探す、見つける、知る喜び「今年は何種類?」野鳥の宝庫・釜石で水辺の観察会 自然散策のススメ


2024/01/24
釜石新聞NewS #地域

釜石・片岸公園に飛来しているオオハクチョウ=13日、水辺の鳥観察会

釜石・片岸公園に飛来しているオオハクチョウ=13日、水辺の鳥観察会

 
 県沿岸有数の野鳥生息地、釜石市片岸町の鵜住居川河口周辺で13日、恒例の水辺の鳥観察会(市主催)が開かれた。東日本大震災の津波で大きな被害を受けた同所。2021年に減災機能を兼ね備えた水辺環境として整備された片岸公園には、今年もオオハクチョウが多数飛来。参加者の目を楽しませた。河口周辺では他にも、大小さまざまな色とりどりの野鳥を確認。フィールドスコープや双眼鏡で見ると、各個体の特徴がよく分かり、参加者は野鳥観察の面白さを体感した。
 
 子どもから大人まで32人が参加。釜石野鳥の会(臼澤良一会長、7人)の5人が講師を務めた。始めに片岸公園駐車場で、同会会員が周辺で見られる野鳥を写真で見せながら紹介。体色や鳴き声など判別のポイントを教えた後、片岸公園から釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近までを歩きながら野鳥を探した。
 
釜石野鳥の会の会員が周辺で見られる鳥を紹介

釜石野鳥の会の会員が周辺で見られる鳥を紹介

 
沼地に憩う野鳥の姿を探す参加者(上段)。双眼鏡やフィールドスコープで確認(下段)

沼地に憩う野鳥の姿を探す参加者(上段)。双眼鏡やフィールドスコープで確認(下段)

 
 駐車場から沼地に向かうと、聞こえてきたのは「オオハクチョウ」の鳴き声。羽が灰色の幼鳥を含む群れが見られた。同会の菊地利明事務局長は「ハクチョウは天敵に襲われないよう水面に浮いたまま寝る。朝早く飛び立ち、田んぼにこぼれた米を食べたり、岸辺に生える草の根を食べる。日本で見られる鳥の中では体重が重いほう」と説明。観察時の注意点として、距離を保つことや餌を与えないことを挙げた。周辺を定期的に散歩している方によると、これまでに最大で42羽が確認されたという。沼地ではこの他、頬が白い「ホオジロガモ」や頭が茶色い「ホシハジロ」なども見られた。
 
さまざまな種類の野鳥が集まる片岸公園の沼地

さまざまな種類の野鳥が集まる片岸公園の沼地

 
公園を散歩する人たちの目を楽しませているオオハクチョウの群れ

公園を散歩する人たちの目を楽しませているオオハクチョウの群れ

 
 鵜住居川の中州では「アオサギ」や「クロガモ」、「イカルチドリ」などを確認。鵜片橋上流に目をやると石の上で憩う「マガモ」の雄(頭が緑)、橋の下に広がるヨシ原では「ホオジロ」も見られた。参加者が楽しみにしていたのは“飛ぶ宝石”と称される「カワセミ」。ここ数年、鎧坂橋付近で確認されており、この日は一瞬だが、飛ぶ姿が見られた。特徴である頭から背中にかけての青色が見え、参加者を喜ばせた。
 
鵜住居川水門の近くで見られたアオサギ。体色のコントラストが美しい。下段奥の右側はマガモの雄(緑色の頭が特徴)

鵜住居川水門の近くで見られたアオサギ。体色のコントラストが美しい。下段奥の右側はマガモの雄(緑色の頭が特徴)

 
左上:ダイサギ。右上:イカルチドリ。下段:ヒドリガモ。公園内の草地で餌をついばむ

左上:ダイサギ。右上:イカルチドリ。下段:ヒドリガモ。公園内の草地で餌をついばむ

 
 約1時間の観察後、駐車場に戻ると…。道路沿いに並ぶ電柱の上に鎮座していたのは、タカの仲間「ノスリ」。トビよりも一回り小さく、短めの尾は開くと先が丸みを帯びているのが特徴。獲物を見つけると急降下し、野を擦るように飛んで捕まえることから、この名がついたといわれる。
 
 最後は見た鳥を確認する「鳥合わせ」。見られたのは29種類で、昨年並みだった。鵜住居町の町田音和ちゃん(5)は鳥と恐竜が大好き。保育園の帰りにほぼ毎日、ハクチョウを見に来るほどで、「鳥見るの楽しい。びっくりしたのはカワセミ。パパが買ってくれた図鑑に載っている鳥をもっと見てみたい」と興味津々。母理美さん(41)は「名前を知らなかった鳥も見られた。釜石は自然が豊か。娘にはここでしか見られないものをいっぱい見せてあげたい」。「また来ようよ」と話す音和ちゃんを温かく見守った。
 
 今回の観察会では子どもの参加も増えた。菊地事務局長は「興味を持ってくれて感激。生で見られる場所があるのが釜石の良さ。本物を見ることは子どもたちにとってもいい経験になる」と観察会の継続を願う。
 
子どもから大人まで楽しめる野鳥観察。名前が分かるとさらに面白い!

子どもから大人まで楽しめる野鳥観察。名前が分かるとさらに面白い!

 
夢中でカメラをのぞき込む子に笑顔を見せる臼澤会長(左)。右上:電柱に止まるノスリ。右下:街中でもあまり見られなくなったスズメの群れ

夢中でカメラをのぞき込む子に笑顔を見せる臼澤会長(左)。右上:電柱に止まるノスリ。右下:街中でもあまり見られなくなったスズメの群れ

 
 同観察会は市生活環境課が1977年から継続。悪天候や震災の影響で中止された年もあるが、蓄積されたデータは同所の自然環境の推移を知る一助にもなっている。鵜住居川河口周辺は震災前、野鳥が営巣できる樹木も多く、観察会では50種前後が確認できた。津波で河口の位置が変わり、堤防内外の自然環境も大きく変化したことで、被災後数年間は、見られる野鳥の種類、数ともに激減したが、観察会が再開された直近の過去3年間は30種ほどで推移している。
 
 「さらに草木が増えてくれば、野鳥の生息、飛来数も増える可能性はある。最も重要なのは鳥が餌を食べられる環境。食物連鎖がうまくいくことで、より多くの鳥が生息できるようになる」と野鳥の会の臼澤会長。近年はサケの遡上が減ったことで、産卵後のサケなどを餌とするワシの姿が見られなくなっているという。
 
鵜住居川周辺は絶好の野鳥観察スポット。皆さんもぜひ楽しんでみては?

鵜住居川周辺は絶好の野鳥観察スポット。皆さんもぜひ楽しんでみては?

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