釜石市議選 戦後初の無投票に〜現職12、元職1、新人5人が当選

復興釜石新聞2019/09/09

 任期満了に伴う釜石市議選は1日、告示され、現職12人、元職1人、新人5人の計18人が立候補を届け出。議員定数(18)と同数となったことから、無投票での全員当選が決まった。市選管の資料によると、戦後、市議選が無投票となったのは初めて。今回の市議選では現職議員6氏が出馬を見送り、勇退する形となった。告示前は「立候補者が定数に満たないのでは」と市議選をめぐる動きにヤキモキする声もあった。18人中最多、8回目の当選を果たした山﨑長栄氏(72)は「地域の活力低下につながるのでは」と懸念する

 

地域活力の低下に危機感 山崎氏 市議会の現状憂う

 

8回目の最多当選を決めた山﨑長栄氏

8回目の最多当選を決めた山﨑長栄氏

 

 片岸町に再建した自宅に近い国道沿いで第一声。復興が進む周辺を見渡しながら、「議員生活28年。その集大成として地域に恩返しを」と思いを述べた。

 

 震災の津波で家が流され、昨年12月まで野田町の雇用促進住宅で暮らした。8年にわたる“避難生活”の疲れもあり、「議員活動はもうおしまいに」との思いもあったという。

 

 一方で、市議として積み重ねてきた数々の政策提言、実績への自負もあった。6人の市議が勇退するという事態の中で、「市長に是々非々でモノが言える人がいなくなる」という周囲の声に推され、8度目の出馬を決めた。

 

 市議選告示の、この日はちょうど「防災の日」。市消防団長として午前7時からの避難訓練の動きを指示した後で、第一声の場に駆け付けた。

 

 26歳で消防団員になり、震災の翌年に市消防団長となった。しかし、「団員が疲弊し、なり手もない。地域の消防力が落ちている。早く手を打たないと大変なことになる」と現状を憂う。

 

 市議会も似たような現状にある。今回の市議選では立候補予定者がなかなか定数(18)に満たず、「様子見をしながら『オラも出たい』と言う声も聞いた。市民を愚弄(ぐろう)する動きでは」と嘆く。

 

 今回の市議改選を前にした議員定数改正をめぐる審議では「定数16」を提案したが、否決された。結果的には、戦後初の無投票当選という形になり、「あの時もっと削減していれば、別な展開になっていた。地域活力の低下につながるのでは」と危機感を募らせる。

 

「住み良い子育て環境を」 磯崎氏 市職員から転身

 

街宣車も運動員もなく“一人選挙”で市議選に挑んだ磯﨑翔太氏

街宣車も運動員もなく“一人選挙”で市議選に挑んだ磯﨑翔太氏

 

 当選した18人の中で最も若い、30歳の市議会議員が誕生した。拡声器を手に、浜町の自宅から目抜き通りを中心に歩いて一回り。街宣車も運動員もいない“一人選挙”を繰り広げた。

 

 看護師をしていた母親の影響で私立の薬科大に進んだが、大学に入り直して経済を学び、名古屋市に本社がある証券会社に就職。「次の世代の子どもたちのため、住みよいまちになるよう汗を流したい」と釜石に戻り、17年4月に市職員に採用された。

 

 市議選に打って出ようと思い立ったのは、わずか1カ月ほど前。事前の立候補説明会に若者の姿がないと聞き、「このままでは若い世代の声が市政に届かない。これはまずい」と思ったという。「子育て問題に取り組みたかったが、市職員の立場では人事一つで仕事が決まってしまう」というもどかしさもあった。

 

 街頭を一人で歩きながら「これからの時代は若い世代の横のつながりが大切。みなさんの声を吸収し、地域を発展させていきたい。若い力がこれからの釜石を支える。ベテラン議員の中にピリリと辛い30歳を」とアピールした。

 

 6歳と3歳の男の子、まだ1歳の女の子がいる。同学年の妻は「やるからには、しっかりと」と背中を押す。

 

ラガーマンの経験を原点に 三浦氏 労組組合長を9年

 

日鉄釜石労組組合長から市議に転身した三浦一泰氏

日鉄釜石労組組合長から市議に転身した三浦一泰氏

 

 自宅がある小川町内に構えた選挙事務所の前で第一声。労組の仲間や会社関係者、地元町内会の人々を前に「元気で明るい地域づくり、生き生きと働ける環境づくり、市民が主役のまちづくり、この三つに取り組みたい」と訴えた。

 

 市議選に出ようと思い立ったのは5月の大型連休明け。日本製鉄釜石労組の組合長を務めて9年。8月いっぱいでの勇退が決まり、「今後は会社(日本製鉄)や労組のパイプ役として地域のために役に立ちたい」と決意を固めた。

 

 結婚し、小川町に住み始め20年余り。親戚関係にある松坂喜史前市議(66)の勇退と重なり、バトンタッチする形となる。「小川はとてもまとまりのある地域。自分が心置きなく働けるのも地域のおかげ。町内会をしっかりしないと」との思いも新たにする。

 

 第一声を上げたのは奇しくも、閉店したばかりのスーパーの前。地域の暮らしを支える大切な店だった。この問題の解決が、市議としての最初の仕事になりそうだ。

 

 新日鉄釜石ラグビー部で活躍するなど、ラガーマンとしての経験が社会人としての原点となり、支えとなった。釜石では間もなくラグビーワールドカップ(W杯)も開かれる。「釜石の真のレガシー(遺産)となるよう力を尽くしたい」とW杯の後を展望する。

 

(復興釜石新聞 2019年9月4日発行 第821号より)

 

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