コロナ影響の長期化懸念〜登録から5周年の世界遺産「橋野鉄鉱山」も客足減少


2020/04/21
復興釜石新聞アーカイブ #観光

前日に降った雪が残る高炉場跡=11日

前日に降った雪が残る高炉場跡=11日

 

 新型コロナウイルスの全国的な感染拡大に歯止めがかからぬ中、釜石市内でも観光、宿泊、飲食など各方面への影響が顕著になってきている。橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」は冬期休館していたインフォメーションセンターが3月20日から開館し、見学者を受け入れているが、4月7日に政府の緊急事態宣言(7都府県対象)が出されて以降、客足は減少傾向に。世界遺産登録から5周年を迎える今年、市は各種記念行事を計画しており、影響の長期化が懸念される。

 

 同センターは、昨年10月の台風19号被害から復旧した三陸鉄道の全線運行再開に合わせ、例年4月1日からの開館を前倒しし、3月20日に開館。3月の来館者数は267人で、震災復興による三鉄リアス線運行開始に合わせ23日から開館した昨年(23~31日151人)を100人余り上回るシーズン入りとなっていた。4月になってからも昨年並みに推移していたが、7日の緊急事態宣言で一層の外出自粛が要請されたことで、同鉄鉱山を訪れる人も減少傾向にある。

 

 11日も来訪者はまばら。昼ごろには市内の家族連れ2組が訪れた。上中島町の家族4人はドライブ途中に同センターに立ち寄り、スタッフの勧めで昼食を取った。父親(52)は「窓を開けながらドライブするぐらいなら大丈夫かなと思って。ここは世界遺産登録前に訪れて以来。今日は天気も良く、リフレッシュできた」と“コロナ疲れ”のストレス解消にもつながった様子。

 

インフォセンターで休憩する市内の家族連れ

インフォセンターで休憩する市内の家族連れ

 
 センター前の緑地にある遊具や駐車場の空きスペースでのスケートボードを楽しんだのは千鳥町の柏木渉さん(37)、理伯君(10)親子。渉さんのおい、めいも連れて初めて同鉄鉱山に足を運んだ。「休校になってからは家の中にいることが多かった。今日は子どもたちをのびのびと遊ばせたいと思い、少し遠出をした。高炉跡も見学していこうかな」と渉さん。岩手県内では感染者は確認されていないが、全国的な感染者増に「これからどうなるのか…。人も亡くなっているので怖いですよね」と不安も。学校が再開した理伯君は「友達と会えてうれしいけど、マスクをしないと授業できないし、手洗いや消毒などにも気を使う」と、感染対策をしながらの生活はやはり違和感があるよう。コロナの感染拡大に「志村けんさんが亡くなったのが悲しい。バカ殿とかテレビで見ていたから。早く治まってほしい」と強く願った。

 

センター前の遊具で遊ぶ子ども。日ごろのコロナストレスを発散!

センター前の遊具で遊ぶ子ども。日ごろのコロナストレスを発散!

 
 市の委託でセンターの来館者応対などを担う橋野町振興協議会のスタッフは「入館前の手指のアルコール消毒は必ずお願いしているが、ここまで感染拡大が進んでくると心配。県外から来る人も多いので」と対策強化を望む。

 

 同鉄鉱山は2015年7月、「明治日本の産業革命遺産」(8エリア23資産)の構成資産の一つとして世界文化遺産に登録された。市世界遺産課によると、登録5周年記念行事は6月からスタート。7月には、台風被害でしばらく開催を見送っていた採掘場跡の一般公開、12月には同遺産のある北九州市と連携した企画展示会を予定。継続してきた鉄のフォーラムも開催する。

 

 青ノ木地区の春はこれからが本番。同鉄鉱山周辺を彩る八重桜並木と高炉場跡内の石割桜の開花は、例年並みの5月初旬と予想される。

 

(復興釜石新聞 2020年4月15日発行 第884号より)

 

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