夢をカタチに!高校生の挑戦 レンタルスペース×古着屋オープン 釜石大観音仲見世に新風
釜石大観音仲見世通りに開店した古着店とレンタルスペース
高校生とその母親がそれぞれ店長を務める2つの店が、釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りに開店した。レンタルスペース「crush on(クラッシュオン)」と、古着屋「たすいち」。親子がタッグを組んで営業する。「若者の居場所をつくりたい」「みんなのやりたいを応援したい」「釜石を盛り上げたい」という思いを形にした。
クラッシュオン店長は市内在住の小笠原皐さん(16)=一関学院高通信制課程1年。たすいちは母・梓さん(39)が店長だが、主導権を握るのは皐さんだ。
古着店に立つ小笠原皐さん(右)と母親の梓さん
「crush on」(手前)と「たすいち」が入る建物の外観
幼い頃にダンスを始め、その衣装に使う古着が好きだった皐さん。中学生の頃には店を持つ夢を持っていた。「本当にやりたいことは?」。進路選択の際、自分自身に問いかけた。「もとからあるものは変えたくなる。ゼロから生み出したい。やっちゃえ」。起業を見据え通信制の高校への進学を決めた。学業の傍ら、市主催の起業塾も受講し、経営のノウハウを学んで準備した。
旧土産物店を改装し、広さは“はんぶんこ”。1月1日にプレオープン、31日に本格的に営業を始めた。古着店にはレディース、メンズ、キッズ用の衣類が並び、バッグやアクセサリーといった雑貨もある。置かれているものは、皐さんが「ビビッときたもの」ばかり。同年代の人たちに手に取ってもらえるよう、価格は1000~4000円を中心に設定する。
仕入れのポイントは「かわいさ」とPRする小笠原皐さん
昭和感あり⁉土産物店時代に使われた棚や置物が活躍中
レンタルスペースには4枚の大きな鏡を設置しており、ダンスや演劇などの練習での利用を見込む。冬場の現在は、こたつを持ち込んでいて、「ただ、のんびりしてもらう」要素を演出。誕生会などイベント利用も歓迎する。利用人数に関わらず、大人は1時間660円、高校生以下は550円。グループ利用で大人がいる場合は660円とする。
クラッシュオンは英語で「夢中になる」という意味で、その言葉を使ったオリジナルブランドを、クリエーターとしても活動する梓さんと考案。関連グッズ(Tシャツ、スエットなど)を古着店に並べている。
「使い方は自由に」。小笠原皐さんが経営するレンタルスペース
オリジナルブランド「crush on」のロゴ入りスエット
開店から数日たった2月のある日。2人は、来店した人の希望を聞きながら品出ししたり、おしゃべりを楽しんでいた。が、実はこの通り、人影はまばら。かつては約20軒の店が営業していたが、今は2軒だけ。初詣やイベントなど行事があれば人出も伴うが、理由がなければ市民が訪れる機会は多くない。なぜ、ここなのか…。
シャッターが下りたままの建物が並ぶ釜石大観音仲見世通り。左側の手前が新店舗
「面白くて、なじみがある場所だから」と皐さん。この通りでは、大人たちがにぎわいを取り戻そうとマルシェやアートイベントなどを催していて、子どもの頃から一家で参加していた。楽しさ、何かに夢中になる人たちの姿を記憶にインプット。そこに集う人たちのように「自分も何かしたい。できることでまちを元気にしたい」と淡い思いを抱いてきた。そして、本当は自分がやりたかった「古着屋がマッチする場所」でもあったから。
釜石が好き―。そんな思いが、皐さんから伝わってくる。そこには、東日本大震災時に支えてもらったことへの感謝がある。津波で自宅が全壊。「当時は守ってもらった立場。まちは復興したけど、元気がない。今度は私がまちを盛り上げる番」と凛とした表情を見せる。
そんな皐さんを、少し離れたところから見守る梓さん。「やってみたらいい。楽しいことをどんどん。やれるタイミングがベストだと思うから。こうした新しい動きがまちの起爆剤になればいい」と、あたたかい視線を送る。
ほほ笑ましい親子のやりとりを見られるのも売り!
学業があるため、店を開くのは週4回。金曜~月曜の午前11時~午後6時までが基本。「ゆる~く、気負わずにやっていきたい。高校生ならではの目線で、気軽に集まれる場所をつくっていけたら」と皐さん。「世間話をしに立ち寄って」とアピールする。
「一般的じゃないかも。でも、いろんな選択肢があるんです」と話す小笠原皐さん
自分たちが楽しいと思うことで、お客さんもハッピーになってくれたら―。一つの願いをかなえると、やりたいことが増えてきた皐さん。編み物、釣り、ネイル、ダンス教室、パン作り…。この空間を生かした活動も思案中だ。「時間が足りない」。笑顔が印象的な16歳の挑戦はまだ続く。「釜石には知らないだけでたくさん面白いことがある。それを伝え、つなげていきたい」
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