作業現場のクマ対策 青紀土木社員らが寄せ付けない工夫、遭遇時の対処学ぶ 一般にも公開

クマ撃退スプレー(練習用)の噴射を体験する青紀土木の社員=1日、大町広場
釜石市鵜住居町の建設業、青紀土木(青木健一代表取締役社長)は1日、作業現場でのクマ対策を学ぶ座学と実習を行った。鉄道や県道の路線維持を請け負い、山間部に入っての作業も多い同社。春を迎え、冬眠明けのクマが動き出す時期に入ることから、例年開く新年度の安全衛生大会の中に組み込む形で初めて実施した。昨年は各地でクマの目撃情報が相次ぎ、重大な人身被害も発生。社員らは講師からクマの生態や寄せ付けない対策、いざという時に身を守る方法などを学び、作業時の安全意識を高めた。
同大会は釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。クマ対策講習は一般にも公開。同社と協力企業の社員、興味のある市民ら約70人が参加した。講師として招かれたのは農林水産省農作物野生鳥獣被害対策アドバイザーで雫石町職員の谷崎修さん(48)。始めに本州に生息するツキノワグマ(以下クマ)の生態について説明した。

クマ対策の座学。講師の谷崎修さんは自作のクマパネル(ツキノワグマ成獣、体長1メートル)を示し、「大きさをぜひ覚えておいて」と話した(左下写真)
クマは学習能力が高く、目、耳、鼻は人間の能力を上回る。嗅覚は人間の2400倍、夜間視力は50倍にもなるとされ、「暗くても餌を探すことができる」という。雄と雌では体の大きさが違い、雌は成長が遅いため、「子イヌ(体長40~50センチ)より少し大きい程度でも成獣の可能性がある」。雌は妊娠期間がわずか2カ月で、冬眠中に巣穴の中で出産。子どもが外敵に襲われにくい大きさになってから巣穴を出るため、冬眠明けは雄より遅く、5月上旬ごろ。子グマの近くには必ず母グマがいるので、絶対に近づかないことが肝心。

クマ対策について学ぶ青紀土木、協力企業の社員、一般市民ら
谷崎さんはクマと出会わないための対策として、▽自分(人間)の存在を知らせる▽クマの生態や行動をよく知る▽目撃・出没情報があった場所には近づかない▽新しい痕跡(ふん、食痕、爪痕など)があった際は十分気をつける―ことを挙げた。
存在を知らせる方法としてはクマ鈴やラジオの携帯があるが、「鈴は高い音が鳴るものを選んで。ラジオは音量が大きすぎるとクマの接近に気付かない可能性があるので要注意」と助言した。他に定期的に手をたたく、大声を出すことも推奨。特に沢沿いや見通しの悪い場所ではしっかり音を発し、人間が近づいていることをクマに知らせることが大事。大きな音を出すクマよけ用品にはガス式、USB充電式のホーン、爆音クラッカーもあり、「作業に入る前、また、作業中も休憩時間などに合わせて何回か鳴らすと効果的」と谷崎さん。

クマと出会わないためには、人間の存在(近づいていること)をクマに知らせることが大事。また、クマの食べ物や新しい痕跡がある場所には近寄らないのが一番

クマ鈴や追い払い用花火(大きな音と火薬臭が出るもの)なども紹介
だが、対策を講じていても、不意に出会ってしまう可能性もある。その場合、どう対処すべきか?「20メートル以上離れていれば、こちらが刺激しない限り、クマの方から逃げていく。クマから目を離さず、ゆっくりと静かに後ずさりし、建物や車まで避難して」と谷崎さん。予期せぬ鉢合わせなどでクマが突進してきたら、「クマの顔(目や鼻)を目がけて『クマ撃退スプレー』を噴射する」。スプレーがないなど最悪の場合は命を守るため、「うつ伏せになり、顔や首を守って、体をひっくり返されないよう足を広げる」防御姿勢を取る。これで、致命傷となる顔面への攻撃を防ぐ。谷崎さんは「スプレー噴射も身を守る姿勢も実際にやったことがないとなかなかできない。練習しておくことが必要」と話した。

座学の後に行われたクマ撃退スプレーの操作実習。谷崎さんがポイントを解説
座学の後は大町広場に移動し、練習用クマスプレーで噴射までの操作を体験した。腰に装着したホルダーからスプレーをはずし、ロックを解除。5メートル先に置いたクマのパネル目がけてスプレーを噴射した。スプレー使用時はクマから目を離さないことが大切。購入する際は「噴射までの動作が少なく、片手でも操作できるものを選んでほしい」とのこと。谷崎さんは射程距離について「強風の時は良くて5メートルほど。噴射体勢を取りつつ後ずさりし、5メートルに近づいた瞬間に噴射できれば効果的」とした。クマがいなくなっても噴き続け、中身は全部使い切る。

クマスプレーをホルダーごと腰に装着。いざという時にすぐ使えるように…

ホルダーからはずし、ロックを解除。クマの顔をめがけて噴射する。操作する時はクマから目を離さない

クマのパネルまで5メートル。奥のカラーコーンまで10メートル。距離感をつかんでおくことも大事
同社の倉澤久美土木課長(55)はスプレー操作を体験し、「もっと素早くできるイメージだったが、ちょっと時間がかかった。クマスプレーを使うのはあくまで最終手段。まずは寄せ付けないことが重要」と実感。作業現場でクマを目撃したことがあるが、その時は20~30メートル離れていて、クマはそのまま逃げていった。昨年の出没増で、「やはり不安は大きい。自分もですが、作業員さんの身も守らないといけないので、しっかり対策をしていかなければ」と気を引き締める。

実際に操作してみないと感覚がつかめない。スムーズに使えるよう練習用スプレーなどで噴射までの動作を練習しておくことが必要
同社はJRの在来線(釜石線、山田線など)、東北新幹線、三陸鉄道のほか、県道の路線管理を担う。峠など山間部に入っての作業が多く、必然的に野生動物との接点も増える。作業員は現場に向かう際、クマ鈴とクマスプレーを装備しているが、実際のスプレー噴射はほぼ初体験。「“知っている”と“できる”は違う。学んだことを実践し、正しく使えるようになることが大事。空スプレーでの操作練習も対策の一環として取り入れたい」と青木社長。講習の一般公開について、「クマ問題は地域住民にも関わること。同じ課題の解決につながるような事案は、今後も共に学べる場を提供したい」と地域貢献も望んだ。

釜石新聞NewS
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