釜石・根浜海岸「ハマナスの里」再生へ 5年後の開花目指し市民らが種まき&植樹


2022/04/25
釜石新聞NewS #地域

根浜ハマナスプロジェクト種まき&植樹イベント

根浜ハマナスプロジェクト種まき&植樹イベント

 
 東日本大震災の津波で失われた海浜植物「ハマナス」の群落復活に向け、釜石市鵜住居町根浜地区で、種から苗木を育てる取り組みが始まった。根浜ハマナスプロジェクト実行委(岩崎昭子代表)が行う2年目の活動。16日は一般市民や支援者ら約80人が参加して種まきと苗木の植樹が行われ、ふるさとの原風景復元へ思いを共有した。
 
 震災前、市内最大の海水浴場だった「根浜海岸」には、紫がかった濃いピンク色の花が美しいハマナスが咲き誇り、地元住民自慢の景観を広げていた。震災の津波で約1・3キロにわたる砂浜の半分以上が流失。砂地に自生していたハマナスもその姿を消した。
 
津波で流された海浜植物について説明する岩手県立大の島田直明准教授

津波で流された海浜植物について説明する岩手県立大の島田直明准教授

 
 根浜を再び“ハマナスの里”にと、市民有志によるプロジェクトが昨春始動。津波に襲われながらも辛うじて生き残った松林のハマナスから種を採取し、苗木に育てて海辺に戻す取り組みを始めた。被災した青葉ビルの修復や薬師公園の環境整備で同市復興に貢献してきたフランスの自然派化粧品メーカー「ロクシタン」、災害支援を専門とする公益社団法人シビックフォース(東京都)が同活動を支える。
 
 種まきには親子連れらが参加。木製パレットから再生したプランター約40個に昨秋採取した種を植え付けた。プロジェクトに協力する岩手県立大総合政策学部の島田直明准教授(植生学、景観生態学)によると、ハマナスはミニトマトのような実を付け、1つの実から約50粒の種が取れるという。発芽には、まく前の種に一定期間寒さを経験させる必要があり、この日の種も採取後、冷蔵庫で保管していたもの。参加者は芽が出るよう願いながら1千粒以上の種をまいた。
 
ハマナスの種まき。薄茶色の種を間隔を空けて数粒ずつ植えた

ハマナスの種まき。薄茶色の種を間隔を空けて数粒ずつ植えた

 
プランターに自分の名前などを書いた札を差した

プランターに自分の名前などを書いた札を差した

 
 プロジェクト初の苗木の植樹も行われた。昨春種をまき、背丈40センチほどに成長した苗木5株を野田武則釜石市長、支援組織の代表ら5人が防潮堤内側の砂地に植えた。順調に育てば、4~5年で花を咲かせるという。
 
ハマナスの苗の植樹。子どもたちの代表も作業に協力

ハマナスの苗の植樹。子どもたちの代表も作業に協力

 
「根浜で元気に育ってね」。植樹した苗に水を与える子ども

「根浜で元気に育ってね」。植樹した苗に水を与える子ども

 
植樹した野田市長、支援関係者を囲んで記念撮影

植樹した野田市長、支援関係者を囲んで記念撮影

 
 八雲町の川端虹河君(双葉小4年)は、初めて知ったハマナスに興味を持ち、「立派な花を咲かせてほしい。自分で種まきしたのが大きくなるのを見にきたい」と望んだ。「植物や虫を見るのが好き」という虹河君。母智栄さん(46)は「こういう催しにはできるだけ参加している。好きなことを存分に楽しんでくれたら」と温かく見守る。
 
 根浜の海浜植物を取り戻す活動は、一足先に始まったハマボウフウ(セリ科、多年草)の再生で成果をあげている。生き延びた株から種を取って育て、徐々に増やしていったハマボウフウは今では1千本以上にもなるという。同活動を先導した根浜地区住民、佐々木虎男さん(83)=根浜ハマボウフウ研究会会長=はハマナスの再生も喜び、「根浜は風光明媚(めいび)な所。景観はやっぱり大切。みんなで協力し、最高の憩いの場所にしていければ」と願う。
 
 プロジェクトでは今後、苗木用の枝せん定や種の採取、収穫した実の活用などを予定し、一般市民らとともに活動を進めていくことにしている。

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