上げられた大型船、全壊した家屋、ぼう然とする人々…。東京都在住の古写真収集家、石黒敬章さんが保存していたもので、同館では10年ぶりに公開する。
特別展は6月21日まで開かれている。開館時間は午前9時半~午後4時半(最終入館は午後4時)。火曜日休館。

釜石新聞NewS
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