2024年の幕開け 平穏無事願う人多く 能登半島地震被災者へ釜石市民 心寄せる


2024/01/09
釜石新聞NewS #地域

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 まれに見る暖かさの中、2024年が幕を開けた釜石市。新型コロナ感染症の5類移行後、初めて迎える正月は帰省客も一段と増えた印象で、おおみそか深夜から元日にかけて、各地の神社や寺は大勢の初詣客でにぎわった。穏やかな三が日になるかと思われた矢先、元日夕方に飛び込んできた能登半島地震発生の一報。甚大な被害が明らかになるにつれ、13年前に東日本大震災を経験している市民らは心を痛め、被災者らを案じる日々が続いている。市内の店舗などでは、いち早く義援金を呼び掛ける募金箱が設置された。
 

穏やかな年越し 唐丹町・盛岩寺で1年の平穏祈る鐘の音響く 住民・帰省客ら願い込め

 
 梵鐘を鳴らし、1年の無事を祈る家族=元日午前0時10分ごろ、盛岩寺

梵鐘を鳴らし、1年の無事を祈る家族=元日午前0時10分ごろ、盛岩寺

 
 唐丹町の盛岩寺(三宅俊禅住職)では元日午前0時に、新年の訪れを告げる鐘が打ち鳴らされた。その後、地元住民らが帰省した家族を伴って続々と初詣。境内では上野賢庸副住職(35)らが訪れた人たちを出迎え、新年のあいさつを交わした。初詣客は境内の梵鐘(釣り鐘)を代わる代わる突き、1年の平穏無事を祈った。
 
 同町にある母親の実家に帰省した宮城県仙台市の小野彩羽さん(15)は昨年を振り返り、「学校でもマスクを外し、みんなの顔が見られるようになった」とコロナ5類移行後の変化を実感。昨春、入学した尚絅学院高ではバスケットボール部に所属。「2年生になる今年は試合で多くのことを学べればいいな。目標は県3位以内」と志を新たにする。母幸恵さん(46)は「コロナで帰省できなかった2年間はやはり寂しかった。両親に顔を見せに帰ってこられるのはうれしい。家族みんな、けがなく健康で過ごせますように」と願いを込めた。
 
新年初の読経を行う上野賢庸副住職(左)。年忌表に見入る人たち(右)

新年初の読経を行う上野賢庸副住職(左)。年忌表に見入る人たち(右)

 
盛岩寺本堂で祈りをささげる家族連れ

盛岩寺本堂で祈りをささげる家族連れ

 
 本堂では上野副住職が新年初の朝のお勤めを行った。同寺では年始に故人の年忌(三~五十回忌)を知らせる紙を貼り出しており、訪れた家族らが確認する姿が見られた。上野副住職は「昨年は唐丹でもクマの出没が相次ぎ、お墓に供物を置かないよう協力を呼び掛けた。私たちは世界情勢や自然環境の変化に目を向けながら生活していく必要がある」と述べた。
 

初日の出は小雪がちらつく中、雲の隙間から… わずかな光に希望託し

 
初日の出を拝もうと両石漁港周辺には多くの人たちが訪れた=元日午前6時55分

初日の出を拝もうと両石漁港周辺には多くの人たちが訪れた=元日午前6時55分

 
 市内の海岸部には元日朝、初日の出を拝もうとする人たちが集まった。釜石市の日の出時刻は午前6時52分ごろ。大方の天気予報では曇りマークが出ていたが、夜が明け始めると、わずかな期待を胸に多くの人が訪れた。
 
 両石町の漁港周辺では、東日本大震災後に盛り土整備された高台の国道45号沿い、岸壁などにマイカーで乗り入れ、日の出を待つ人の姿が…。水平線上には厚い雲がかかり、一時小雪もちらつくなどしたため、あきらめて帰る人もいたが、午前7時15分ごろ、一時的にわずかな陽光が差し込んだ。残っていた人たちはすかさずカメラを向け、新年の“縁起物”を動画や写真に収めた。
 
水平線上にはあいにくの雲が…隙間から太陽が顔を出すのを待ちわびる人たち

水平線上にはあいにくの雲が…隙間から太陽が顔を出すのを待ちわびる人たち

 
午前7時15分ごろ、湾内に陽光が差し込むと一斉にスマホカメラを向けた

午前7時15分ごろ、湾内に陽光が差し込むと一斉にスマホカメラを向けた

 
 甲子町の前川芽衣さん(14)は春から中学3年生。高校受験を控え大事な年となる。初日の出を見て、「新たな気持ちで頑張っていこうという気になった」とパワーをもらった様子。父仁さん(49)も「(御来光を拝むと)気が引き締まる。明るい1年になれば」と期待。13年前の震災津波で鵜住居町の自宅が被災。仮設住宅での避難生活を経て、甲子町に自宅を再建した。「新たな土地での生活もだいぶ慣れ、落ち着きを取り戻しつつある」と話し、家族の希望あふれる未来を願った。
 

眼下に海を臨む釜石大観音 沿岸有数の初詣スポット 正月三が日に約8千人が拝観

 
観音像の入り口で参拝する人たち=釜石大観音、元日午前10時40分ごろ

観音像の入り口で参拝する人たち=釜石大観音、元日午前10時40分ごろ

 
 毎年多くの初詣客でにぎわう大平町の釜石大観音は、今年も元日の日の出の時間帯(午前7時前後)から拝観者が一気に増え始め、終日混雑が続いた。例年にない暖かさで、天候にも恵まれた今年の正月3が日の人出は、昨年より微増の約8千人だった。
 
 元日朝は曇り空だった市内は、午前8時を過ぎたころから太陽が顔を出し、新年を迎えたまちを明るく照らした。大観音には市内外から家族連れや若者グループなどが次々に訪れ参拝。昨年の加護に感謝し、新しい年への期待を胸に手を合わせた。お守りやお札、熊手や破魔矢などの販売コーナーも客足が途切れなかった。
 
 参拝を終えた人たちは青空に映える白亜の観音像をバックに記念撮影したり、目の前に広がる大パノラマの海上風景を楽しんだりと各所で笑顔を広げた。境内にはキッチンカーも並び、好調な売れ行きを見せた。
 
元日午前中には天候が回復。青空に映える観音像

元日午前中には天候が回復。青空に映える観音像

 
初詣客でにぎわう境内。浄土橋から眺める釜石湾の景色(右下)も目を見張る美しさ

初詣客でにぎわう境内。浄土橋から眺める釜石湾の景色(右下)も目を見張る美しさ

 
 釜石在住の前川凜太郎さん(23)は小中学校の同級生4人で訪れた。同所への初詣はほぼ毎年の恒例。「健康第一でいけるように」と祈りを込めた。社会人3年目。仕事を覚え、職場にも慣れてきたところで、「これからは後輩にも教えられるようにさらに精進したい」と目標を掲げる。県内各地で働く同級生とは「正月に会うのが楽しみ。ずっと仲良くしていきたい」と旧交を温め合う。
 
 同市平田の櫻井武さん(70)は妻、独立した長男家族らと6人で参拝。新年を迎えて願うのは、家族の健康と世界平和。多くの尊い命が奪われている海外2つの戦争に心を痛め、早期終結を強く願った。自身は昨年6月、50年にわたる会社勤めを終えた。人口9万人に達した釜石全盛の時代を知るだけに、昨年11月の同市の人口“3万人切り”に危機感を募らせる。「行政には新たな企業誘致などを頑張ってもらい、何とか人口減を食い止めてほしい」と積極的施策を望んだ。
 

健康づくりは歩くことから 初詣ウオークで誓い新た 能登半島地震被災地に思い寄せ神仏に祈り

 
門松が飾られた商店街を歩く初詣ウオークの参加者=大町、2日

門松が飾られた商店街を歩く初詣ウオークの参加者=大町、2日

 
 釜石市ウオーキング協会(遠野健一会長、会員50人)の新年恒例「初詣ウオーク」は2日に行われた。19回目の開催で、同市と遠野市から協会員と一般参加者26人が集まった。市内の神社と寺4カ所を詣でながら歩き、今年1年の健康を祈願。前日夕方に発生した能登半島地震の被災者にも思いを寄せ、1人でも多くの方が無事であるよう祈りをささげた。
 
 スタート地点となる中妻町の昭和園クラブハウス駐車場で出発式。あいさつした遠野会長(79)は元日に襲った激震に東日本大震災を重ね、「いつ何があるか分からない。被害が拡大しないことを祈るばかり。みんなで健康と平穏無事を願って歩こう」と呼び掛けた。コースは同クラブハウスから浜町の尾崎神社までの約8キロ。途中、八雲神社(八雲町)、八幡神社(大渡町)、薬師山観音寺(大町)に立ち寄り参拝した。
 
大渡町の八幡神社に到着。急な石階段を上った先にある社の前で参拝

大渡町の八幡神社に到着。急な石階段を上った先にある社の前で参拝

 
八幡神社の近くにある長谷川時雨(作家)の文学碑前では、観光ガイドを務める参加者が解説

八幡神社の近くにある長谷川時雨(作家)の文学碑前では、観光ガイドを務める参加者が解説

 
 昨年11月に協会員となった男性(75)は、市の健康診査で高血圧を指摘されたのを機にウオーキングを始めた。今では一日約7500歩を歩く。「歩き始めて血圧が少し下がった。検査の数値が良くなるとさらに欲が出てくる。共に取り組んでいる減塩と合わせ、今年も目標を立てて頑張りたい」と新年の誓い。戦禍、異常気象、天災…。不穏な世界情勢にも懸念を示し、「戦争のない、自然災害の少ない年になってほしい。(大地震に襲われた)石川の皆さんが心配…」と不安な一夜を過ごした被災者を案じた。
 
ゴールとなる浜町の尾崎神社で参拝。今年1年の協会活動に意欲を高めた

ゴールとなる浜町の尾崎神社で参拝。今年1年の協会活動に意欲を高めた

 
 長年続く同ウオークだが、今年ほど暖かい気候の中で行われるのはまれなこと。「天気にも恵まれ、みんなが元気で集まれたのが何より」と遠野会長。会長就任2年目となる今年は「協会の活動を広く周知し、会員でなくても月2回の例会ウオーキングに気軽に参加してもらえるしくみをつくりたい。人生100年時代。自分の足で歩けることは大きな喜び。皆さんの健康づくりに役立ててもらえれば」と、新たな活動の形を模索する。

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