復興鼓舞する虎舞フェスタ〜甲州台ケ原宿虎頭の舞など、12団体 観客魅了


2016/12/05
復興釜石新聞アーカイブ #観光

一時途絶えた舞を復活させた「甲州台ケ原宿虎頭の舞」。

一時途絶えた舞を復活させた「甲州台ケ原宿虎頭の舞」。写真は雌雄の虎がたわむれる演目「夫婦(めおと)」

 

 第7回全国虎舞フェスティバル(釜石観光物産協会、幸せ出ずる国いわて実行委員会主催)は27日、釜石市鈴子町のシープラザ遊で開かれた。震災以降、復興に向かう市民を鼓舞し、津波に負けない釜石人の姿を地域の宝「虎舞」でアピールしてきたフェスティバル。シープラザ遊が会場となるのは2011年以来で、通路に立ち見客があふれるほど観客が詰めかけた。主催者発表で約7500人が来場。期待の高さをうかがわせた。

 

 市内外から12団体が出演。震災後に虎舞を始め6年目となる、かまいしこども園が昨年に続きオープニングを飾った。市内の伝承団体からは、只越虎舞、尾崎青友会、箱崎虎舞保存会、鵜住居青年会、白浜虎舞好友会、錦町青年会、平田青虎会が出演。津波による被災から立ち上がり伝統芸能を守り続ける各団体の見事な演舞に、会場から盛んな拍手が送られた。

 

 このうち鵜住居青年会は、俗に”雌虎”と称される優雅な舞のほか、豊富な手踊りの中から「杓子舞」「うれしき舞」など4つの演目を披露。地元の祭り以外ではあまり目にすることのない踊りで、観客の注目を集めた。

 

 鈴子町の小笠原知子さん(77)は、東京から帰省した長女の山本陽子さん(56)と鑑賞し、「感激しました。今までにないぐらい素晴らしい舞台。みんな震災を乗り越え頑張ってきたんだなと思う」と絶賛。陽子さんは「虎舞の太鼓、笛の音が始まると(胸に)ぐっと来ますね。いい時に帰ってきてラッキーでした」と心を躍らせた。

 

観客と出演者が一体となって楽しんだ虎舞フェスタ

観客と出演者が一体となって楽しんだ虎舞フェスタ。外には出店も並び終始にぎわいを見せた

 

 市外からは、陸中弁天虎舞(大槌町)、甲州台ケ原宿虎頭の舞(山梨県北杜市)、左比代虎舞(青森県八戸市)、平磯芸能保存会(宮城県気仙沼市)が招かれた。 台ケ原宿虎頭の舞は1993年5月、「日本丸」が入港した釜石港公共ふ頭で行われたイベントに出演して以来2回目の来釜。11~64歳のメンバー23人が、山梨県では唯一という虎の舞を披露した。

 

 台ケ原は甲州街道の宿場町で、火伏せなどの祈願のため地内の正一位「田中神社」に同舞が奉納されてきた。神殿の欄間には虎の彫り物があり、京都宇治で採れた新茶を徳川将軍に献納するお茶壺道中の宿泊場所で家康公が寅年であったことから、旅の疲れを癒やすために奉納されたとも考えられている。

 

 徳川文化が否定された明治期以降、虎頭は神社に伏せられてきたが、昭和になり世に出てきたことで、約100年間途絶えていた舞の復活に地域住民らが立ち上がった。80年代から全国各地の虎舞を視察し、釜石も訪問。91年、今に継承される舞を完成させた。同フェスタでは「寝起き」「夫婦」「本調子」の3演目を披露。釜石虎舞とは趣の違う舞で観客を魅了した。

 

 同舞保存会会長で北杜市観光協会副会長でもある小野光一さん(64)は「23年ぶりに伺えて本当にうれしい。釜石のエネルギッシュな虎舞はメンバーの勉強になる」と喜び、「震災や津波のことをよく知らない小さい子どもたちが、被害の大きさや復興の現状を学ぶ機会にもなった。虎のご縁を大切にし、今後も足を運べたら」と願った。

 

(復興釜石新聞 2016年11月30日発行 第542号より)

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第7回 全国虎舞フェスティバル
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