甲子川のアユ 味は日本一、岐阜県の利き鮎会でグランプリ〜出品者の鈴子陽一さん「川を守る市民への賞」
甲子川のアユを求めて訪れた遠来の釣り仲間と談笑する鈴子さん(左端)
「甲子川のアユは日本一の味」。岐阜県主催の「清流めぐり利き鮎(あゆ)会」が18日、岐阜市で開かれ、アユ漁で名だたる全国14府県、31河川から出品されたアユの味比べで、釜石市の甲子川産が最高位のグランプリを獲得した。出品した同市大渡町3の3の7、整骨院院長の鈴子陽一さん(66)は、「おいしいアユが育つ甲子川のすばらしさが、全国で認められた。その環境を守ってきた市民のグランプリでもある。うれしい―の一言」と喜んだ。
岐阜県では「清流長良川の鮎」が昨年12月、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定されたことを契機に、「あゆ王国ぎふ」を掲げて食や文化のアピールに力を入れている。その一環で同王国ぎふ会議を開催。1部はパネルディスカッション、2部に利き鮎会が開かれた。
利き鮎会は、元々、高知県友釣連盟が1998年から地元で開いており、今年で19回目。今年は岐阜県に協力して「スペシャルinぎふ」として開催。過去18回でグランプリ、準グランプリを獲得した河川に参加資格を与える”チャンピオン決定戦”だった。
甲子川のアユは鈴子さんが出品し、15回(2012年)、翌16回と連続で準グランプリを獲得し、今回の出場資格があった。
味で日本一に輝いた甲子川のアユ(今年、鈴子さんが釣り、冷凍保存した一部)
審査はアユの塩焼きによる。1次審査は、河川名を伏せた31河川のアユを6つのテーブル(各5~6河川)に分け、それぞれ50人が試食。姿、香り、わた、身などを総合して評価した。各テーブル1位の6河川のアユを、特別審査員の食の専門家がステージ上で公開審査し、甲子川をグランプリに選んだ。
甲子川のアユ漁解禁は7月第1日曜日に固定され、今年は3日。鈴子さんは解禁早々のアユを出品していたが、「今年は何となく味に満足できず、3週間後、出品し直し、再び数十匹を送った。主催者に、出し直しは珍しいと言われた」。その判断がグランプリにつながった。
味が良い大きさは18~21センチほど。姿も吟味して1匹ずつ密封、冷凍して送った。
鈴子さんは釜石市に生まれたが、父親の転勤で幼児期に東京へ。小学5年生に帰郷し、中学2年生までの間に「おじから甲子川のアユなど釣りの楽しさを教えられた」。1989年に帰郷、整骨院の後を継いだ。アユ釣りを追求するうち、1990年と翌年のJFT全日本アユトーナメントを連覇した。その後、「釣りを楽しみたくなって」競技から離れた。
「全国の有名な川で釣り、甲子川のアユの味がとくにすばらしいことを知っていた。だから、利き鮎会にも自信を持って出品した。一般に、産卵時期の関係で北国のアユは成長が早い。甲子川のアユも魚体の粒がそろい、味の良さで全国にファンがいる。今年は天然そ上が多く、魚影も濃かった」。味を左右するのは餌となるコケ。国内には数百種あるといわれ、「甲子川のコケも良質だということ」と鈴子さん。
鈴子さんには甲子川の環境を守り、アユなどの資源をまちづくりにつなげる夢がある。「市民のみなさんは、毎日のように甲子川に接している。アユやサケなど魚がいて、いろんな種類の鳥も当たり前の自然と見ている。アユの味・日本一で、それが、得難い貴重な環境だと気付いてくれるだろう。多くの人に、甲子川のアユを味わってほしい。甲子川の正当な価値を守り、高めるためにも、かつてあった河川漁協の創設を目指したい」と
語った。
(復興釜石新聞 2016年9月24日発行 第523号より)
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