三陸沖地震で津波警報 釜石市内1451人避難 後発地震注意情報発表「すぐに逃げられる態勢を」


2026/04/23
釜石新聞NewS #防災・安全

津波警報発表で、高台の薬師公園に避難した人たち。奥が釜石湾。不安そうに見つめる

津波警報発表で、高台の薬師公園に避難した人たち。奥が釜石湾。不安そうに見つめる

 
 20日午後4時52分ごろ発生した三陸沖を震源とするマグニチュード7.7の地震で、北海道から本県にかけての太平洋沿岸に津波警報が発表された。釜石市では震度4の地震、20センチの津波(釜石港、午後6時41分)が観測された。この地震で「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が出されていて、日頃の地震への備えを再確認するとともに、1週間程度は社会活動を維持しつつ、すぐに避難できる態勢を整えておくことが求められる。
 
 市は午後4時55分の津波警報発表(最大予想3メートル)を受け、同58分、避難指示を発令。津波浸水想定区域では、住民らが市指定緊急避難場所など近くの高台に避難した。午後5時50分までに市内小中学校体育館や寺など9カ所に市が避難所を開設。その他の場所への避難者を含め、最大で1451人が避難した。
 
薬師公園頂上広場に駆け上がる避難者。あたりが暗くなり始めると津波の状況を確認しながら市開設の避難所に移動した

薬師公園頂上広場に駆け上がる避難者。あたりが暗くなり始めると津波の状況を確認しながら市開設の避難所に移動した

 
 「緊急放送、避難指示発令。津波警報です。高い津波がきます。すぐに高いところに逃げてください」。津波への警戒を促すサイレンとともに、防災無線から繰り返し避難の呼びかけが続く中、市中心部・大町の高台にある薬師公園には近くに住む人や働く人らが足早に向かった。大型商業施設などから避難する人の姿も。スマートフォンで連絡を取ったり、携帯ラジオを持参した避難者に地震や津波の状況を聞いたりした。
 
 公園の頂上広場に続く階段に座り、遠巻きに海を眺めていた70代女性は「15年前の東日本大震災ほどではなかったけど、強い揺れだった。あの時も、ここから海の方を見ていた。なんか思い出すよね」と不安げに話した。震災の津波で被災した自宅を修繕して生活。この日は地震後、貴重品をリュックサックに入れて避難し、「あのサイレンの音も、スマホがビービーと鳴るのも本当に怖い」と肩をすくめた。
 
 午後6時前、夜の冷え込みを避けるため市職員の指示で、薬師公園から市が釜石小体育館(大渡町)に開設した避難所に移動。近くの商店で働く40代女性は「早く帰りたいけど、警報が解除にならないと…。安全が確保されるまでは心配だから」と身を寄せた。
 
避難所が開設された釜石小体育館に身を寄せた人たち

避難所が開設された釜石小体育館に身を寄せた人たち

 
 釜石小には160人以上が車や徒歩で避難。同校体育館で、テレビのニュースを心配そうに見つめた。食品加工会社で働くインドネシア人女性5人は仕事を終え在宅中に揺れに見舞われ、職場からの指示で避難。釜石での生活は3年目だというが、避難所に駆け込んだのは初めてのようで、「安心するために避難した」と声を合わせた。
 
 学童保育中の小学5年の長女、同3年の長男を迎えに来て、そのまま避難した只越町の会社員の父親(40代)は「(子どもたちが)運よく学童の時間で良かった。安全な場所にいるのは分かっていたが、顔を見てほっとした」と力を抜いた。水や簡易トイレ、ラジオ付きの手回し電灯などが入った防災リュックを持参。「災害は本当に怖いから!」と話す長女の強い希望で車に常備しているのだという。「命を守るために逃げる。その気持ちを持ち続けてもらいたい」。そう願う父親は、長期戦を見越してリュックに仕込んだぬいぐるみなどの玩具で遊ぶ子どもたちを後方から見守っていた。
 
避難者の受け入れや物資の配布を行う市職員ら。校庭には避難車両が並び、車内で待機する人にも水などを配った

避難者の受け入れや物資の配布を行う市職員ら。校庭には避難車両が並び、車内で待機する人にも水などを配った

 
配られたパンや水でお腹を満たす避難者。甘いものの差し入れも

配られたパンや水でお腹を満たす避難者。甘いものの差し入れも

 
 避難所運営に関わる大渡町内会は、同校の敷地にある備蓄倉庫を間借りする形で水や毛布などを保管している。この日も町内会役員らが市職員と協力し、避難者の受け入れや物資の配布、様子をうかがったりした。冨谷親雄副会長(78)は15年前の震災当時を思い浮かべたようで、「あの時よりは避難者は少ない。水は備蓄しているが食料はなく、限りもあるから『足りなくなったら』と考えたりする」と館内を見渡した。心配事はあっても災害発生時には人が参集する避難所であり、「市の動きに合わせて、やれる範囲で対応できるようにしたい」と気を引き締めた。
 
避難所が開設された鵜住居小・釜石東中体育館に向かう地域住民ら

避難所が開設された鵜住居小・釜石東中体育館に向かう地域住民ら

 
校庭には県交通バスを含む避難車両約120台が並んだ。震災後に整備された市道箱崎半島線や恋の峠付近の高台(右枠写真上部)にも複数の車両が避難

校庭には県交通バスを含む避難車両約120台が並んだ。震災後に整備された市道箱崎半島線や恋の峠付近の高台(右枠写真上部)にも複数の車両が避難

 
 鵜住居町の高台にある鵜住居小・釜石東中には、地震発生直後から地元住民や車両通行中の人などが次々に避難してきた。両校の児童生徒らは下校後で、自宅や遊んでいた公園などから声をかけ合って避難。昨年1月に自主防災組織を結成している東中の生徒らは、体育館に避難した人たちが休めるよう、床に敷くシートや毛布、椅子などを準備した。同校を卒業したばかりの高校生らも率先して動き、避難者の受け入れにあたった。同所には最大で200人が避難した。
 
 体育館や入り口には大型テレビが設置された。各地の海面の状況が映し出される映像や観測された津波の高さなどの情報を、避難者が食い入るように見つめた。東日本大震災を経験し、町内の復興住宅に暮らす91歳女性は「今回は揺れが大きかった。明るいうちに避難しなきゃと思って急いで出てきた。なかなか(警報が)解除にならないべな」と心配そうな表情を浮かべた。
 
鵜小・東中体育館の入り口付近に受付を設け、避難者名簿を作成

鵜小・東中体育館の入り口付近に受付を設け、避難者名簿を作成

 
体育館内で必要な人にパイプ椅子を配る東中出身の大槌高生

体育館内で必要な人にパイプ椅子を配る東中出身の大槌高生

 
校内の備蓄倉庫から運び出した飲料水を避難者に配る釜石東中生

校内の備蓄倉庫から運び出した飲料水を避難者に配る釜石東中生

 
 今回の地震発生時刻は高校生の帰宅時間に重なった。大槌高から県交通のバスで帰宅途中だった生徒らは、スマートフォンの緊急地震速報で地震発生を感知。運転手の判断で、バスは乗客を乗せたまま高台の両校校庭に向かった。バスに乗っていた大槌高1年の藤井珀空さんは「車内にいたので最初、揺れに気付かなくて。スマホの速報で(最大)震度5と知ってびっくり」。東中出身で、到着後は出身同級生らと避難所運営に協力した。「自然に体が動く感じ。すぐにみんなでやろうと」。東中防災教育担当の佐々木伊織教諭は卒業生の協力に「涙が出るくらいうれしかった。今の高校1年生は自主防を立ち上げた子どもたち。災害時の行動がしっかり身に付いている」と実感を込めた。
 
 同じくバスで、甲子町の自宅に帰る途中だった大槌高3年の小岩波月さんは初めて津波避難を経験。「地震発生時、鵜住居に差しかかるところだったのでひやひやしたが、冷静に行動できた」。避難所では釜石高生らを含め、多くの高校生が活躍。避難者の誘導、備蓄品の水や非常食の配布など積極的に活動した。「東中出身者に教えてもらいながらやったが、中学校時の訓練の成果が表れていてすごいと思った。高齢者の方も安心できるように自分でも動けたかな」と小岩さん。
 
非常食のカレーを湯を沸かした鍋で温め、避難者に配布。手際の良さは自主防の訓練のたまもの

非常食のカレーを湯を沸かした鍋で温め、避難者に配布。手際の良さは自主防の訓練のたまもの

 
帰宅途中に避難した高校生らが避難所運営に力を発揮。東中出身者を中心に率先して行動する姿が見られた

帰宅途中に避難した高校生らが避難所運営に力を発揮。東中出身者を中心に率先して行動する姿が見られた

 
避難者対応が一段落すると高校生も食事タイム

避難者対応が一段落すると高校生も食事タイム

 
 津波警報は同日午後8時15分に注意報に切り替えられ警戒が続いたが、午後11時45分に解除された。釜石市では21日時点で、地震や津波によるけが人、物的被害は確認されていない。避難所となった鵜住居小、釜石東中は21日を臨時休校とした。
 
 この地震で気象庁と内閣府は、大規模地震発生の可能性が平常時と比べ相対的に高まっているとして、北海道から千葉県まで7道県182市町村に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表した。避難場所・経路、家族との連絡手段、非常食などの備蓄、家具の固定と、日頃の地震への備えを再度確認するとともに、1週間程度は特別な備えとして「すぐに逃げられる態勢の維持」「非常持ち出し品の常時携帯」などを呼びかける。同注意情報の発表は2022年の運用開始以降、昨年12月の青森県東方沖地震時に続いて2回目。

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