東日本大震災追悼、防災啓発 市民手作り竹灯籠 今年も根浜避難階段に 2/11~点灯へ準備着々
竹灯籠づくりを行った体験会の参加者=20日、根浜シーサイド・レストハウス
東北太平洋沿岸に甚大な津波被害をもたらした「東日本大震災」から間もなく13年-。被災した釜石市鵜住居町根浜地区では、犠牲者を追悼する竹灯籠の製作が始まっている。2021年に完成した地区内の津波避難階段に設置するもので、3年目の取り組み。今年は、今月1日に発生した能登半島地震の犠牲者鎮魂、早期復興への祈りも込める。20、27の両日は一般向けの製作体験会が開かれた。市民の思いが詰まった竹灯籠は2月11日から点灯を開始する。
市が整備した観光施設「根浜シーサイド」の指定管理者かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が、震災犠牲者の追悼、避難意識の啓発などを目的に実施する。同施設内のキャンプ場と高台の市道箱崎半島線をつなぐ避難階段(111段)に竹灯籠55本を設置予定。同地区を訪れる人に階段の場所を知ってもらうのにも役立てる。
キャンプ場から高台の市道に上がれる津波避難階段(左)。昨年の竹灯籠の点灯(右)
20日、レストハウスで行われた午前の体験会には、市内の家族連れのほかJICA海外協力隊の派遣前訓練で同市に滞在中の隊員計13人が参加した。根浜の間伐竹材を長さ1メートル弱に切り分けたものに、明かりが漏れるよう穴を開ける作業を行った。参加者は模様が描かれた型紙を竹に貼り、電動ドリルで大小の穴を開けた。
竹灯籠づくりに挑戦する参加者。電動ドリルを使って作業
模様が描かれた型紙を竹に貼り、ドリルの刃を替えながら大小の穴を開けた
栗林町の竹山凜乙ちゃん(4)は「かわいい模様になった。出来栄えは100点。海の近くの階段に飾る」とにっこり。13年前に被災した凜乙ちゃんの母親(34)は震災後に生まれた2人の子どもに日ごろから防災の話をしており、「(関連行事への参加で)津波の怖さ、人は(誰かに)助けられて生きていることを感じてもらえれば。他で起きている災害も決して人ごととは思ってほしくない」と話した。
昨年3月から震災伝承活動を始めた同市最年少語り部の佐々木智桜さん(9、鵜住居町)は2回目の参加。同避難階段について「ここが道しるべ。(高台の)避難場所に続く道ということを知ってほしい」と願う。自身は“伝える”ことの大切さを実感。「大人になったら防災士の資格を取る。英語で伝えられるように英会話の勉強も始めた」と明かした。
同市最年少語り部の佐々木智桜さん(右)も熱心に作業
完成した竹灯籠に明かりを入れると美しい模様が浮かび上がった。母智恵さん(右)と笑顔を見せる智桜さん
かまいしDMCで11日から研修を始めたJICA海外協力隊の川口泰広さん(61、山口県出身)は、地域住民から話を聞くなど同震災について勉強中。「学校の命を守る教育、住民の合意形成による地域復興など釜石ならではの取り組みに感心する」。8月から派遣されるラオスでは、これまでの知見を生かし、飲料水の水質改善に携わる予定。「東南アジアも津波被害がある地域。釜石での学びを何らかの形で生かせれば」と願い、今回のような地域貢献活動の経験も糧とする。
竹灯籠は2月11日午後5時に点灯式を行った後、3月まで土日祝日に明かりをともす予定(3月11日も)。竹の中のLED電球は、廃食油を精製したバイオディーゼル燃料による発電で点灯する。同DMC地域創生事業部の佐藤奏子さんは3年目の活動に「追悼の気持ちを共にしながら、震災の記憶をつないでいく機会となっている。各地で災害が多発しており、有事の際はすぐ逃げられるような意識づくりが必要。今年は能登半島地震被災地への思いも皆さんで同じくしたい」と話す。
竹灯籠は2月11日から点灯開始。3月まで土日祝日の午後5時~同7時点灯。震災命日の3月11日(月)も同様
釜石新聞NewS
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