根浜に熱気、声援再び〜オープンウォータースイミング、国体の遺産継承
水しぶきをあげ元気にスタートを切る5キロの出場選手
「第1回釜石オープンウォータースイミング(OWS)2017根浜」(同実行委主催)は6日、釜石市鵜住居町の根浜海岸特設会場で開かれた。自然水域での長距離泳でタイムを競うOWSは、昨年のいわて国体で初めて正式競技として採用され、会場となった根浜に震災復興への大きな力をもたらした。国体のレガシー(遺産)を継承し、地元主導で立ち上げた今年の大会には、全国から175人が集結。同競技の普及・発展と地域振興へ新たな歴史が刻まれた。
競技は小学4年生以上を対象に、500メートル、1キロ、3キロ、5キロの種目で実施。海上に設置したブイを周回するコースで行われた。この日は、あいにくの曇り空で気温26度、水温22度。低い水温と次第に出てきた風や波で、大会経験者でも厳しいレースとなったが、各選手はベストを尽くし、完泳後は充実の表情を見せた。
500メートルに出場した菊池一朗君(甲子小5年)、藤原悠希君(釜石小同)は、市営プールで練習するチャレンジSTに所属。初めてのOWSに「海底が見えなくて怖かった。疲れた」と口をそろえたが、菊池君は「満足いく結果だった」、藤原君は「これからも参加したい」と競技への興味をのぞかせた。
関係者に見送られ競技に向かう500メートル出場の小学生
釜石高水泳部からは1キロに8選手が出場。部員らは大会運営の補助員としても活躍した。
男子の高校生~29歳で2位に入った小笠原悠記君(2年)は「1位との差が1分半ぐらいあり、もう少し頑張りたいところ。機会があればまた挑戦したい。海での大会は復興の進展を感じさせる」と大会を歓迎。田中凛さん(2年)は「ブイに向かって真っすぐ泳ぐのが難しい」とプールとの大きな違いを実感。「地元の大会は地域の人たちが見に来るし、他県からも多くの人が集まる。続ければ復興の後押しにもなると思う」と話した。
競技と運営に活躍した釜石高水泳部
大会は、今年のえひめ国体に出場する岩手県選手の選考会も兼ねた。2年連続の代表を目指す男子の桑添陸さん(18)=新潟医療福祉大=は、5キロ総合で愛媛県代表選手に次ぐ2位に入り、予想通りの実力を見せた。代表選手(男女各1)は県水泳連盟により後日、正式決定する。
愛媛代表の松村脩平さん(22)=松山市文化・スポーツ振興財団=は、いわて国体にも出場。「昨年、お世話になったこの地に恩返ししたい気持ちと国体前の最終調整として参加した。愛媛も国体に向け盛り上がっている。県民の期待に応えられるよう頑張りたい」と気を引き締めた。
女子5キロには、昨年のリオデジャネイロ五輪日本代表で、いわて国体優勝者の貴田裕美さん(32)=コナミスポーツクラブ=が出場。五輪選手の本領を発揮し優勝した。プレ国体から3回目の釜石大会となった貴田さんは「地元の皆さんが一生懸命運営してくれて、すごく温かい大会」と評価。「OWSは東京五輪の種目にもなり、日本の若い選手も世界で活躍できるようになってきた。競技をもっと身近に感じ、たくさんの人に見てもらえるようになれば」と期待を寄せた。
同実行委は、この大会を日本水泳連盟の認定大会にすることを目標に掲げる。日水連OWS副委員長の大貫映子さん(56)は「ライフセービングクラブなどの協力で安全面もしっかりしており、大会運営もスムーズにできていた」と講評。実行委事務局の西原義勝・県水連OWS委員長(釜石水泳協会会長)は「認定大会になれば、有名選手も来てくれる。市民レベルの大会要素と両立させ、さらなる競技の周知を図りたい。OWSの大規模な大会は東北では釜石だけなので、北の大会として発信力を高めていければ」と意欲を見せた。
(復興釜石新聞 2017年8月12日発行 第613号より)
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