津波に襲われた海辺で植物観察 釜石・唐丹町片岸 市民ら震災後の環境変化を学ぶ


2023/07/05
釜石新聞NewS #地域

唐丹町片岸の海岸で行われた植物観察会=1日

唐丹町片岸の海岸で行われた植物観察会=1日

 
 東日本大震災の津波被害を受けた釜石市唐丹町片岸の海岸で1日、砂浜や周辺に生える植物の状況を調べる観察会が開かれた。震災後の復興工事で高さ14.5メートルの防潮堤が整備された一帯。砂浜では震災後に発芽したアカマツの幼木や震災前から自生するハマヒルガオなどが見られた一方、土壌環境の変化で繁殖が進んだとみられる外来種の植物が複数見つかった。
 
 観察会は長年、地元の植物の観察・研究を続ける釜石植物の会会長の鈴木弘文さん(78)が開き、市内外から7人が参加した。鈴木さんの案内で、津波による流出を免れた砂浜と、防潮堤工事で重機が入った堤体付近の草地を回り、震災から12年が経過した現在の植物の生育状況を確認した。
 
 砂浜では海浜植物の代表格、ハマヒルガオが見られた。震災前ほどの群生には至っていないものの、薄桃色のラッパ形状の花が咲いているのが確認され、花が終わって結実した種入りの実も見つかった。同様に海岸の砂地に生え、横に長く根を伸ばすコウボウシバも。三陸の海岸部に多いアカマツは、震災後に落ちた種から発芽したとみられる低木が点在していた。
 
右:花を咲かせたハマヒルガオ、左上段:ハマヒルガオの実、同下段:実の中の種

右:花を咲かせたハマヒルガオ、左上段:ハマヒルガオの実、同下段:実の中の種

 
左:アカマツの幼木、右:コウボウシバ

左:アカマツの幼木、右:コウボウシバ

 
 女性たちが歓声を上げたのは花をつけた植物。小さな花が螺旋(らせん)状に並んで咲くネジバナ(別名モジズリ)はラン科の多年草。海岸で見られるのは珍しいといい、「かわいいね」「きれいだね」と注目を集めた。また、愛らしい花をつける一方で茎に鋭いとげがあるママコノシリヌグイ(タデ科)は、名前の由来が参加者を驚かせた。このほか、イヌシデ(カバノキ科)やエニシダ(マメ科)などの樹木も確認された。
 
左:マメグンバイナズナ、右:らせん状に花が並ぶネジバナ(モジズリ)

左:マメグンバイナズナ、右:らせん状に花が並ぶネジバナ(モジズリ)

 
サヤエンドウのような実(左下)をつけたマメ科の植物に興味津々

サヤエンドウのような実(左下)をつけたマメ科の植物に興味津々

 
 同所の環境について、鈴木さんが指摘したのは外来種の増加。産毛のような葉が特徴のビロードモウズイカ(ゴマノハグサ科)、黄色の細かい花が円すい状に広がるセイタカアワダチソウ(キク科)、花粉症の原因としても知られるオオブタクサ(キク科)は繁殖力が強く、「樹木がなかなか入ってこられない」と鈴木さん。工事で土が掘り起こされた堤体近くの草地ほど増加傾向が顕著だという。
 
外来種のビロードモウズイカ(左)は繁殖力が強い

外来種のビロードモウズイカ(左)は繁殖力が強い

 
plant7844

水門と一体的に整備された防潮堤の前に広がる海岸が観察場所

 
 同海岸一帯で鈴木さんが確認している植物は約120種。「未確認のものを含めると200種ぐらいはあるのでは」と鈴木さん。この日は、鈴木さんが今年4月に同所で初めて見つけたムシクサ(在来種)も紹介した。
 
 雫石町から足を運んだ60代女性は「内陸では目にしない植物もあり興味深い。津波で大きな被害を受けた場所でもこうして再生している。植物の生命力はすごい」と驚いた様子だった。鈴木さんは「植物を調べることは環境の証明になる。人間は自然を理解し、未来のことも考えて共生していくべき」と話した。
 
 さまざまな植物の名前や特徴を学ぶ参加者。普段見過ごしている植物も名前を知るといとおしい

さまざまな植物の名前や特徴を学ぶ参加者。普段見過ごしている植物も名前を知るといとおしい

釜石新聞NewS

釜石新聞NewS

復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。

取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム


釜石のイベント情報

もっと見る

釜石のイチ押し商品

商品一覧へ

釜石の注目トピックス