釜石市地震・津波避難訓練 2年ぶりに実施 意識低下防げ! 避難場所・経路を再確認


2026/03/05
釜石新聞NewS #防災・安全

大津波警報発表の訓練放送を受け、津波緊急避難場所の鵜住居小・釜石東中校庭を目指し、学校前の階段を駆け上がる人たち

大津波警報発表の訓練放送を受け、津波緊急避難場所の鵜住居小・釜石東中校庭を目指し、学校前の階段を駆け上がる人たち

 
 釜石市の地震・津波避難訓練は1日、市内全域の住民を対象に行われた。同市では、大船渡市の大規模山林火災の後方支援(昨年3月)、県総合防災訓練時の津波緊急避難場所付近でのクマの目撃(同11月)により、予定していた同訓練を中止したため、今回は2年ぶりの実施。改めて身近な避難場所、経路、所要時間などを確認し、いざという時の“命を守る行動”につなげてもらおうと開催した。東日本大震災の発生から11日で15年―。記憶の風化を防ぎ、経験のない世代への確かな教訓継承へ、さらなる意識醸成が求められる。
 
 訓練は午前8時半、三陸沖を震源とするマグニチュード8を超える巨大地震が発生。同市で震度6強を観測し、沿岸部に大津波警報が発表されたとの想定(予想最大波15メートル、津波到達予想同9時ごろ)で行われた。防災行政無線で緊急地震速報の警報音が鳴らされると、落下物などから身を守る行動「シェイクアウト」を実践。3分後に大津波警報発表のサイレンが鳴り、それぞれがいる場所から最も近い高台への避難を開始した。
 
「急げ!高台へ」 子どもたちも津波時の避難行動を実践

「急げ!高台へ」 子どもたちも津波時の避難行動を実践

 
鵜住神社側の階段を上がり、校庭に向かう住民ら

鵜住神社側の階段を上がり、校庭に向かう住民ら

 
 鵜住居町の市指定津波緊急避難場所の一つ、鵜住居小・釜石東中校庭には、「避難指示発令」の放送が繰り返される中、住民らが続々と避難。正面の大階段のほか、鵜住神社側、商業施設・うのポート側と3方向から、最短ルートで住民らが上がってきた。訓練終了時間の午前9時までに110人が避難した。
 
 2024年に同町に移住した小笠原綾子さん(46)は、小3と未就学の子ども2人を連れて訓練に参加。昨年12月8日深夜に発生した青森県東方沖地震で津波警報が出た際も家族4人で避難し、拠点避難所となっている両校体育館で一夜を明かした。「家族一緒の時はいいが、別々にいる時がやはり心配。子どもたちには、『後で必ず迎えにいくから、不安でも、真っすぐ近くの高台に逃げて』と教えている」と小笠原さん。訓練を重ねることで、「子どもたちに避難の仕方を体で覚えてほしい。ここ(鵜住居)に住む以上は絶対に身に付けておくべきことなので」と幼いころからの意識付けを図る。
 
 震災の津波で自宅が全壊、再建した家に暮らす沖寿雄さん(81)は15年前の避難時の様子を鮮明に記憶する。沖さんらは隣近所に声がけしながら、最も近い高台の鵜住神社境内(当時の市指定津波避難場所)に誘導。同所には160人以上が避難し、津波の難を逃れた。避難者の半数は裏山を越え、さらに内陸部に向かい、足腰が弱い高齢者などは神社で一夜を明かした。「あの時のようなことは二度とあってほしくないけど…。訓練を重ねて足元を固めないと、いざという時、行動できない。何かあったらすぐ逃げられるように避難意識は常に持ち続けていなければ」と訓練の重要性を心に刻む。
 
(訓練)地震発生から13分が経過。校庭に続々と避難者が集まる

(訓練)地震発生から13分が経過。校庭に続々と避難者が集まる

 
鵜小・東中校庭は海抜約20メートルの高台に位置。さらに高い場所にある校舎内の体育館は数日~数カ月の避難生活に対応する拠点避難所となる

鵜小・東中校庭は海抜約20メートルの高台に位置。さらに高い場所にある校舎内の体育館は数日~数カ月の避難生活に対応する拠点避難所となる

 
 地元の鵜住居町内会(古川愛明会長、150世帯)自主防災部は避難訓練に続き、今年も独自に避難所開設訓練に取り組んだ。鵜小・東中の2体育館は災害時に一定期間、避難生活を送るための市指定拠点避難所になっているが、災害の規模が大きいと担当の市職員が即座に集まることができない可能性がある。このため、同町内会は自分たちで避難者の受け入れにいち早く対応できるよう、訓練を重ねる。今回も災害用備蓄倉庫から段ボールベッドやパーテーションを体育館に運び、組み立て作業を行った。
 
災害用備蓄倉庫から段ボールベッドのセットを運び出し、体育館で組み立て作業を体験

災害用備蓄倉庫から段ボールベッドのセットを運び出し、体育館で組み立て作業を体験

 
ワンタッチパーテーションの設置も体験。避難所でのプライバシー確保や感染症対策などに役立てられる

ワンタッチパーテーションの設置も体験。避難所でのプライバシー確保や感染症対策などに役立てられる

 
 同町内会は被災前の3地区(上、仲、川原)をカバーする新たな町内会組織として2018年4月に設立。エリア内には被災後に自宅を再建、または復興住宅に入居した古くからの住民のほか、震災後に新たに移り住んだ住民が混在。新規移住者は年々、増加傾向にある。古川会長(78)は訓練参加者が限定的なことを危惧。「地域の防災力を高めるには町内会組織の充実が不可欠。イベントなどを通じて町内会活動への参加を促し、基盤を固めることで、自主防災にもつなげていければ」と今後を見据える。
 
市立図書館で行われた市災害対策本部運営訓練(写真提供:市防災危機管理課)

市立図書館で行われた市災害対策本部運営訓練(写真提供:市防災危機管理課)

 
 この日は、休日や夜間に大津波警報が発表された場合に市が災害対策本部を置く小佐野町の市立図書館で、災害対策本部運営訓練も行われた。本部長の小野共市長はじめ幹部職員、緊急初動特別チーム第2班の職員(内陸部在住)ら計23人が参集。警報を受け、市長が避難指示を発令し、鵜住居地区災害対策用カメラで鵜小・東中への避難行動の様子をモニターで確認した。同特別チームは緊急避難場所から寄せられる避難者数、釜石消防署が取りまとめる消防団からの避難者数の情報を集計。対策本部へ最新の情報を報告した。
 
 同館には防災行政無線の遠隔制御装置、移動式無線、衛星携帯電話を配備。固定電話6回線は大規模災害時、ボイスワープ機能により、本庁代表電話への連絡が同館の災害対策本部事務局へ転送される仕組みになっている。訓練では配備機材なども使い、情報収集にあたった。災害対策本部員会議では、被害、避難状況の共有、拠点避難所開設、対応方針をシミュレーションした。
 
 意見交換では「緊急避難場所と拠点避難所の違いを正確に理解していない市民も多いと感じる。広報紙やホームページで周知徹底を図る必要がある」「今回の訓練の反省点や課題を庁内で共有し、今後に生かしていかねばならない」などの声が上がった。市防災危機管理課によると、今回の訓練の避難者数は3日時点の報告取りまとめ分で2005人。

釜石新聞NewS

釜石新聞NewS

復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。

取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム


釜石のイベント情報

もっと見る

釜石のイチ押し商品

商品一覧へ

釜石の注目トピックス