見て、触れて知る釜石の魚 中妻公民館と岩手大 夏休み中の子どもたちに体験学習の場提供
サクラマスの解剖に挑戦する子ども=おさかな学習会、中妻公民館
釜石市上中島町の中妻公民館(菊池拓朗館長)で5日、地元の海に生息する魚などに親しむ学習会が開かれた。同館が夏休み中の子どもたちを対象に企画。同市平田の釜石キャンパスで学ぶ岩手大農学部食料生産環境学科水産システム学コースの学生を講師に迎え、釜石湾で養殖事業が進むサクラマスの解剖や海の生き物に触れるタッチプールで子どもたちの興味、関心を引き出した。
魚の解剖学習には市内の小学生8人が参加。同大同コースの4年生5人が講師を務めた。サクラマスの名前の由来、産卵期の体の変化、サケのように川でふ化し、海に出て産卵のため再び川を上ることなどを学んだ後、解剖に取り組んだ。
サクラマスの特徴を教える岩手大4年の吉郷向陽さん(右)
学生らに教わりながら解剖開始。慎重にはさみを入れる
用意されたサクラマスは、研究のために釜石キャンパス敷地内で育成した陸上養殖魚。子どもたちはピンセットとはさみを使って身を切り開き、体の中のさまざまな部位を取り出した。魚にも心臓や肝臓、胃など人間と同じようなさまざまな臓器がある一方、呼吸のための“えら”、浮き沈みの調節や肺の役割をする“浮き袋”など魚類特有の部位があることを学んだ。雌の個体からは卵も出てきて、子どもたちは大興奮。生まれ故郷などを識別するために入れられたタグ(標識)も見つかり、興味をそそられた。
はさみを器用に使い、体の中の各種部位をきれいに切り離す
こちらは大学生顔負けの腕前!? 体の中からは魚の由来を示すタグ(左上黄枠)も見つかった
取り出した部位をじっくり観察。学生らがやさしく見守る
菊池彩楓さん(10)は初めての解剖体験に「さまざまな部位をきれいに分けることができて、気持ち良かった。魚の体の中を実際に見るのは初めて。心臓が思いのほか小さくてびっくりした」と新たな発見を喜んだ。
解剖後は、学生らが研究のために釜石の海で捕まえた生き物に触れる体験。地元では“ドンコ”の呼び名で親しまれる「チゴダラ」、体のしま模様がラガーシャツに似ていることから釣り人らに“ラグビー”の愛称で呼ばれる「リュウグウハゼ」、カジカ類のほか、キタムラサキウニやイソガニ、ナマコなど12種が水槽に放たれた。軟体動物のアメフラシは、触ると防衛反応で紫色の液体を放出。子どもたちを驚かせた。タッチプールには、解剖学習参加者のほか事前に申し込んだ親子連れも体験に訪れた。
海の生き物タッチに笑顔!左下白枠は子どもたちに触られて紫色の液体を出したアメフラシ
恐る恐るウニを手に取ってみる子ども(右)。初めての感触は?
生きた魚にじかに触れられるのは貴重な経験
学生メンバーの代表、吉郷向陽さん(21)は「海のある釜石に住んでいても、磯場などで生き物に触れ合ったことがないという子も多い。実際に見て触れての学習は、自分もそうだったが成長につながる。こういう機会を通じて少しでも魚に興味を持ったり、地球温暖化などで変化している海洋環境にも目を向けてもらえれば」と期待する。
同大釜石キャンパスの学生は昨秋、市役所本庁舎とイオンタウン釜石で、地元の海に生息する魚などを水槽展示する「移動水族館ちょこっとかまいSEA(シー)!」を開催。市民が海の生き物に親しむ場を提供し、好評だった。中妻公民館では昨冬に同様のイベントを開催。「またやってほしい」との要望を受け、今回は「自由研究の題材にも」と夏休み中の実施を企画した。館内では7月31日から学習会当日まで水槽展示も行われた。厳しい暑さが続く今夏とあって、来館者からは「涼しげでいいねぇ」など歓迎の声が聞かれたという。
中妻公民館では5日の学習会まで水槽展示も行われ、来館者から好評だった
釜石新聞NewS
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