根浜の“原風景”復活に期待! 新設「ビオトープ」で市民らが生き物のすみかづくり
根浜ビオトープに生き物のすみかを作り、今後に期待する参加者=6日
4月下旬に整備が完了した釜石市鵜住居町の根浜シーサイド内のビオトープ(生物生息空間)。大型連休最終日の6日、同所のお披露目を兼ね、市民らが生き物のすみかを作る体験イベントが開かれた。参加者は池にすみ始めたオタマジャクシやイモリに大興奮。環境省の準絶滅危惧種「トウホクサンショウウオ」の卵から幼生がふ化する様子も見られ、驚きの声が上がった。
ビオトープは東日本大震災の津波で失われた生態系を取り戻そうと、根浜シーサイドの市指定管理者かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が、市民団体かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)との協働により整備した。市の土地を借用し、釜石東ロータリークラブ(佐藤猛夫会長)から資金提供を受け実現させた。
背後に山林が広がるこの場所には震災前、山から流れ出る沢水を引き込んだ田んぼがあり、カエルやドジョウ、ホタルなど水辺に集う生き物が数多く見られた。しかし、震災の津波で環境は一変。広い水辺が失われたことで、生き物の数も激減していた。同所で観察を続けてきた加藤代表は「もう一度、たくさんの生き物がすめる環境を」と、ビオトープの整備を発案。同様の考えがあった同DMCとの協働事業に至った。
根浜シーサイド内に整備されたビオトープ。水辺にすむ生き物が集まる場所に…
池の中の生き物を探す子どもら(写真上:かまいしDMC提供)。イベントには幅広い年代が参加(写真下:かまいし環境ネットワーク提供)
6日のイベントには市民ら約40人が参加。山側の池の縁の一部に木の枝や笹を差し込み、生き物のすみかを作った。作業の前には生き物の観察も。池の工事から間もないながら、水中にはオタマジャクシやアカハライモリ、水面にはアメンボの姿が見られ、子どもたちが歓声を上げた。参加者の目をくぎ付けにしたのはトウホクサンショウウオの卵。池への沢水の流入口で見つかり、卵のうの中にふ化した幼生の姿が確認できた。観察中に卵のうから飛び出す個体も。
池の縁の一部に木の枝や笹を差し、生き物が隠れられる場所を作った
池の中にはオタマジャクシやアメンボの姿が…
写真右上:トウホクサンショウウオの卵。白丸はふ化した幼生。同右下:アカハライモリ(かまいしDMC提供)
同市の佐藤灯君(7)は「いろいろな生き物が見られて楽しかった。イモリは初めて見た。ここを、きれいで生き物たちにとっていい暮らしができる池にしたい」。父広明さん(37)は「自分が子どものころは自然で遊ぶ機会がいっぱいあったが、今はそういう場所も少なくなっている。こういう体験が将来にいい影響を与えれば」と話した。
「最近は(身近で)カエルの鳴き声を聞くこともなくなった」と話す根浜親交会の佐々木雄治事務局長。今回のビオトープ整備で根浜の原風景が戻ることを期待し、「鳴き声で自然を感じられるという側面もあると思う。多くの親子に来てもらい、昔ながらの根浜の生き物に触れて自然を体感してもらえたら」と願う。
さまざまな生き物に興味津々の子ども(写真:かまいしDMC提供)
この日は、NPO法人日本ビオトープ協会主席アドバイザーで相談役の野澤日出夫さんも駆け付け、「命を育み、生き物が心地良く生きられる場所がビオトープ。自然の豊かさをどう守るかが大事」と参加者に説明。津波で失われた自然を復元しようという取り組みに「自然に元の状態に戻すことが一番だが、これからは子どもたちの環境教育の場としての利用も大切な要素。人が入らないエリアと観察エリアに分け、より元の自然に近い形にしていければいいのでは」とアドバイスした。
発案者の加藤代表は「第一歩を始めることができ、安心とうれしさでいっぱい。生き物の種類、数がさらに増えていくといい」。大好きなシュレーゲルアオガエルの鳴き声も耳にしながら、数年後の風景を楽しみにした。
入り口にある立て看板。注意事項を守り、安全に観察を!
釜石新聞NewS
復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム