釜石シーウェイブスRFC選手紹介2019 第3弾『山田 龍之介選手』
選手紹介2019/06/24
山田 龍之介(やまだ りゅうのすけ)選手(所属先:釜石市役所 職員)プロフィール
2019年加入/1991.10.12生(27歳)/187㎝/108㎏/北海道釧路郡釧路町出身/立教大学卒
●ラグビーを始めたきっかけ:高校から。山岳部と兼部で良いと言われたから。(最終的にはラグビー部がメイン)
●ポジションの遍歴:LO→No.8→LO/FL/No.8
●ニックネーム:リュウ
●趣味:読書、散歩、お笑いを見る
●好きな食べ物:ラム肉
●釜石のオススメ:大自然、人が優しい
●出身地のオススメ:釧路:食べ物がおいしい
●試合前のルーティン:最大限の準備、周りに左右されずに過ごす
●ストロングポイント:セットプレー、仕事量
●サポーター、ファンへメッセージ:いつも応援ありがとうございます。より一層応援していただけるようなチームに、プレーヤーになれるよう日々努力します。よろしくお願いします。
企画・編集:釜石まちづくり株式会社
取材・文:市川香織(釜石まちづくり株式会社)
写真:西条佳泰(Grafica/LiFESTYLE Lab.)
釜石でラグビーをするという事は、日本でラグビーをする上で“特別な意味がある”
ーー入団の経緯を教えてください。
山田選手:
僕がNECから移籍する事になった際、関東圏は近くに他のチームもたくさんあるので、話を頂いたりこちらから聞きに行ったりしてたんですけど、僕にとって“釜石”というのは“復興と共にあるチーム”で、釜石でラグビーをするという事は、日本でラグビーをする上で特別な意味があると思っていました。
それで、NECのコーチを通じて桜庭さんと繋いで頂き、自分から「釜石に興味があります」とお伝えし、実際に桜庭さんと会って色々と話をさせて頂いて「行きます!」と決めた感じですね。
ーーSWとNECはこれまでもけっこう対戦がありましたよね。近年は特にたくさん交流がありましたね。
山田選手:
そうですね。僕がNECに入団した2014年に北上招待で対戦したんですけど、釜石に負けて・・・苦い思い出ですね。加入して2戦目くらいの試合で、反省しながらの帰りの新幹線はすごくチームの雰囲気が暗くて・・・よく覚えています。
そしてまた、2017年に北上招待で対戦し、その後にNECの方にも来てもらって、昨年の7月には「あびこラグビーDAY」でも対戦しましたね。
その時のSWの応援団の印象が強くて、わざわざ我孫子のグラウンドまで応援に来てくれる熱い応援団がいるという所も、釜石に決める上ですごくプラスの材料になりました。
ーーやっぱり釜石と対戦すると、この“応援”って気になりますか?
山田選手:
そうですね、試合中は集中しているので、敵味方どちらの応援もあんまり気にはならないんですけど、こうして釜石に来て、普段の準備の時からこれだけ応援してくれる人がいるという事を実感しながら過ごしていると、やっぱりそれは“やらなきゃな!”っていうモチベーションに繋がりますよね。
ーー試合中の応援で思い出したんですけれど、先日のIBC杯の時に、釜石シーウェイブスジュニア(SWJr.)の子供たちがたくさん来ていて、その中の男の子たちが「りゅうのすけー!がんばれー!」って声援を送っていて、「加入したばかりなのにもうすごい人気だ!」って。もしかして、子ども達ともう交流しましたか?
山田選手:
あ、あれは実はちょっと裏話があって(笑)。僕は今、釜石市役所で働いているんですけど、直属の上司の息子さんがSWJr.にいてあの試合を親子で観にいらしていて、それで音頭を取ってくれたみたいで・・・。
(写真:釜石シーウェイブスRFC)
ーーそうだったんですね、すごく一生懸命に声援を送っていましたよ!
山田選手:
僕も試合中は誰が言ってくれているのかわからなかったんですけど、入ったばっかりなのにすごい親しみを込めて、フランクに呼んでくれる人がいるなぁと思っていたら、そういう訳でした。
ーーJr.のスクールに教えに行ったわけではなくて?
山田選手:
いや、あの時が初対面でしたね。でも今、選手が交代でスクールに指導に行っているんですけど、この間の日曜日が僕の番で行って来たところです。
ーー先ほど少し出ましたが、お勤め先は釜石市役所。どんなお仕事を?
山田選手:
総務課なので、普段はあまり市民の方と直に接する部署ではないですね。市役所職員が申請をしに来たりとか、ハンコをもらいに来たりとか、そういう内向きの仕事が多いところです。
課のみなさんはSWの活動にすごく理解を持って下さっているので、ありがたいです。
NECの時も社員選手として働いてはいたんですけれど、10時出社15時上がりくらいのスケジュールが多かったので、今のスケジュールにはまだちょっと慣れていないですね。
ーー暮らしてみて、釜石のまちの印象はどうですか?
山田選手:
一番は、山に囲まれている感じがすごい新鮮というか、圧迫感というか(笑)。
地図で見る岩手ってすごい広いんですけど、実際に自分がそこに立つと狭く感じるというか、ここからこう出られないんじゃないかっていう(笑)。
鹿もいっぱい出るし、結構びっくりしました。僕、北海道の出身なので、車で走っていると鹿が出てくるとかは割と多かったんですけど、こんなに“町なかにもゾロゾロ”っていう光景にはびっくりしましたね(笑)。
ラグビーが出来る事が当たり前じゃないという事を一番理解しなきゃいけないチーム
ーー同い年のメンバーが多いですよね。知っていた選手はいましたか?
山田選手:
同期、意外といっぱいいますね。小野ちゃん、木村優太、水本、髙橋拓也。ただ僕の高校(東京都立大泉高校)は、東京から出て試合するようなチームでは無かったので、知っている選手はいなかったです。
ただ、NECでソアさん(ホラニ龍シオアペラトゥー選手)と1年間一緒だったので、すごいありがたい存在です。
SWはみんな働いている場所もバラバラで、そこから仕事終わりでバッと集まって、練習して・・・って感じだったので、最初は流れとかが良くわからなくて、知っている選手がいるのは心強かったです。
小野ちゃんとか水本は、入ってすぐに「たぶん同い年だと思うよ」って話かけて来てくれて嬉しかったですね。この間、その同期メンバーで町に飲みに行ったりもして。
若いメンバーが多いこのチームの中で、この年になってもこんなに同期がいるんで、仲を深めながら、本分の方でしっかり自分達が中心になって盛り上げて行けたらなと思います。
ーー春シーズンここまで、チームとのフィット具合はどうですか?
山田選手:
そうですね・・・フィットさせなきゃならない部分と、逆に染まっちゃいけない部分があると思っています。
入った当初、自分の思い描いていた理想というか、イメージとのギャップが結構ありました。そういう所については、これからもっとラグビーで信頼を得て、チームに影響力のある人間になって、もっとチームを良くしていきたいと思いますね。自分をチームにフィットさせなきゃフィットさせなきゃ・・・だけではなくて。
ーーそのギャップに感じた部分っていうのはどういう?差し支えなければ・・・。
山田選手:
一番は、やっぱり釜石SWって、“震災復興”とか“地域に根差した”という言葉と一緒に語られる事が多いと思うんですけど、果たしてそこがどれだけチームとして機能しているのかな?というのが疑問でした。
“地域に根差した”とはいえ、何かこう・・・釜石市民からは縁遠い存在なのかなとも現時点では感じていて。
我孫子にまで来てくれるファンがいてという話をさっきしましたけど、そういう根強い力強いサポーターがいて、“地域に根差させてもらっている”ような・・・。
釜石と言う物理的な場所に、ラグビーが出来る人が集まっているチームという印象が今の時点ではありますね。
逆に、関東圏にはもっとたくさんチームがあって、だからこそ地元に愛される努力を各チームがしていると思うので、チームの方から地域の皆さんに歩み寄って行くという部分が、まだまだこのチームには足りていないのかなと。でも、そこは改善の余地があって、伸びしろの部分じゃないかなって思います。
ーーそこは、山田選手からチームに提案して行きたい事もありますか?
山田選手:
そうですね、それこそ、さっき話に出たSWjr.の指導に交代で行くにしても、別に義務だから行くんでもないし、あとは地域イベントに呼んで頂いて参加する時にも、なんとなく行くだけじゃ仕方ないし。
自分達って、そういう方々がいるからラグビーが出来ている存在で、ラグビーが出来る事が当たり前じゃないという事を一番理解していなきゃいけないチームだと思うんで。
若いチームだけに、高校から直接来ている選手もいてまだ分からない部分もあるとは思うんですけど、そういう所に関しては手本になれるよう、行動や態度で示して行ければと思います。
あとは、中野さんとか小野ちゃんも良く言ってますけど、“ONEチーム”になる事がラグビーでは大事だと思っていて、そこがまだ足りていなかったり・・・。働いている場所が違うので、一緒に過ごす時間が短いというのもあるんですけど。
そういう“ONEチーム”になるという部分は、グラウンド上でもグラウンド外でも、まだ腹を割っていない、殻を破っていない選手もいるなと感じています。ラグビーのプレーでもそうだし、グラウンド外でも、まだ殻にこもってるっていうか・・・。
まぁ、それこそ、30何才の選手と10代の選手がすぐに腹を割って話せというのもなかなか難しいかとは思うんですけど、それでも“ONEチーム”になって、みんなでラグビーをやるには必要です。
そういう意味もあって、今年は“チームソーシャル”をいっぱいやりたいって言っていて、この間はここ(釜石市球技場)でグラウンドゴルフをしたり、クラブハウスでBBQをやったりとかして。
そういうしっかりした事でもいいし、もっとざっくばらんに年齢も国籍も関係なく、みんなで笑顔になれるような、何だろうな・・・「一発芸大会」とか(笑)。そういう事とかも、キャプテンが同期にいるんで相談してやりたいなと。それが一つのきっかけになれば、きっとグラウンドにも出ると思うんで。
ーー中野キャプテンも、そこを大事にして行きたいとインタビューでお話してくれました。
山田選手:
ラグビーって、“絆”と言うか何て言うか・・・チームとして一つになれていないとなかなか難しくて、チームの為に体を張りたいと思えるようなチームじゃないといけないし、“あいつがいるから大丈夫って”お互いに信頼できるような関係でないと出来ないと思うので。そこは多分、試合に出ている15人、ゲームメンバーの23人が良ければいいというものでもなくて。
前にNECのコーチに言われたんですけど、「チームが一つのチェーン(鎖)だとしたら、そのチェーンの強度って一番弱い部分で決まるから」って。だから、試合に出るメンバーが強いだけじゃダメだし、“ONEチーム”になる中で、チェーンが切れるのは一番弱い部分から切れるので、ちょっとしょげている選手やモチベーションが下がっている選手がチームにいたら、そういう選手を気にかけたりっていうのも中堅以上の僕たちの年代の役目かなと思います。
ーー特にSWだとその年代の皆さんが核になりますよね。
山田選手:
みんな若いっすからね(笑)。
ーー下の子たちはどうですか?可愛いですか?
山田選手:
そうですね、可愛い・・・のかな?(笑)。
可愛いっていうより、何だろう・・・、ラグビーをやる上では(そのスキルなどを)“知っているか知らないか”という事が大きくて。例えば高校からそのまま直接SWに入るとなると、方法を知ってさえいれば出来る能力はある事でも、どうやれば良いのかやり方を知らないだけだったり、そのスキルを知らないから出来ていない・・・っていう若い子がけっこういます。
そこにちょっと、今まで誰も教えてあげられなかったのかな?っていう、誰か教えてあげれば良かったのに、っていう気持ちを感じる事はありますね。
僕より若い子たちは、ウエイトトレーニングとかをすごく熱心にしていて、僕はウエイト全然強くないんですけどみんなとても強くて、そういうフィジカルの強さがせっかくあるのに、それを上手くグラウンドで出せていない所がすごいもったいないと思うし。
僕もそれほど経験値のある方ではないですけど、このチームの中ではある方だと思うので、そのスキルや経験を伝えてプラスにしていけたらって思います。
ーー山田選手は気が付いたらすぐ言葉で伝えてあげるタイプですか?
山田選手:
そうですね、まぁそんなに口が上手い方ではないので、上手く伝わっているかどうかはわからないんですけど、大事だと思ったことは伝えるようにしています。
あとは、もっと映像をしっかり見直した方がいいよという事も言いますね。せっかく撮ってもらっているので。
練習終わってウエイトするのも良いけど、ウエイトそれだけ強いんだからもっと考えてラグビーする。良かったのと悪かったのを映像で見比べて、次の日の練習に入る前に、良い時と悪い時の差はこれだからここを意識すればもっといいプレー出来るんじゃないかとか頭を整理し、考えてラグビーする・・・という事も口酸っぱく言ってますね。
最大限準備した上で、自分たちの持てるもの、準備したものを全部出す
ーーここまでの、ご自身の仕上がりについてはどうですか?
山田選手:
僕自身というよりも、チームでやるスポーツなので、チームとしてここまで中華台北代表と秋田NBと対戦して、自分たちがこの春から取り組んで新しくやりたい事があるんですけど、そこに対する達成度でいうとまだまだかなという感じはしますね。
やっぱり練習がそのまま試合に出ているなと。今の時点では練習で精度が悪い時が多く、それが練習よりプレッシャーがかかる試合になると、やっぱり上手く行っていないなぁと。
だから練習をもっと良いものにしていかないと、これから先のTLチームとの試合に向けて、なかなか厳しいんじゃないかなと思います。
ーーその、TLチームと対戦する“カップ戦”がいよいよ6月からスタート。どんな気持ちで臨みますか?
山田選手:
TLとの対戦だからと言って、個人的にはそんなにモチベーションとかは変わらないですけど、チームとしては一つ上のチームと対戦する事になるので、やっぱり準備の部分で負けちゃいけないなって思います。
僕らのチームって、残業を何時間もしている選手もいるし、時間が限られているんですけど、でもその中でも、さっき言ったように映像を見たりだとか、個人の体調管理だったり、やれる準備は全部やらなきゃならないですし、そういう準備の所で負けたらスタートラインにも立てないんで。最大限の準備をした上で、自分たちの持てるもの、準備したものを全部出して、そこでやっと互角ぐらいだと思うんですね。
準備の段階で負けちゃうとか、準備してきたものも出せずに終わるというのは避けたいですね。
ーーTLがどういう舞台なのかを知っていらっしゃるので、チームに対してのご自分の役割というか、そこはブレずに「ここが自分達の目指す基準」なんだっていうのを・・・。
山田選手:
はい。そういう“スタンダード”まで、遅れている選手がいたらプッシュしてあげたいです。
さっき言ったように、若い子ってまだ知らないだけの事も多いので、どういう所がスタンダードかがわからない子もいると思うし。何でそれが必要なのか、何で映像みるのが大切なのか、自分でやって実践して学ばないとその大切さってなかなかわからないと思うので、わかるまで外からプッシュしてあげるのも僕の一つの仕事だと思います。
ーー昨シーズンを振り返ってリーダー選手にインタビューにした時に、小野選手が「そのTLレベルのスタンダードの部分は、星野選手がそれこそ口酸っぱく言ってくれていた」というお話があったので、山田選手にもその部分はぜひお願いしたいです。
山田選手:
あんまり言うとけっこう小言みたいで、進んでは言いたくはないんですけど、僕も今まで先輩の方々とか、嫌われ役じゃないんですけど言ってくれる存在があって、そういう事の大切さに気づけたので、今度は僕がそれを下の世代に伝えようと。この若いチームでは、それを僕がやっていかなきゃないなと、2か月くらい過ごして思っています。
ーー今シーズンの個人目標は?
山田選手:
まずは“試合に出るというのが最低限”という言い方はちょっと違うかもしれないですけど、試合に出て貢献するというのが一つありますし、今までは周りに強いボールキャリアとか前に行ってくれる選手がたくさんいたんで、自分はサポートプレーに徹してやる事が出来ていたんですけど、今度からは自分でももっとボールを持つプレーもやっていかなきゃいけないなと思っているんで、そこは僕のラグビー選手としてのキャリアでの一つのチャレンジだと思って、成長出来る良いチャンスにしたいと思っています。
そして、ジャパンラグビートップリーグカップ2019(カップ戦)が先日開幕しました。
釜石SW、次戦のお相手は、トップリーグチームのクボタスピアーズ。6月29日(土)、秩父宮ラグビー場(東京)で11時30分キックオフです!
第1節 6月23日(日) 14:00 対 キャノンイーグルス:いわぎんスタジアム
第2節 6月29日(土) 11:30 対 クボタスピアーズ:秩父宮ラグビー場
第3節 7月06日(土) 14:00 対 トヨタ自動車ヴェルブリッツ:釜石鵜住居復興スタジアム
開催中止(日本ラグビー協会リリース)
第4節 7月13日(土) 16:30 対 三菱重工相模原ダイナボアーズ:秩父宮ラグビー場
第5節 7月20日(土) 18:30 対 コカ・コーラレッドスパークス:えがお健康スタジアム(熊本県)
最新情報、詳細は釜石シーウィブスの公式サイトでご確認ください。
http://www.kamaishi-seawaves.com/