「釜石市震災誌」10月下旬発刊へ 完成に向け作業大詰め 編さん委が最後の会合


2023/09/11
釜石新聞NewS #防災・安全

第5回釜石市震災誌編さん委員会=4日、市役所

第5回釜石市震災誌編さん委員会=4日、市役所

 
 釜石市が2021年から作成に取り組んできた東日本大震災を後世に伝える震災誌「撓(たわ)まず屈(くっ)せず」が、10月下旬に発刊されることになった。4日、同誌編さん委員会(委員長=齋藤徳美岩手大名誉教授、委員15人)の最後の会合が市役所で開かれ、内容、構成などを大筋で承認。今後、文言の修正、レイアウトの変更など細かな調整を行い、完成を目指す。
 
 同震災誌は庁内検証委員会が年度ごとにまとめてきた記録誌を基に作成。発災当日、発災から1週間、1カ月の動きに加え、暮らしやなりわいの再建、復興まちづくり、未来の命を守るための取り組みなど9つの部で構成。61のテーマで事実や教訓を記述する。各部に有識者のメッセージ、トピックス、市民の声を入れ、より理解が深まるようにした。
 
 最終会合ではA4版(カラー)、300ページ超に編集された冊子体の原稿案を見ながら意見を交わした。事務局は、前回の会合で指摘された震災前の小中学校の防災教育の記述を充実させ、市内の津波記念碑(東日本大震災以前の津波含む)などの紹介ページを追加したことを説明。委員からは、当初掲げた震災誌の大きな目的「未来の災害から命を守る」ことに絡み、「他市町村が知りたい内容をすぐに入手できるよう、参考にしやすい(使いやすい)形に」という意見があった。外への発信を考慮し、地名の振り仮名記載、使用写真のクレジット、キャプションに関しても言及があった。
 
原稿案について意見を述べる委員

原稿案について意見を述べる委員

 
冊子の形になった釜石市震災誌原稿案を確認

冊子の形になった釜石市震災誌原稿案を確認

 
 野田武則市長は被災時、阪神・淡路大震災(1995年)の記録誌が役に立った経験を明かし、「釜石の教訓もきっと役に立つ部分があるだろう。さらに精査し、より良い形での発刊を目指したい」とした。
 
 21年11月に設置された同編さん委は、同市の震災検証、復興に関わってきた大学教授や被災地域の住民、発災時から対応にあたってきた元市職員らで構成。委員会内の作業部会が庁内検証委作成の素案の調整、修正などを担い、この日まで計5回の編さん委会合で内容や構成などを協議。発災から復旧、復興への10年の歩みを体系的に記録しながら、得られた教訓を今後に生かしてもらえるような震災誌を目指してきた。
 
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 「委員がこだわったのは、『未来の命を守るために』ということ」。齋藤委員長は発災から12年を経ての震災誌発刊について、「なぜ千人を超す犠牲が出たか、きちんと検証し反省した上で、次の災害への対策を講じてきたのが釜石市。そうした取り組みまでを記載する震災誌は他には例がない」と価値を示し、「願う形のものがようやく姿を現した」と完成までの最終調整に意欲を見せた。
 
 同震災誌は当初、22年度内の完成を目指していたが、各種作業に時間を要したため、発刊時期を遅らせていた。震災誌は300部作成し、市内の公共施設や学校、国、県の関係機関、復興支援で世話になった自治体などに配布する。入手を希望する個人には有料で対応する予定。

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