「楽しく防災、未来につなぐ震災」で顕彰 釜石高・夢団 喜び力に、うのスタで語り部へトライ
「活動が評価されました」とうれしそうに受賞を報告
東日本大震災の伝承や防災活動に取り組む釜石高(釜石市甲子町)の生徒有志グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」はこのほど、復興庁主催の「『新しい東北』復興・創生の星顕彰」に選ばれた。若い世代による地域に根差した活動は未来につながるものであり、他地域のモデルになると評価。メンバーらは喜びを力に、「楽しく学ぶ防災」を発信し続ける。3月にはそんな思いを具現化する語り部活動を釜石鵜住居復興スタジアム(うのスタ、鵜住居町)で予定。地元のラグビーチーム日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)のホーム戦に合わせ観客らに伝えるべく、学びを深めている。
「新しい東北」復興・創生の星 受賞を報告
夢団は2019年のラグビーワールドカップ開催を機に結成。現在は1~3年生約60人が所属する。被災体験の語り部、防災食の研究、防災ゲームの開発、動画による発信などの活動を展開。県内外のイベントに参加し、同世代との交流も広げる。
同顕彰は、震災被災地で進む魅力あふれる「新しい東北」の創造に向けた取り組みを発信するのが目的。今年度は全国から123件の応募があり、夢団など10団体が選ばれた。県内では、ウニの再生養殖事業などを展開する洋野町の会社も受賞。顕彰式は2月11日に仙台市で行われた。
青木校長(右)に喜びを伝えた夢団メンバーら
同校の青木裕信校長への報告は15日。夢団代表の佐々有寿(ありす)さん(2年)は喜びをにじませつつ、「活動を世界に広げることを期待されていると感じた」と背筋を伸ばした。双子の妹で副代表の安寿(あんじゅ)さん(同)は「高校生が活動することで地域が元気になる」「ゲームが面白くて勉強になる」といった声が励みだと紹介。同じく副代表の赤石澤一会(いちえ)さん(同)は「若い世代にとって、防災はどうしても重いというイメージがある。だからこそ、楽しく伝えるという視点で活動してハードルを下げられたらいい」とうなずいた。
夢団の取り組みを支える「さんつな」代表の伊藤聡さんも同席。青木校長は「学校内外でワクワクするいい経験をし、成長しているのがうれしい。釜高生としてプライドを持って行動してほしい」と期待した。
「体験者の思い、どう伝える」伝承研修で考える
語り部活動につなげようと研修に臨む釜高生
うのスタでの語り部に向け、震災経験者から話を聞く研修や伝えたい内容をまとめた台本作りを進める。17日は鵜の郷交流館(鵜住居町)で、生徒6人が活動。震災の津波で妻を失った栗林町の木村正明さん(68)の思いに耳を傾けた。
鵜住居小事務職員だった妻タカ子さん(当時53)は一人、校舎に残って津波に襲われ行方不明になったとみられる。「なぜ、一人だけ残ったのか」。木村さんは真相を知るため、震災後4年間、学校や市、教育関係者らと話し合いを重ねた。そこから得た教訓が学校の地震・津波防災マニュアルに盛り込まれ、▽避難時には児童生徒、そして全職員が命を守る行動をとる▽訓練も全職員が臨む―などの対策につながったことを紹介。そうしたやりとりで見えた事実、真実を語る本も自費出版した。
震災の体験や伝承の取り組みを伝える木村正明さん
さらに鎮魂と教訓を伝えるため、地域の人たちと協力し、うのスタに祈念碑を建立した。刻む言葉は「あなたも逃げて」。木村さんは「自然にはかなわない。万一の時は考えるより、まず逃げて。安全なところにまで逃げてから、次のことを考えればいい」と考えを示した。さらに、「あなたの命は、あなただけのものではありません」と強調。「忘れないで。あなたが逃げたことで誰か助かる人がいることを」と切望した。
この碑の前で生徒たちは思いを発信する。その活動に対して思うことはと質問された木村さんは「若い人たちがどんどん交代して伝えていかないと教訓というのはつながらないから、頼もしい」と頬を緩めた。
生徒たちは真剣なまなざしで木村さんの語りに聞き入った
語り部デビューを目指す森美惠さん(1年)は、看護師の母親から聞いた医療現場の様子や驚いた自身の気持ちも織り交ぜて伝えるつもりだ。政屋璃緒さん(同)は居住する宮古市田老地区の被害や人々の思いも踏まえた台本を作成中。「震災では失ったものも多いが、学んだこともあって、次に起こる災害に備えることはできる。準備しておこうと、前向きな気持ちになってもらえたらいい」と思いを巡らせる。
伝えたいことを整理しようとメモを取る生徒ら
どんな思いを、どう伝えるか。言葉をノートにつづる
夢団は22日にも市外の若手語り部3人の活動に触れる研修を実施。伝承活動の本番となるSWホーム戦は3月3日と10日に予定される。
釜石新聞NewS
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