釜石SW 首位・浦安に19-92 震災被災地での特別な試合 無念の大敗 次こそホーム勝利を
リーグワン2部第8節 釜石SW-浦安=12日
NTTジャパンラグビーリーグワン2部の釜石シーウェイブス(SW)RFCは12日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで浦安D-Rocksと対戦。19-92(前半0―45)で敗れた。1勝7敗、勝ち点5で最下位。レギュラーシーズン最終戦は19日、同スタジアムで清水建設江東ブルーシャークスと対戦する。
全勝でリーグ首位の浦安に必死で食らいついたが、猛攻を止めることができなかった。釜石は前後半で14トライ(認定を含む)を奪われ、今季最多の92失点。相手選手の個々のスキルの高さ、戦術のうまさに何度もディフェンスを突破され、スタンドからため息がもれた。前半、敵陣ゴール近くまで切り込む場面もあったが、ボールをキープできず、得点には至らなかった。
釜石の反撃は後半5分。敵陣22メートル付近の攻防から今季新加入のフランカー武者大輔、SOジョシュア・スタンダーとつなぎ、フェイントで走り抜き初トライ。27分には、後半出場のSH村上陽平が的確な判断でゴール前まで運び、最後はロック、ベンジャミン・ニーニーが決めた。浦安も攻撃の手を緩めず、点差が開く中、釜石は試合終了間際に意地の1トライをもぎ取った。
後半5分、ジョシュア・スタンダーのトライで釜石SW初得点
敵陣ゴール前に切り込み、2本目のトライにつなげた村上陽平(中央)
試合終了間際、左隅インゴールに飛び込んだキャメロン・ベイリー(右)
「特別な日に特別な場所でプレーする」意義-。東日本大震災から12年となった日の翌日。被災した小中学校跡地にできた希望のスタジアム。「勇気を届けよう」と強い思いを持って臨んだ一戦だったが、結果は大差での敗戦。WTB小野航大主将は「ここで後ろ向きな姿は見せたくないという思いがあったので…。情けない」と目を赤らめた。レギュラー最終戦は1週間後。下を向いてはいられない。「今日のゲームから何を感じ、どう変われるか。この先が重要」と前を見据えた。
試合前には選手、観客らが東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげた
この日の試合は、スポーツツーリズムを通じて地域経済の活性化に貢献する「一枚岩プロジェクト」と協働。首都圏からの観戦ツアー、スポーツによる地方創生をテーマにしたオンラインシンポジウムなどが行われた。試合前には、釜石市出身のアーティスト小林覚さんがプロジェクトにまつわる言葉を織り込んで制作したアート作品のお披露目もあった。来場者は1208人。
小林覚さんの作品お披露目(撮影:西条佳泰 / Grafica Inc.)
釜石高生徒による震災伝承活動も行われた。生徒有志で結成する防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」の17人が活動。施設内に建つ震災の教訓を伝える祈念碑の前では、2年生4人が語り部として自らの経験などを伝えた。
この日が語り部デビューの久保陽嘩さん。保育園での昼寝の最中、大地震に見舞われた。迎えに来た親と避難し、寒い車の中で一夜を明かした。海岸部の自宅では逃げ遅れた祖母が津波にのまれたが、幸い助かることができた。小中学校では地震発生時の行動を学んだ。最近は大人の率先行動が見られないことに違和感を覚えるという。「皆さん、災害の恐ろしさを忘れていませんか?」。こう呼びかけた久保さん。「災害は忘れたころにやってくる。災害は待ってくれない」。自分や大事な人の命を守るために「今できることはたくさんある」と備えの大切さを訴えた。
自身の体験を基に災害への備えを呼び掛けた久保陽嘩さん(右)。多くの人が足を止め聞き入った
「もっと、こうしていれば」「詰めが甘かったのかな」―。震災後、大人たちから聞く言葉に久保さんは「防災はやりすぎがちょうどいいと思う。同じ釜石でも被災の有無で意識の差がある。災害があったことを忘れないでほしい」と願った。
震災の教訓を伝える石碑の前で行われた「夢団」による語り部活動
防災食班は自分たちで考えたストック食品のレシピなどを紹介
夢団は本年度、防災食の研究にも取り組む。会場では、常温保存食品を日常的にストックして災害時にも応用する方法や簡単アレンジレシピを紹介。秋山瑠奈さん(1年)は「災害時には食料が足りなくなる。備えが大事。日常食の活用法なども参考にしてほしい」と願った。
釜石新聞NewS
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