復興スタジアムに木のぬくもり、被災のスギ材を座席に〜釜石森林組合「山林所有者の励みに」
鵜住居町に建設中のスタジアムで進められている木製座席の取り付け作業の様子
来年のラグビーワールドカップ(W杯)の試合会場として釜石市鵜住居町に整備中の釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)で、地場産木材と地元企業の技術を結集した木製座席の取り付け作業が進められている。常設スタンド全6千席中4990席に導入。木のぬくもりあふれるスタジアムで岩手・釜石の特色を打ち出し、世界からの来場者をもてなす。5月下旬から設置を始めており、8日に作業の様子を公開した。
木製座席は昨年5月に尾崎半島で発生した山林火災で被災したスギを100%使用。釜石地方森林組合が伐採し、大槌町で製材、塗装などの加工も県内企業が担当した。骨組みは市内のスチール製事務用家具製造、エヌエスオカムラが製作。自然に優しい塗料を使い、座面に角度をつけて座りやすくしているのが特徴だ。
このほか、被害木を使って公衆トイレ2棟、ベンチ108基、日よけのためのルーバーも整備。使われたスギは約800本になる。
同組合の久保知久組合長は「焼けた木を生かせたことは、山林所有者の励みになる。地元の山の資源を活用していることを多くの人に知ってほしい」と期待を込める。
木製座席の製作について説明する釜石地方森林組合の関係者
同スタジアムは、常設スタンド部分が7月に完成する見込み。市は仮設席にも被害木の活用を検討している。整備方針の一つに、「自然環境や歴史文化を野外活動として学習できる場所」があり、木製座席の設置はそのコンセプトとも合致する。
野田武則市長は「地元産材の活用はスタジアムの魅力の一つ。世界中の来訪者を木のぬくもりでもてなしたい。市民にも有効に使ってもらえるよう、しっかり整備する」と話した。
(復興釜石新聞 2018年6月13日発行 第697号より)
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