早期再生を望む声多く〜根浜海岸の砂浜検討 地元鵜住居で住民懇談会
以前の砂浜を取り戻すことが期待される根浜海岸
震災で砂浜が消失した釜石市の根浜海岸の人工的な再生が可能かを検討している県は6月27日、地元住民の意見を聞く根浜海岸砂浜再生懇談会を鵜住居町の鵜住居地区生活応援センターで開いた。会合では早期の再生を望む声が多く出た一方、人工的に治すことに疑問を投げかける意見もあった。県はこうした意向を、5月に設置した専門家による技術検討委員会に伝え、同検討委はこれを踏まえ、本年度末をめどに人工再生の可否を判断する。
根浜海岸は震災前、約700メートルの白砂青松が続き、年間4万人以上の海水浴客らでにぎわう市の中心的な観光地だったが、震災の津波と地盤沈下で砂浜がほぼ消失。震災後、徐々に砂が戻りつつあるというが、市が先に行った検討では、自然回復には数百年を要するとの調査結果を発表している。
砂浜再生に向けた地元住民の意見を聞く懇談会
こうした中、県は5月に根浜海岸復興養浜技術検討委員会を設け、人工再生が可能かどうか検討を始めた。検討委の状況を伝えるとともに、浜との関わりが深い地元の声を検討に生かすため、懇談会を設置。地元自治会、漁業や観光業関係者ら15人の委員が出席し、検討委から参加した田中仁・東北大大学院工学研究科教授が座長に選ばれた。
事務局による根浜海岸の現状、検討委で挙がった砂浜復元に向けた課題などの説明を受けた後、出席者らが意見を交わした。
「海水浴ができるようになるといい」との声が大半。箱崎フィッシャリーナから旅館宝来館付近までの約500メートル、波打ち際まで約50メートル幅での再生を求めた。「根浜は自慢の海岸。理想は震災前の姿に戻ることだが、ラグビーワールドカップの観客に海と山の美しい風景も楽しんでもらえるよう、少しでも復元してほしい」との要望も。再生に使う砂について「片岸海岸に堆積している砂を使っては。同じ湾内にあり、生態系への影響も小さいのでは」との提案もあった。
一方で、「自然に逆らって人工的に戻すことは不可能だ。新たな災害が起きる可能性もある。戻したい気持ちは分かるが、自然の法則に従うべきではないか」と指摘する人もいた。
県では来年2月ごろに検討委を開催することにしており、合わせて懇談会も開く予定。
(復興釜石新聞 2017年7月1日発行 第601号より)
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