“コロナ休業”から決意の再開〜経済活動しながら命を守る、鵜住居町根浜の宝来館


2020/06/04
復興釜石新聞アーカイブ #地域

宿自慢の景色のいい客室で再開への思いを語るおかみの岩崎さん

宿自慢の景色のいい客室で再開への思いを語るおかみの岩崎さん

 

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため自主的に休業していた釜石市鵜住居町根浜の旅館「宝来館」が、国の緊急事態宣言本県対象解除を受け、23日から営業を再開した。当面は一日の宿泊予約数を制限。会食も人数を制限し受け入れる。館内の衛生強化、3密回避、従業員の体調管理など感染防止策を徹底し、「安全安心」な滞在に努める。

 

 同館は、国の緊急事態宣言が4月16日、全国に拡大されたのを受け、翌17日からの休業を決定。以降の宿泊予約を断る苦渋の決断をした。関東・関西圏からの客が多く、感染リスクを避けられないこと、本県の感染者0(ゼロ)を維持したいとの強い思いから決めた。

 

 5月14日、本県を含む39県の宣言解除が発表され、営業再開を決意。週末と重なった23、24日は、同館を応援したいと県内陸部から訪れた計4組が宿泊。24日は市内の日帰り会食客2組も迎えた。

 

 おかみの岩崎昭子さん(63)は「みんなで協力し、お客さまを迎えられるのがうれしい。宿はやはりお客さまがないと、建物に命が吹き込まれない感じがしてね」と喜びをかみしめた。

 

営業を再開した「浜辺の料理宿宝来館」

営業を再開した「浜辺の料理宿宝来館」

 

 再開にあたっては、客と従業員の安全確保を第一に細かなマニュアルを定めた。3密回避のため、当面は一日の宿泊を6室に制限(全客室数19)。夕食は宿泊する客室(3、4階)とは別の客室(2階)で個別提供する。客と従業員の接触を減らすため、料理の出し方を工夫し、飲み物はあらかじめ部屋の冷蔵庫に備えておく。朝食はビュッフェ形式をやめ、テーブルの間隔を2メートル以上空けた。

 

 客にはチェックイン時の検温、館内各所でのアルコール消毒に協力してもらう。従業員は出勤前の検温と記録を義務化。全ての業務時にマスクを着用する。館内はアルコールなどを用いた除菌清掃を念入りに行う。

 

 同館では新型コロナの影響で、2月ごろから宿泊予約のキャンセルが出始め、3~4月にかけての歓送迎会、各種会食も軒並み中止に。全国的な感染拡大が進む中、「お客さまも判断しかねていた。私たちのほうから(休業を)決断すべきと思った」と岩崎さん。4月時点で6月までの予約キャンセルは1900人分に上り、損失は約2200万円(昨年比9割減)。

 

 三陸鉄道の台風災害からの全線復旧で観光振興への期待が高まっていた矢先のコロナ禍。市内の主要イベント中止の発表も相次ぎ、厳しい経営環境が予想されるが、岩崎さんは「この危機をどう生き抜くか。地域の飲食店との連携など民間で人を呼び込む工夫も必要。経済活動をしながら人の命を守る新たな形を模索し、挑戦し続けていきたい」と今後を見据える。

 

(復興釜石新聞 2020年5月30日発行 第888号より)

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