製鉄所隆盛で栄えた「昭和」の釜石 市民遺産で回顧 郷土資料館企画展が面白い!新年は5日から
市郷土資料館で開催中の「かまいしの古き良き時代 ザ・昭和 ~鐵(てつ)と共に~」
釜石市の歴史や文化を知るなら鈴子町の市郷土資料館(佐々木豊館長)。さまざまなテーマの展示で釜石を学べるが、年に数回行われる特別展示も興味深い。現在、開催中の企画展「ザ・昭和」は、製鉄所の繁栄で人口9万人以上を記録したこともある戦後の時代にスポットを当てる。多くの市民が行き交うまちはたくさんの商店や飲食店、娯楽施設が並び、活気を呈した。その古き良き時代を遺物や写真などで振り返る。展示は来年1月14日まで(12月28日~1月4日までは年末年始休館)。
「鉄のまち」と称される釜石市は、太平洋戦争末期の1945(昭和20)年、米英連合国軍による2度の艦砲射撃で壊滅的な被害を受けた。戦後、復興への鉄需要の高まりで、釜石製鉄所は国内の主力として急成長。まちは企業城下町として栄え、63(同38)年には人口9万2000人を突破した。大渡町から東前町までの通りは最大の繁華街で、製鉄所の三交替勤務に伴い、飲食店などは昼夜問わずにぎわっていたという。
その“昭和の釜石”を垣間見ることができる今回の企画展。会場では同館の所蔵物のほか、市内の企業などから寄せられたさまざまな遺物が公開されている。商売で使われた金銭登録機(今のレジスター)、商店や飲食店、宿泊施設、企業などの名前入りマッチ、灰皿、菓子製造に使われた道具、料亭の状差し…など。まちの繁栄の象徴、デパート(丸光、及新)などの包装紙もあり、当時を知る人にとっては懐かしい記憶がよみがえる。廃業した店も多く、まちの歴史を物語る貴重な品々が並ぶ。
建材を扱っていた大町の「前田商店」で使われていた金銭登録機
浜町にあった料亭「福寿楼」の状差し(中)と看板(左)
デパートや商店の包装紙(左側)と店などで身に着けていた前掛け(右側)
市内の収集家が集めた商店や飲食店、会社などの名前が入ったマッチ
今年創業100年を迎えた小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は1968(昭和43)年まで、現只越町3丁目(今の釜石郵便局の場所)で操業。当時の社名は釜石酒造商会。本企画展では、小川町に移転する際に目抜き通りで行ったパレードの写真や、「浜千鳥」の前の商品名が入った量り売り用の漏斗(じょうご)、当時製造していたサイダー瓶などが展示される。
今年創業100年を迎えた「浜千鳥」に関する展示コーナー
企画展で展示されている浜千鳥の“キンレンサイダー工場”の写真と同サイダー瓶
市内在住の写真家、藤枝宏さんが撮影した昭和50年代の釜石の街並み写真も展示。煙突が立ち並ぶ製鉄所、「不夜城」と言われたまちの夜景、映画館のある中心商店街など、まちの活気を感じさせる光景が凝縮される。
藤枝宏さん撮影の昭和の街並み写真展示コーナー
東日本大震災の津波で流失した「呑兵衛横丁」。この通りは昭和30年代、大にぎわいだった
同館では「当時を生きた人が懐かしさを感じるのはもちろん、昭和を知らない世代にも釜石の歩みを知ってもらえる展示。常設展示品以外のものがほとんどなので、ぜひこの機会にじっくりと観賞してもらえれば」と来場を呼び掛ける。問い合わせは同館(電話/FAX 0193・22・2046)へ。
釜石新聞NewS
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