半島の魅力を後世に、尾崎神社奥宮周辺で清掃活動 尾崎100年学舎


2015/06/18
復興釜石新聞アーカイブ #地域 #観光

清掃後、きれいになった尾崎神社奥宮の池の前で笑顔を見せるUBSグループ社員と関係者

清掃後、きれいになった尾崎神社奥宮の池の前で笑顔を見せるUBSグループ社員と関係者

 

 変化に富む海岸線の絶景、森林に響く鳥のさえずり、神が宿る荘厳な地──。豊かな自然と古くからの信仰が息づく釜石市平田の尾崎半島を宝とし、後世に継承しようというプロジェクトが、今春から本格始動している。同半島に魅せられた市内の男性4人で結成する任意団体「尾崎100年学舎」(久保竜太代表)が取り組むもので、13日はボランティアの協力を得て、半島にある尾崎神社奥宮周辺(青出浜)の清掃活動を行った。

 

 2012年から釜石の復興まちづくりに参画する金融大手の国内UBSグループ(本拠地スイス)と、UBSの資金提供を受け現地で活動する一般社団法人RCF復興支援チームが協力。東京と大阪からグループ社員24人が参加し、UBS証券の大森進社長も駆け付けた。

 

 尾崎白浜漁港から地元漁師の船で青出浜へ上陸。神社奥宮の池、池から海岸へ流れる水路、参道の階段や海岸などの清掃に汗を流した。池や水路にたまった大量の落ち葉や枯れ枝を取り除くと沢水の流れがスムーズになり、一帯はすっきりとした景観に生まれ変わった。

 

池では大量にたまった落ち葉などを隅々まで除去した
池では大量にたまった落ち葉などを隅々まで除去した

 

 初めて釜石を訪れたUBS証券の金子茂さん(46)は「出身が九州の漁師町。海の近くに神社があることなど故郷と重なる。周りの古木も含め歴史の重みを感じる」と奥宮周辺の空気感に浸った。

 

 この場所は秋の釜石まつりの前に神社関係者が清掃し、地元漁師も年に数回、自主的に清掃しているが、今回のように外部ボランティアが入るのは初めて。同神社の総代も務める漁師の箱石忠男さん(60)は作業に深く感謝し、「他地域の人たちはわれわれが普段感じない事を気付かせてくれる。釜石を訪れる人に、橋野高炉跡だけでなく海にも足を延ばしてもらえるよう発信していきたい」と同学舎との連携に意欲を見せる。

 

 尾崎半島は釜石湾の南側に位置し、三陸復興国立公園(旧陸中海岸国立公園)の一部。先端の尾崎灯台まで続く自然歩道は知られざる見どころが多い。半島中間部にある青出浜には東日本大震災前、観光船が着岸し、夏には海水浴客も訪れるなど隠れ家的なレジャースポットとして人気を集めた。

 

 海岸から続く坂道を登った高台には尾崎神社の奥宮、さらに山道を進むと奥の院がある。尾崎半島は日本武尊が東征した際の最終地点とされ、足跡に残したと伝えられる宝剣が奥の院のご神体として祭られている。釜石まつりでは奥宮でみこしにご神体を迎え入れ、対岸の浜町にある里宮に向かう際、海上渡御(曳き船まつり)が繰り広げられる。

 

 青出浜は震災で、参道階段の約3分の1まで津波が押し寄せ、参道登り口付近と同じ高さにあるトイレやあずまやが水没。海水浴シーズンに休憩所や売店に利用されていた個人所有のログハウスも1階が浸水した。

 

 「尾崎100年学舎」は今年2月に設立された。代表の久保竜太さん(31)は下平田出身。北上市で働いていたが10年ぶりにUターンし、5月から第4期釜援隊メンバーとして、釜石復興に尽力している。

 

「尾崎半島を訪れる人も地域住民も互いに力を得る活動をしたい」と話す久保代表
「尾崎半島を訪れる人も地域住民も互いに力を得る活動をしたい」と話す久保代表

 

 震災で自分の価値観が大きく変わり、古里釜石に意識を向けるようになった久保さんは、2011年6月からボランティア活動を始めた。その中で、団体立ち上げメンバーの宮崎達也さん(43)、村上浩継さん(36)と知り合った。2人は復興支援で三重県、京都府から釜石に来ている。

 

 久保さんは昨年9月、以前訪れたことがあり思い出に残っていた尾崎半島に2人を案内。この場所が持つ素晴らしさを再認識するとともに、「地域の歴史、文化財産を次世代につなげていきたい」との思いを募らせる。

 

 同半島は東北自然歩道の一つだが、荒れた場所もあり、3人はできることからと少しずつ環境整備を始めた。11月からは参加者を募り、半島の神社やお薦めビューポイントを巡り集落との関わりなどを伝えるトレッキングも開始した。今月は28日に実施する予定。

 

 団体を設立する頃には、尾崎白浜出身で父が漁師の久保晨也さん(24)がUターン。地域活性化への思いを同じくする強力な味方が仲間に加わった。晨也さんの橋渡しで、地区住民との距離も一気に縮まった。

 

 海の恵みを受け厳しさとも向き合いながら、この地を守ってきた尾崎の人々。根底には、何百年と連なる“自然、信仰、暮らし”の密接なつながりがあった。「このライフサイクルが100年先も続くような芽を植えられたら。宝を見つけ価値を見つめ直し、集落を存続させる力に変えることが僕らの目標」と久保(竜)さん。地域ニーズと外部協力をつなぐ役割も果たす。

 

 当面は▽地域行事のサポー▽観光プログラムの提供▽トレッキングコース、青出浜の環境整備▽観光資源の掘り起こし―などを事業に掲げ、団体の法人化も目指す。未来を見据えた持続可能な地域づくりの新たなモデルに注目が集まる。

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