春を運ぶSL銀河〜一番列車釜石に、6年目の運行スタート


2019/05/10
復興釜石新聞アーカイブ #観光

SL銀河

 

 JR釜石線(花巻―釜石間、90・2キロ)を走る蒸気機関車「SL銀河」の今年の運行が4月29日、始まった。初日の下り列車(釜石行き)は、定員176人の客車4両が満席。乗客は各駅や線路沿いで地元住民らの熱い歓迎を受けた=写真。6年目の今年は9月29日まで、土日・祝日を中心に上下計48本の運行を予定。SLシーズンと連動した観光振興に期待をかける。

 

 29日、午前10時37分花巻発のSL銀河は4時間半をかけ釜石に到着。線路をはさんだシープラザ釜石のデッキには市民や鉄道ファンらが陣取り、黒光りする雄姿を眺めつつ盛んにカメラを向けた。

 

 駅のホームでは、釜石市のキャラクター「かまリン」、JR、観光関係者らが降り立った乗客を歓迎した。対面するホームでは尾崎青友会が威勢のいい虎舞を披露し、到着を盛り上げ。駅舎前では釜石観光物産協会によるホタテ稚貝汁の振る舞いもあり、釜石ならではのおもてなしが光った。

 

SL銀河の出発式でくす玉を割る関係者ら

SL銀河の出発式でくす玉を割る関係者ら

 

 盛岡市の菅野航生君(北松園小1年)は、車体に描かれた星座がお気に入り。「楽しい」と4回目の乗車も満喫した。母多紀子さん(40)は2回目で、「車の旅と違った景色が楽しめた」とにっこり。この後は三陸鉄道に乗り継ぎ、大船渡市の親戚を訪ねる予定だという。

 

 カラオケを楽しむ仲間4人で乗車した仙台市の守谷巌さん(78)は“乗り鉄、撮り鉄、呑(の)み鉄”という3つの鉄道旅を堪能。沿線の歓迎、主要駅で披露される郷土芸能など一番列車ならではのもてなしにも感激していた。ほろ酔い気分でホームに降り立った弟律さん(70)は初めての乗車。「レトロな雰囲気の車内がいい。桜が見頃で景色もよし。兄貴のおかげで友達、いろんな楽しみが増えている。仲のいい者同士の旅は最高」と喜んだ。

 

 今年は運行5周年を記念し、季節ごとにヘッドマークのデザインを変更する。現在、サクラをモチーフにしたものを掲示中。さらに、車体に白いライン、車軸には赤い塗料が加えられた。

 

 景品が当たるスタンプラリーも実施。釜石の洋菓子店「アンジェリック」が製造する、石炭のような見た目が特徴のオリジナル菓子や、駅名キーホルダーなどの記念グッズも販売する。

 

 SL銀河は東日本大震災からの復興支援、地域活性化を目的に2014年4月に運行を開始。昨年は上下59本運行し、延べ約8200人が利用した。平均乗車率は前年同様の8割を維持。JR東日本盛岡支社の広報担当者は「多くのお客さま、地元の支援により6年目の運行を迎えることができた。一人でも多くのお客さまに沿岸への旅を楽しんでいただきたい」と期待を寄せる。

 

花巻へ 雨模様の中を折り返し

 

 SL銀河運行2日目の30日は、釜石から花巻への上り運行。あいにくの雨模様となったが、午前10時58分の発車を前に、乗客や見物客が機関車の車体や出発準備の様子を見学。唐丹町の桜舞太鼓、釜石高吹奏楽部は雨にも負けない力強い演奏を披露し、旅立ち気分を高めた。

 

 親子2人旅を楽しんでいる東京都江戸川区の増渕仁君(小松川二中1年)は大の鉄道好き。前日に三陸鉄道リアス線で釜石入りし、SL銀河に初乗車。「車内がどうなっているか楽しみ」と目を輝かせた。父元さん(51)は写真が趣味。「(2人旅は)いろんなことを話すいい機会になった。非日常を楽しみたい」と笑った。

 

 発車時刻には、釜石駅の工藤冨士雄駅長と園児2人が右手を上げて出発合図。高らかに汽笛を鳴らし、黒煙を上げながら走り出す車両を地域住民らが手を振って見送った。

 

 工藤駅長は「三鉄と合わせて岩手、沿岸を周遊する旅をたくさんの方に楽しんでほしい」と期待した。

 

(復興釜石新聞 2019年5月1日発行 第787号より)

 

復興釜石新聞

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