釜石の魅力 アートで発信〜デザイン界をけん引する浅葉克己さん・佐藤可士和さん、「夢」を描く高校生にアドバイス
浅葉克己さん(前列中央左)と佐藤可士和さん(同右)を囲んで記念撮影する市民ら
日本のデザイン界をけん引するアートディレクターの浅葉克己さん(78)、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さん(53)による「ふるさとポスター教室」が23日、釜石市大町の情報交流センター・釜石PITで開かれた。2人は地元高校生らが描いた釜石の魅力を発信するポスターを講評したほか、それぞれが手がける仕事などについて語り、多くの人々に影響力を与える創作の魅力を伝えた。
同教室は、一般社団法人チームスマイル(東京都渋谷区)が行う東日本大震災復興支援活動「“わたしの夢”応援プロジェクト」の一環で企画。釜石市内の高校や一般から事前に公募した作品を浅葉さんと佐藤さんが講評する貴重な機会が設けられた。
ポスター作品はB3版、「釜石の魅力を市外に訴求する」「“釜石”の文字を使い、自由なキャッチコピーを考案して盛り込む」などの条件で募集。釜石高から15点、釜石商工高から10点、一般から3点の作品が寄せられ、2人が全28点について出品者を前に講評やアドバイスを行った。
銀賞、金賞として各14点を選出。金賞作品は、一般客も入れた会場内で公開講評が行われた。出品者が作成意図を説明。各作品には虎舞、釜石大観音、SL銀河、サケやアユ、ハマユリなど、釜石を代表するさまざまなモチーフが描かれ、独創的なロゴデザインとともに個々の感性が光った。2人は作者の視点や構図、デザイン性、色使いなどについてコメント。金賞作品の中からグランプリなど3点を選んだ。
「グランプリ」に輝いたのは、釜石高2年の髙木悠さんの作品。海や山の自然、大漁旗がはためく船、ラグビー、食など数多くの釜石の自慢を、波をイメージした「かまいし」のロゴと合わせ、バランス良い構図で仕上げた。浅葉さんは「すごく丁寧で絵がうまい」と絶賛。佐藤さんは見応えのある完成度の高さを示し、「アイデアがあっても表現し切れなければ思いは伝わらない。やり切ると自分の考えもまとまり、人前できちんとコンセプトを説明できるようになる。これはどんな仕事でも大事なこと」と話した。
髙木さんは「夢のお2人から評価され、自信がついた。とてもうれしい。自分自身も釜石の魅力を再発見できた。将来はグラフィックデザイナーになりたい」と希望を膨らませた。
「グランプリ」を受賞した髙木悠さん(釜石高2年)の作品
「浅葉克己賞」を受賞した釜石商工高2年の藤井隆稀君は、全応募者の中で唯一、モノクロ作品を出品。大観音をバックにそびえ立つガントリークレーン、世界遺産の橋野鉄鉱山・高炉跡などを黒の濃淡で描いた。「まだ実感がない」と受賞の驚きにとまどう藤井君。「得意分野で勝負しようと思い、鉛筆画にした。講評で指導されたように、今後は苦手な“色”にも挑戦し、作品の幅を広げたい」と意欲を見せた。
「浅葉克己賞」を受賞した藤井隆稀君(釜石商工高2年)の作品
「佐藤可士和賞」は曳(ひ)き船まつりの虎舞を題材にした釜石商工高3年の會田紫月さんが受賞。虎頭が海上から見上げる構図の迫力や独自の視点で捉えた顔のフォルム、全体の色構成などデザイン的に上手にまとめられている点が評価された。
「佐藤可士和賞」を受賞した會田紫月さん(釜石商工高3年)の作品
浅葉さんは有名企業の広告作品を数多く手がけ、紫綬褒章なども受章。津波で大きな被害を受けた鵜住居町根浜海岸に建立された「津波記憶石」のデザインも行った。佐藤さんは衣料ブランドやコンビニ、美術館などのロゴデザインに加え、幼稚園や地方の特産品のトータルデザインも行い、国内外に活躍の場を広げる。この日は2人のトークショーもあり、約80人が楽しんだ。
各界の著名人が東北被災地の子どもたちや若者の夢を応援する同プロジェクトは今回で15回目。釜石では2016年の布袋寅泰さん、川淵三郎さん、17年の倍賞千恵子さん、熊本マリさんに続き5回目のイベント開催となった。
(復興釜石新聞 2018年6月27日発行 第701号より)
復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)
復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3