鵜住居川水門、片岸海岸防潮堤工事現場公開〜地元住民「万里の長城だ」、ラグビーW杯までに防護機能完成
工事が進む片岸海岸防潮堤の上から鵜住居川水門を望む
東日本大震災で津波に直撃された釜石市の鵜住居川河口に新たに建設が進む「鵜住居川水門」と、津波で壊れた防潮堤の再建が進む「片岸海岸防潮堤」の工事現場が9月29日、地元住民に公開された。施工する県沿岸広域振興局土木部によると、水門と防潮堤を合わせた津波防護機能は今年8月末までに75%を確保。背後に完成した釜石鵜住居復興スタジアムで1年後に開かれるラグビーワールドカップ(W杯)に向け、防潮堤は来年3月末まで、水門は同8月末までに防護機能を完成させる。
片岸海岸防潮堤と鵜住居川水門の完成イメージ
鵜住居川水門は延長236メートルで、TP(海面からの高さ)14・5メートルで設計。深い所では30メートル以上にも及ぶ鋼鉄製の基礎杭(くい)を1100本も打ち込み、支える。水門は津波を受け止める5つのカーテンウオールとゲートで構成。上部に4つの機械室が置かれ、遠隔操作で開閉する。
一方、同水門と一体で津波防護機能を発揮する片岸防潮堤は延長818メートルで、堤体の高さは水門と同じく14・5メートル。東日本大震災の津波で旧防潮堤が壊れた教訓から、より粘り強い工法が採用された。堤体上部には高さ1・1メートルの柵が設置され、完成後は散策路としても活用される。
片岸地区を背景に防潮堤の階段を上る地元住民ら
工事はいずれも2014年から始まり、工期は防潮堤が19年3月、水門は20年3月まで。工事費は水門約188億円、防潮堤約123億円の合わせて約311億円を見込む。
両施設の工事現場が地元住民に公開されるのは初めて。片岸地区の20人が見学会に参加した。
工事を担当する県沿岸広域振興局土木部復興まちづくり課の及川郷一課長は「震災から7年半が経過し、ようやく水門と防潮堤の工事現場をお見せすることができるようになった」と、あいさつ。参加者を堤体上部まで案内し、水門の工事現場まで歩いた。
初めて住民に公開された鵜住居川水門の工事現場
鵜住居町外山地区の仮設住宅で暮らす山崎隆男さん(82)はこの日、片岸町の元自宅があった場所に新しい宅地を引き渡されたばかり。新しい防潮堤の上から周辺を見渡しながら、「万里の長城だ。これなら大丈夫」と、つぶやいた。
片岸地区住民で釜石市消防団の団長も務める山崎長栄さん(71)は「立派な防潮堤はできたが、大きな地震があったらまず、高台に逃げることを基本にしなくては」と戒め、参加者に呼び掛けた。
(復興釜石新聞 2018年10月3日発行 第728号より)
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