農作物の恵み 存分に味わう 釜石・橋野 人気の「水車まつり」に市内外から500人


2023/11/16
釜石新聞NewS #地域

コロナ禍を経て復活2年目の「水車まつり」。市内外から訪れた多くの人たちでにぎわった

コロナ禍を経て復活2年目の「水車まつり」。市内外から訪れた多くの人たちでにぎわった

 
 釜石市橋野町の「水車まつり」が5日、産地直売所・橋野どんぐり広場周辺で開かれた。農作物の収穫を祝う11月初頭の恒例イベントで、17回目の開催。地元産の穀物や野菜を使った各種メニューが提供され、幅広い世代が郷土の食文化に親しんだ。終盤を迎えた山々の紅葉、水車による米つきの実演も楽しみ、同地域の素晴らしさを五感で味わった。
 
 同イベントは橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)、栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催。地域の魅力を発信しようと季節ごとに開催する、はしの四季まつり(春:八重桜まつり、夏:ラベンダー観賞会、秋:ニジマス釣り大会)の一つに位置付けられる。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年以降、全面または一部中止が続いたが、今年ようやく全4イベント開催が実現した。
 
 菊池会長が歓迎の言葉を述べた後、いつも通り餅まきで幕開け。まつり準備にあたった各団体の代表が、紅白餅約1千個を軽トラックの荷台からまいた。もち米は同産直組合員の二本松農園(鵜住居町)が提供。同振興協女性部員が手作りで仕上げた。来場者は放物線を描く餅を目で追い、懸命に手を伸ばした。
 
荷台からまかれる紅白の祝い餅に老若男女が手を伸ばした

荷台からまかれる紅白の祝い餅に老若男女が手を伸ばした

 
子どもも大人も笑顔で餅まきを楽しむ。水車まつり恒例の光景

子どもも大人も笑顔で餅まきを楽しむ。水車まつり恒例の光景

 
 まつり名物のお振る舞いは、地元産野菜がふんだんに入った豚汁。約300食分が用意され、無料で提供された。手打ちそば、きびの焼き団子、雑穀おにぎりは約150~380食分を各100円で販売。開始とともに長蛇の列ができた。そば打ちには鵜住居公民館で定期的に活動する「そばの三たて会」(奥山英喜会長)が18年から協力。地域間連携でまつりを盛り上げている。各メニューは今回も早々に完売した。
 
振興協女性部が作る豚汁は毎回大好評(左)。手打ちそば(右上)、みそだれをかけたきびの焼き団子(右下)も食欲をそそる

振興協女性部が作る豚汁は毎回大好評(左)。手打ちそば(右上)、みそだれをかけたきびの焼き団子(右下)も食欲をそそる

 
お目当てのメニューを求めて長蛇の列ができた

お目当てのメニューを求めて長蛇の列ができた

 
 家族や親族10人で訪れた北上市の岩﨑慎之介君(9)は「手打ちそばが気に入った。ここは来たことがあるけど紅葉の時期は初めて。秋の景色はきれい」と感激。弟隆之介君(7)も「餅を7個拾った。焼いて食べたい。ここに来るとさわやかな気持ちになる」とご満悦。釜石市出身という母静香さん(38)は「具だくさんの豚汁、雑穀おにぎりがおいしかった。豊かな自然の中で子どもたちにはいろいろなことを学んでほしい」と期待した。
 
「どれもおいしい!」笑顔で各種メニューを味わう子どもたち

「どれもおいしい!」笑顔で各種メニューを味わう子どもたち

 
まつり来場者は近年、若い世代の親子連れも多い

まつり来場者は近年、若い世代の親子連れも多い

 
 イベント名にも入る水車は産直隣の親水公園内にあり、同所のシンボル的存在。かやぶき屋根の小屋に併設され、回転の力で中の設備が動く仕組みになっている。同まつりでは普段は公開していない小屋の中を見ることができ、来場者はきねでもみ米をつく様子を見学した。
 
 宮城県の戸田慎治さん(70)は同産直で販売される米粉団子のファンで、妻と共に年に1~2回は同所に足を延ばす。今回は偶然にもまつり開催日と重なり、イベントも楽しんだ。水車小屋では地元の方から「これでついた米はうまい」と教えてもらい、豚汁をはじめ全メニューも堪能。「そばは2杯いただいた。きび団子は素朴な甘さで最高の味わい。こういうイベントは子どもたちの食育にも最適。食の安全への理解、生産者への感謝の気持ちを育む機会になる」と話し、「地域のつながりが感じられる」と継続開催を望んだ。
 
親水公園に建つ水車小屋。まつりでは小屋の中も見学できる

親水公園に建つ水車小屋。まつりでは小屋の中も見学できる

 
小屋の中では水車の力できねを動かす米つきを実演。子どもたちも興味津々

小屋の中では水車の力できねを動かす米つきを実演。子どもたちも興味津々

 
 近年の極端な夏の猛暑や秋になっても続く残暑は、農作物生産者にとって悩みの種。栽培管理の苦労は年々増大する。同産直の藤原英彦組合長は「例年だと9月いっぱいは出るトマトの出荷が今年は早めに終了。米は暑さの影響は多少あったものの、幸い台風の直撃がなく、収量は例年並み。冬野菜のダイコンやハクサイは残暑の影響で成長が遅れている」と話す。野生動物による食害も生産者を悩ます。「今年は全国と同様、クマが異常に多い。クリもかなりやられ、出荷もいつもより少ない」と藤原組合長。猛暑と獣被害への今後の対策に課題を示した。
 
産直「橋野どんぐり広場」には地元産の野菜が並ぶ。これからはダイコンやハクサイが出始める

産直「橋野どんぐり広場」には地元産の野菜が並ぶ。これからはダイコンやハクサイが出始める

 
 同市では3日に最高気温26.6度を記録。同まつり開催時の同所の気温は12度で、来場者は急激な温度変化にも驚きながら、季節の移り変わりを肌で感じていた。

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