鉄滓をオブジェに、「橋野鉄鉱山」に初の土産品〜世界遺産盛り上げ地元資源を活用、モチーフは「鹿踊り」


2016/05/20
復興釜石新聞アーカイブ #観光

橋野鹿踊りオブジェ

橋野鹿踊りオブジェを前に談笑する和田タカさんと菊池成夫町内会長(右)、製作を補助する藤原英彦さん(左)

 

 釜石市橋野町早栃地区の住民らが、地元で江戸時代に行われた”たたら製鉄”のスラグ「鉄滓(てっさい)」を使い、郷土芸能「橋野鹿踊り」をモチーフにしたオブジェを製作、5月の大型連休から地元の産直施設「橋野どんぐり広場」で販売を開始した。橋野発の鉄関連の土産品開発は初の試み。地元愛の詰まった手作りの一品が、世界遺産の町を一層盛り上げる。

 

 オブジェ製作のきっかけは、橋野鉄鉱山の世界遺産登録勧告が出された1年ほど前の早栃町内会(18世帯)定例会議。「早栃の山に今も残る鉄滓を世界遺産の発信に生かせないか」と話題に上ったのが始まりだった。

 

 たたら製鉄では砂鉄と木炭を炉に入れて燃焼させ、砂鉄を還元し鉄を作った。その際、砂鉄に含まれる不純物は高温で溶融し、スラグ(ノロ)として排出された。町内会が地元所有者の了承を得て山中を探したところ、冷え固まって長い年月を経た多数の鉄滓を発見。当時の製錬は鉄と不純物の分離が十分でなく、鉄成分が残り重みを感じる鉄滓は、ごつごつとした形状と所々に残る鉄の色みが独特の風情を醸し、活用への可能性を感じさせた。

 

 製作の中心を担う和田タカさん(80)は当初、ペーパークラフトで作った虎舞頭を鉄滓に飾ったオブジェを、どんぐり広場で販売していたが、「橋野の郷土芸能、鹿踊りのモチーフでより地域色の濃い製品にしてはどうか」と近隣住民の提案を受け、”チーム早栃”で鹿踊りオブジェの製作に取りかかることになった。

 

 鉄滓は鹿踊りの胴体部分に利用。洗浄後、金づちで余分な部分を砕いて胴の形に仕上げ、さび止めを兼ね、つや出しスプレーをかける。鹿頭はエコクラフトテープを使い、顔の部分は、テープを裂いて細いひも状にしたものを編んで立体的に仕上げる。鹿頭の背に背負う「カンナガラ」は実際の踊りで使われているもの。胴の前を覆う幕は風呂敷を利用し、本物と同じ紋を消しゴム版で施した。「世界文化遺産 橋野鉄鉱山」と記したのぼり旗のさおは笹竹の先端部を、台座は倒れた山桜の木を加工し、地元資源を最大限に活用している。

 

オブジェに使われる、たたら製鉄で出た「鉄滓」

オブジェに使われる、たたら製鉄で出た「鉄滓」

 

 一連の作業工程は住民5、6人が分担して行うが、鉄滓の加工や鹿頭の製作は和田さんが一手に引き受ける。これまでも竹細工やエコクラフトのかご作りなどを手がける和田さんの器用さは、周辺住民のお墨付き。鹿頭は1時間で5、6個は仕上げるという。「鉄滓の台座に接する面を平らにしたり、鹿頭の目や鼻などを付ける細かい作業が大変」としながらも、試行錯誤を重ね完成させた姿に愛着をにじませる。「みんなの協力でできたこと。早栃の人たちはアイデアが豊富」と和田さん。

 

 同町内会長で、橋野町振興協議会会長も務める菊池成夫さん(74)は「世界遺産登録で橋野を訪れる人が激増したが、ご当地を象徴する土産物が無かった。ここまで形になったのは、地区住民のまとまりのおかげ。橋野ならではの遺産の趣をオブジェからも感じ取ってもらえれば」と期待を込める。

 

 橋野鹿踊りのオブジェは大(2千円)、中(1500円)、小(1千円)の3種類(台座含め高さ約15~20㌢)があり、どんぐり広場で販売中。今後、橋野鉄鉱山インフォメーションセンターで土・日曜日に開いている出前産直でも販売する予定。

 

(復興釜石新聞 2016年5月14日発行 第486号より)

 

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