桜祭りへ並木を手入れ、唐丹町本郷〜地域住民 春待ち望み精を出す
郷土の原風景の一つ「本郷の桜並木」の手入れに励む唐丹町住民ら
桜並木の花吹雪の中を大名行列が進む壮観な桜祭りで知られる釜石市唐丹町の本郷地区で28日、並木の手入れが行われた。住民、ボランティアら60人が参加し、植樹から84年を経て老化が進む木の枝打ちに精を出した。東日本大震災後は、2015年以来2回目となる桜祭り(天照御祖神社式年大祭)は今年4月下旬を見込むが、震災の復興途上で、大名行列が桜並木を渡御するかどうかはまだ決まっていない。
午前中行われた桜並木の手入れ作業には、全町で構成する唐丹地域会議(川原清文会長)と本郷町内会(小池直太郎会長)を主体に、市職員らも参加した。電気工事業のアイ・デン社が高所作業車2台、釜石地方森林組合は大型グラップル積載車を出し、それぞれの職員が協力。専門知識を持つNPO法人桜onプロジェクトの樹木医、西山正大(ただし)さん(38)ら4人が指導した。
並木は1933(昭和8)年12月23日の天皇生誕を祝い、翌年に旧唐丹村青年団が村内の幹線道路(旧国道45号)の全区間にソメイヨシノの苗木を植えた。同年3月3日の三陸大津波からの復興機運の醸成も願う大事業だった。
本郷地区の中心部には850メートルにわたる並木がある。満開の桜の下で繰り広げられる大名行列の美しさは長年、祭りの白眉とされてきた。その名勝も、木の老化で失われかけている。
今回の作業の対象となったのは約70本で、うち50本を手入れした。テングス病の枝や朽ちた幹を切除し、根や幹の負荷を軽減。花芽を採取し保存、肥料を施した。住民やボランティアは手作業でせん定し、切り落とした大小の枝を集めた。
樹木医の西山さんらは震災後、3度目の本郷来訪。手入れの指導とともに花芽の採取も行い、唐丹の桜の遺伝子を保管する。「手入れと同時に、唐丹の桜の物語を残すことが大事。それを決めるのは住民であり、その意向によって、私たちが支援できることもあるだろう」と語った。
この活動は、唐丹地域会議に対する宝くじ(自治総合センター)のコミュニティ助成金を活用した。
(復興釜石新聞 2018年1月31日発行 第660号より)
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