命を守る災害文化会議、高校生らが伝承活動報告〜震災の記憶 次代につなぐ、「かまいしの伝承者」54人認定


2020/02/05
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

命を守る災害文化会議で伝承活動を報告する釜石高の生徒ら

命を守る災害文化会議で伝承活動を報告する釜石高の生徒ら

 

 東日本大震災の教訓の継承について考える釜石市の「命を守る災害文化会議」(議長・丸木久忠市社会福祉協議会長)は1月30日、市役所で4回目の会合を開いた。震災の記憶を次代につなぐため、市が昨年始めた人材の育成研修を受講し、「大震災かまいしの伝承者」(語り部)に認定された高校生らが活動を報告。さらに市では伝承者の資質を高める技能研修を近く行う予定で、記憶の風化を食い止める活動の広がりに期待を込める。

 

 同会議は震災の風化が懸念される中、その教訓を行動規範にした市防災市民憲章「備える」「逃げる」「戻らない」「語り継ぐ」の定着を狙って設置。市の提案を受けて、震災の被災体験や復旧復興の取り組みで得た教訓を語り継ぐ伝承者の認定制度を設け、参加者を募った。

 

 市によると、伝承者は昨年5月中旬から1カ月間募集し、市内外の10代から80代までの51人が応募。同6月に1回目の基礎研修会を開き、修了した27人に伝承者証を交付した。公募期間後も問い合わせがあったことから、同7月下旬に追加募集。12人の応募を受けて同8月に実施した2回目の研修では27人が修了し、合わせて54人が伝承者に認定された。受講(修了)できなかった9人は来年度に実施予定の研修に参加してもらう方針。

 

 同伝承者を対象としたステップアップ研修は、2月29日と3月15日に行う予定。▽時間や世代を超えた語り継ぎの可能性▽出来事を正しく分かりやすく伝える方法を考える―をテーマにそれぞれ広島、阪神淡路大震災から伝承活動の工夫を学ぶ。参加は任意で、1回ごとに修了とする。ただ、市では「2回とも受講することでさらなるスキルアップが図られる」としている。

 

 取り組み事例として、昨年開かれたラグビーワールドカップ(W杯)などで震災の記憶を発信した高校生5人が活動を報告。伝承者認定を受けた釜石高3年の野呂文香さんと佐々木千芽さんは多くの人が立ち止まり話に聴き入ってくれたことに充実感をにじませ、継続への思いを強めた。

 

 中村希海さん(2年)は釜石シーウェイブス(SW)RFCのホームゲームに合わせた伝承活動、太田夢さん(同)は未来につなぐ活動にするため立ち上げた伝承ボランティア団体について紹介。洞口留伊さん(3年)は地域の協力があって活動できることに感謝し、「私たちが地域に貢献できるよう見守ってほしい」と望んだ。

 

 今回の会合には委員ら約20人が出席し、ステップアップ研修の内容などを検討。若い世代の活動を刺激に、「釜石らしい」伝承を発信し続ける思いも共有した。

 

 同会議のアドバイザーとして出席した福留邦洋・岩手大地域防災研究センター教授は「災害文化にはいろんな形がある。他地域の大きな出来事の反省から学ぶ必要性は高まる。語り継ぐという思想を考える機会になる」などと助言した。

 

(復興釜石新聞 2020年2月1日発行 第863号より)

 

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