釜石・大槌郷土料理研究会、海の幸 山の幸 ふんだんに〜「根浜の復活」もちつきで実感


2018/05/30
復興釜石新聞アーカイブ #地域

美しい海の景色と絶好の晴天の中、餅つきを楽しんだ

美しい海の景色と絶好の晴天の中、餅つきを楽しんだ

 

 釜石・大槌郷土料理研究会(前川良子会長、11人)主催の「新緑まつり~もちつき体験と郷土料理バイキングを楽しむ会~」は20日、釜石市鵜住居町根浜の民宿前川で開かれた。2011年の震災で甚大な被害を受けた同地区で、郷土料理を楽しむ会が行われるのは震災後初めて。高台移転で新たな集落が形成された復興団地の一角で、会員が腕によりをかけた海と山の幸を振る舞い、参加者とともに最高の笑顔を広げた。

 

 活動15年目を迎える同研究会は、釜石・大槌地区の農漁家の女性らで結成。海岸部の会員の中には震災の津波で家や家族を失った会員もいるが、山間部の会員や支援団体の尽力で活動を存続させ、翌12年には被災前に開いていた郷土料理を楽しむ会を再開。13年からは春に、橋野町青ノ木の八重桜の下で餅つきと料理を楽しむ会を継続し、市内外の参加者から好評を博してきた。

 

 震災から7年を経た今年は、昨春に高台移転のまち開きを果たした根浜地区が会場となった。研究会は震災前、根浜海岸レストハウスを活動拠点としていたが、津波で建物が全壊。今回は実に8年ぶりの根浜での催しとなった。

 

 前川会長が夫婦で経営する民宿の厨房(ちゅうぼう)に会員が朝早くから集まり、参加者を迎えるための料理作りに励んだ。会には市内外から20人が参加。眼下に海を臨む駐車場で餅つきを楽しんだ後、会員が調理した13品のメニューをバイキングで食した。海の食材はアメマス、イカ、ワカメなど。アメマスはみそ煮、焼き魚、汁物に姿を変え、参加者の舌をうならせた。一方、山の代表格は春の山菜。タラの芽、ウド、ワラビ、コゴミなど多彩な種類を用い、天ぷら、和え物、漬物風と地元ならではの家庭の味が並んだ。

 

震災前以来の根浜での楽しむ会に地元住民も喜びの笑顔

震災前以来の根浜での楽しむ会に地元住民も喜びの笑顔

 

 盛岡市から訪れた飲食店勤務の石田学さん(36)は「既製品を使わず素材を生かしているのがいい。自分でついた餅と山菜の味は格別。郷土食を次世代につなげようという会員の意欲を感じる。また勉強しに来たい」と笑顔で箸を進めた。

 

 昨年3月から同団地に暮らす佐々木虎男さん(80)は、レストハウスで開かれていた会を懐かしみ、「海と山の新鮮なものが食べられるのはやっぱりいいね。根浜や箱崎の会員がみんなの協力を得て、ここまで復活できたのは夢みたいだ。うれしいね」と声を弾ませた。

 

 13年に被災した民宿を自力で高台再建し、根浜復興をけん引してきた前川会長(66)は地元での楽しむ会実現に「本当に感無量。やっと海のお母さんたちが活躍できる場ができた。支えてくれた山のお母さんたちに感謝の気持ちでいっぱい」と目頭を熱くした。研究会では一昨年から食育活動にも取り組み、学校に出向いて団子作り体験なども行っている。「食への関心とともに、子どもたちには海や山など自然の中で楽しむことも伝えていきたい。会員同士、手を携え、今できることに力を尽くしていく」と、たゆまぬ前進を誓った。

 

(復興釜石新聞 2018年5月23日発行 第691号より)

 

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