復興道路の活用探る、「釜石花巻」開通へシンポ〜津波伝承のネットワーク化を、“生みの親”徳山日出男さん提案
「つながる復興道路」をテーマに意見を交換
本県沿岸と内陸部を結ぶ東北横断自動車道釜石花巻道路(総延長80キロ)が今年3月末までに全線開通を予定する中、「岩手の未来を切り拓く」と題し、県、釜石市主催の「復興道路シンポジウム」が19日、釜石市民ホールで開かれた。市民ら約400人が参加。「復興道路」として着々と整備が進む三陸沿岸道と合わせた高速交通網の有効活用、震災の教訓発信のあり方などについて認識を新たにした。
オープニングで「両石虎舞」が披露されたあと、政策研究大学院大学客員教授の徳山日出男さん(元国土交通省事務次官)が「本物の復興をなし遂げるために」と題して基調講演した。
「本物の復興をなし遂げるために」と題して基調講演する徳山日出男さん
徳山さんは震災時、国土交通省東北地方整備局長として被災者支援の指揮を執り、復興道路の全線事業化やスピード整備に尽力した。発災直後に、障害を取り除いて道路を開く啓開(けいかい)に全力を挙げるよう指示。東北道、国道45号から沿岸部に向けて東西に伸びる横軸を開通させる「櫛(くし)の歯作戦」を展開し、「復興道路の生みの親」とされる。
講演では、発災直後に自ら記した「指示メモ」など生々しい記憶を示しながら、「かつてないスピードで道路整備が進む背景に、多くの犠牲があったことを忘れてはならない。その上に地元、企業、官庁が一丸となった特別な事例」と強調。「道路ができたらOKではなく、道路を生かす方策が重要。物流や観光と並び、災害を伝承することも東北の使命」とし、津波伝承のネットワーク化を提案した。
講演やパネルディスカッションに共感の拍手を送る
続いて、「つながる復興道路、これからの釜石・岩手」をテーマに4人が意見交換。津波にのまれそうになりながらも生還した宝来館の女将(おかみ)、岩崎昭子さんは「津波に備えて裏山に造っておいた避難路が役立った」と〝九死に一生〟の思いを語った。
震災当時、大槌町で救急業務に当たった釜石大槌地区行政事務組合消防本部の岩間英治総務課長は「震災直前に開通した三陸道釜石―両石間が避難道路となり、物資の輸送や患者の搬送道路にも役立ち、まさに〝いのちの道路〟として役立った」と振り返った。
元釜石東中生徒会長で現在は震災の語り部として活動する沼崎健さんは、全校生徒が声を掛け合いながら高台に逃げた当時を振り返り、「津波について学べるまちづくりを。県内外の人々を対象にした学習ツアーを企画したい」と提案した。
被災地の復興を見据えてラグビーワールドカップ(W杯)の招致に力を尽くし、大会アンバサダーとして活動する釜石シーウェイブスRFCの桜庭吉彦ゼネラルマネジャー兼監督は今秋に迫った開催に向け、「W杯で釜石と世界がつながる。被災地東北では唯一の開催。道路の完成で国内外から訪れる多くの観光客に三陸の魅力を伝えたい」と熱い思いを述べた。
(復興釜石新聞 2019年1月19日発行 第758号より)
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