被災の国道45号 鵜住居「復興見える」新道路 開通を祝う会〜28日から切り替え、長内橋で渡り初め
28日の切り替えに向け、鵜住居地区の新国道45号開通を祝うテープカット
東日本大震災の津波で被害を受けた釜石市鵜住居地区の国道45号が28日から盛り土した新道路に切り替えられるのを前に、21日、開通を祝う会が現地で開かれた。鵜住居地域会議(花輪孝吉議長)が主催。地域住民ら約300人が集まり、同地区復興の基軸となる道路整備の進展を喜ぶとともに、新たなまちづくりへ思いを強くした。
花輪議長は「新国道の開通を機に、被災した全ての地域が発展していくことを願う」とあいさつ。野田武則市長は用地を提供した地権者へ感謝の気持ちを伝え、「新道路により、宅地のかさ上げ工事が一段と加速する。スケジュール通り工事が進むよう行政としても最大限努力したい」と述べた。
国道の一部の新・長内橋のたもとで、関係者がテープカット。鵜住居町の岩﨑プロパン会長、岩﨑吉平さん(83)、サツさん(80)夫妻ら3代の家族を先頭に地域住民らが渡り初めを行った。餅まき、地元の外山鹿踊、鵜住居虎舞の演舞で開通を盛大に祝った。
吉平さん(右)を先頭に長内橋の渡り初めをする岩﨑さん一家
「想像した通りの姿。広くて良い」と、新国道を見回した小林誠一さん(71)。震災前、同町川原地区の国道沿いで理容店を営んでいたが、津波で店舗兼自宅を失い、家族8人は日向地区のアパートと仮設住宅に分かれて生活。プレハブの仮設店舗で営業を続けている。以前の場所に近い新国道沿いに再建を予定し、来年秋ごろの土地の引き渡しが見込まれるという。「(津波で)亡くなった人も多いし、この近辺に戻る人は非常に少ない。私らも商売だから人口がないと困る。何とか住民が増えてくれれば」と願いを込める。
鵜住居地区の新しい国道45号(延長1・2キロ)の整備は、土地区画整理事業と一体となって進められ、2014年7月に着工。現国道から30メートルほど海側の2メートル前後盛り土した用地に建設された。道路幅は以前の12メートルから17メートルに拡幅。路肩も最大で1・5メートルまで広げた。震災前の鵜住居駅前、寺前の両交差点の急カーブを解消し、緩やかな線形に。歩道は3・5メートルと以前より大幅に広くなる。
餅まきに笑顔を広げ、新国道の開通を喜ぶ地域住民ら
28日から供用開始となるのは1・1キロ区間の車道。既存住民のライフライン(電気・通信・水道)を確保しながらの工事で、電柱移設や埋設水道管撤去など多くの調整に時間を要したこと、用地の引き渡しの遅れなどで、当初の予定から約5カ月遅れの開通となった。今後、歩道整備など残りの工事を進め、来年夏ごろの完成を目指す。
同地区では国道のほか、復興公営住宅(集合・戸建て)や小・中学校の整備も着々と進む。鵜住居地区復興まちづくり協議会の藤原博会長(80)は「これで復興が見えてきた。今後2年間で本当の鵜住居の基礎づくりをやっていこうと、地元の各団体と話し合ってきたところ。昔からの地域の流れを知る年配者と若い世代で基盤を固め、次世代につなげていきたい」と将来を見据えた。
(復興釜石新聞 2016年8月24日発行 第514号より)
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