「橋野鉄鉱山」見学再開、昨年の台風被害 挽回へ〜近代製鉄発祥160年に合わせ情報発信
見学者の受け入れを再開した橋野鉄鉱山高炉場跡=1日、三番高炉跡
昨年12月19日から冬季休館していた釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」が4月1日から開館、見学者の受け入れを再開した。昨年は台風被害により一時、見学者の受け入れ中止を余儀なくされたが、世界遺産登録から3年目となる今年は「近代製鉄発祥160年」と合わせ、さらなる情報発信で見学者の誘致拡大に努める。
1日から開館した「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」
開館初日はあいにくの雪模様で見学に訪れる人もまばらだったが、その後は天候も回復し、団体客も来始めている。高炉場跡に残る根雪は徐々に雪解けが進むが、6日現在、所々に20~30センチの吹きだまりの積雪があり、センターでは長靴での見学を勧めている。また、エリア内は台風被害の影響で一部立ち入り禁止区域があり、見学時の注意を呼び掛ける。
橋野鉄鉱山は昨年8月30日の台風10号による豪雨で、高炉場跡の表土が一部流失し、地下の遺物が露出。隣接する二又沢川の護岸被害や倒木、同センターの断水などもあり、約2カ月半、見学者の受け入れを中止した。給水設備の復旧、遺跡保護のための応急措置を行い11月19日から見学を再開したが、アクセス路の県道釜石遠野線は決壊により、遠野市側から青ノ木までの笛吹峠が全面通行止め、橋野町中村から青ノ木間の一部で片側交互通行が今も続く。
同センターの昨年(4月1日~8月30日、11月19日~12月18日)の入館者数は1万7181人。世界遺産登録初年の一昨年(4月1日~12月8日)の実績、4万3316人の半数以下にとどまった。
市は本年度、遺跡の本格復旧工事に着手する計画で、見学路や護岸の修復、地下遺構の遺物の一部発掘、倒木の処理などを行う。センター前の緑地帯にある遊具も更新する予定。今年は、大島高任が現甲子町大橋で洋式高炉による初出銑に成功(近代製鉄発祥)してから160年、橋野高炉跡の国史跡指定から60年、釜石市制施行から80年と節目の年が重なる。市世界遺産室の佐々木育男室長は「関係部署と連携し記念イベントを行うことで、”鉄のまち釜石”を広く発信できれば。一昨年の橋野鉄鉱山の見学者アンケートでは、笛吹峠を通ってくる人が4割を占めており、道路の早期復旧にも期待したい」と話した。
同センターは12月8日まで開館(無休、午前9時半~午後4時半)し、入館は無料。市から委託された橋野町振興協議会(和田松男会長)の11人が交代で来館者の応対、施設の清掃などにあたる。同協議会前会長でスタッフの菊池成夫さん(75)は「自然に囲まれ、学術的価値の高いこの場所をしっかりPRし、昨年の(見学者の)落ち込みを挽回したい。ラグビーワールドカップ(W杯)で外国人観光客の増加も見込まれる2年後を見据え、一層の盛り上げを」と意を強くした。
橋野鉄鉱山は「明治日本の産業革命遺産」(8エリア23資産)の構成資産の一つとして、2015年7月に世界文化遺産に登録された。先月22日からはスマートフォン、タブレット端末用に同遺産の無料ガイドアプリの提供が始まり、動画再生やクイズなどで楽しみながら遺産を学ぶことができる。
旧釜石鉱山事務所も公開再開
釜石の製鉄史を物語る貴重な資料を展示する甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所も1日から今季の来館受け入れを開始した。
同事務所は2008年まで釜石鉱山株式会社の総合事務所として使用されていたが、事務所移転に伴い市が建物の譲渡を受け、釜石鉱山に関する資料も寄託された。
冬季の休館を経て1日から来館受け入れを再開した旧釜石鉱山事務所
鉱山で採掘に使った道具や採取された鉱物など所蔵する約2800点の資料のうち710点を展示。09年から一般開放していたが、震災の地震で壁が崩れるなど一部が壊れ、改修工事のため休館した。耐震補強工事に合わせてレイアウトや展示内容を大幅に見直し、昨年7月から一般公開を再開した。
昨年は7月から12月までに1455人が同事務所を見学。このうち有料化以降の来館者は854人に上った。
来館受け入れは午前9時半から午後4時半まで。火、水曜は休館で、入館料は大人300円、小中学生100円。団体(10人以上)での申し込みであれば、休館日の開館にも応じる。
問い合わせは同館(電話0193・55・5521)へ。
(復興釜石新聞 2017年4月8日発行 第578号より)
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