「釜石はまっこラジオ」放送終了〜ふるさと元気隊 発信続けて9年、「ありがとう」で締めくくる


2020/04/09
復興釜石新聞アーカイブ #地域

最終回の放送を終え、笑顔を見せる(左から)大坂さん、小田島支局長、野﨑さん

最終回の放送を終え、笑顔を見せる(左から)大坂さん、小田島支局長、野﨑さん

 

 釜石市が提供するラジオ番組「釜石はまっこラジオ」が3月31日、放送を終了した。東日本大震災直後に復旧・復興に関する情報を伝える臨時災害放送局(災害FM)として始まり、復興の歩みと合わせてコミュニティー放送(地域FM)的要素を加えた体制へと変化しながら地域情報の発信を続け9年。スタッフ2人で臨んだ最後の放送では新たなまちの動きを伝え、「釜石のこれからを注目してほしい」と思いを電波に乗せ、役目を終えた。

 

 釜石の災害FMは、11年1月に釜石支局を開設していたエフエム岩手(盛岡市)の協力を得て誕生。市が運営し、復旧復興関連情報などを届けた。14年4月から同社に運営を委託し、「釜石やっぺしFM」「はまっこラジオ」の2番組を放送。16年4月からは「はまっこ~」に絞った。

 

 17年3月の災害FM終了に伴い、同社の周波数で、市提供の「釜石はまっこ~」がスタート。2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けた機運醸成を図るのが狙いで、3人のスタッフが市の臨時職員として番組づくりに携わった。火曜日の正午から25分間、ラグビーW杯関連の話題、地域のイベント情報などを紹介。ラグビーW杯が終わり、役割を果たしたとして、年度末での放送終了、釜石支局の閉局が決まった。

 

 最終回を担当したのは、パーソナリティーの大坂美和さん(48)と音響調整機材(ミキサー)を担当する野﨑広美さん(41)。ラグビーW杯1周年記念事業に向けた新たな動きや復興情報のほか、前日まで精力的に取材した食の話題などを送った。

 

 最後と知ったリスナーから次々と届く、「残念」「寂しい」「いつかまた声を聴く機会を楽しみにしています」などのメッセージも紹介。大坂さんは「皆さんの声が原動力。やってきてよかったと感じる瞬間。ありがとう…という言葉しかない」と気持ちを吐き出し、放送を終えた。

 

 「9年。長いけど、あっという間。大変なこともあったけど、続けて良かった」と実感を込める野﨑さん。災害FMの開始から約半年後にパーソナリティーとして加わったが、伝える情報の多さでのどを痛め、音響担当に転向した。

 

 震災で実母、義父母ら大切な人を亡くし、「命の大切さを伝え、大事な人を守りたい」との思いが継続の力になった。「聴いてくれる人、地域が元気になるのに少し役立てたかな。誰か、何かの力になっていたら、うれしい。燃え尽きた感じ」と、すがすがしい笑顔を見せた。

 

 12年1月から関わる大坂さんは、取材した内容を間違えず、取材相手の伝えたい思いを変換せずに届けることを大切にしてきた。週1回、限られた時間で伝える難しさを感じ続け、最後も「もっとうまく伝えられたかも」と回想。それでも、人との出会いと別れを繰り返し、閉局まで関わることができ、「ほっとした」と肩の荷を下ろした。

 

 小田島大支局長(64)=同社放送部技術担当シニアディレクター=は「いざという時の拠点局は必要。なくしたくはないが、一区切り。地域に合った報道のあり方を提案していきたい」と先を見据えた。

 

 春、何かが終わり、何かが始まる季節。放送が終わった2人は、新しい一歩を踏み出すための充電期間に入る。

 

(復興釜石新聞 2020年4月4日発行 第881号より)

 

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