声の便り 届けて30年 視覚障害者へ 釜石・ハマナスの会 記念誌発行 受け継ぐ朗読奉仕


2023/07/07
釜石新聞NewS #文化・教育

完成した記念誌を手に笑顔を見せるハマナスの会の会員たち=7月2日、釜石市立図書館

完成した記念誌を手に笑顔を見せるハマナスの会の会員たち=7月2日、釜石市立図書館

  
 釜石市小佐野町の市立図書館を拠点に活動する朗読奉仕「ハマナスの会」(藤原由香里会長)。目の不自由な人のために地元新聞などから季節の話題や身近な情報を選んでCDに録音し、提供するボランティア団体だ。昨年、30周年を迎えたことから記念誌の作成を進め、このほど完成した。「アットホームな雰囲気で楽しい」「月1回の活動が張り合いに」「いつの間にか年齢が上に。もう少し続けて頑張ろうかな」。会員たちの思いがつづられている。
  
 1992年に発足した同会は、月に1回活動する。2011年の東日本大震災後2カ月間は同館が休館したため活動ができなかったが、それ以外は毎月欠かさず30年間継続。年に1回、朗読技術向上のための研修も行っている。録音だけでなく、利用者から希望があった際は本や雑誌を対面で朗読することもある。
 
 A4判全38ページの記念誌では年表で30年の歩みを振り返る。現在の会員のほか、利用者や活動を支えてきた図書館長や講師、元会員ら7人が寄稿。朗読奉仕活動の価値や効果、感謝の気持ち、懐かしい思い出などが、それぞれの視点で記されている。
 
会の歩みや声を通した交流の思い出などがつづられた記念誌

会の歩みや声を通した交流の思い出などがつづられた記念誌

 
野田市長に記念誌を手渡す(右から)松村さん、川畑さん、鈴子副会長=6月16日、釜石市役所

野田市長に記念誌を手渡す(右から)松村さん、川畑さん、鈴子副会長=6月16日、釜石市役所

 
 50部作成し、利用者や会員らに配布。一部は市に寄贈し、同館にも置かれている。6月16日には市役所の野田武則市長を訪ねて記念誌の発刊を報告。94年に入会した川畑光子さん(85)は「声を通して人とのつながりを感じている。ボランティアだが、いい加減な読みは許されない」と活動への強い思いを伝えた。「生の声でふわっとしたあたたかみを楽しんでもらっていると思う」と利用者の様子を想像するのは松村弘子さん(85)。鈴子和子副会長(67)は「先輩たちの力のおかげ。知恵を絞り合って、ますます頑張りたい」と意欲を見せた。
  
視覚障害者に届ける記事を読み、録音する松村さん(左)と藤原会長=7月2日、釜石市立図書館

視覚障害者に届ける記事を読み、録音する松村さん(左)と藤原会長=7月2日、釜石市立図書館

 
 「みなさん、お変わりございませんか。今日も新しい話題、心あたたまるお話、お届けします」
 
 ゆったりと穏やかな語りが、図書館の一室から聞こえてきた。活動日となった7月2日、全会員7人が集合。声の出し方や読み上げる速度、間の取り方、アクセントなど細部まで気を配りながら記事の朗読、録音活動にいそしんだ。この日、会員が持ち寄ったのはSL銀河のラストランや釜石よいさの復活を伝える記事など約30本。行政、教育、論説、エッセーなど多様なジャンルに触れてもらえるよう選別し、70分ほどのCDを作成した。
 
 完成品は後日郵送。受け取る視覚障害者の負担金などはなく、現在11人がサービスを利用する。「地域の話題をタイミングよく取り上げている」「いろんな読み手がいて退屈しない」「なまりにホッとする」などと評価は上々。そんな声に、届ける側の会員たちも力をもらっている。「まだまだ未熟で、今も勉強中」と口をそろえ、やる気、向上心は衰え知らず。仲間や利用者との声を通した交流を楽しんでいる。
  
 「また来月お会いしましょう ごきげんよう」
  
滑舌よく伝えるため早口言葉で発声練習=7月2日、釜石市立図書館

滑舌よく伝えるため早口言葉で発声練習=7月2日、釜石市立図書館

 
黒板に項目と録音時間を記して選別。下読みも入念に=7月2日、釜石市立図書館

黒板に項目と録音時間を記して選別。下読みも入念に=7月2日、釜石市立図書館

  
 和気あいあいとした雰囲気の同会では、50~80代の女性たちが活躍している。ここ数年は、会員の高齢化や若年層の担い手不足が課題。利用者の拡大も目標となっている。「利用する方がつつがなく暮らし、生活の彩りやゆとりを感じてもらえるといい。これからも無理せずに長く活動を続けたい」と藤原会長(56)。
 
 同会では会員を募集中。性別、年齢、経験の有無は問わない。通常は毎月第1日曜日が活動日。「来たれ若者よ!興味のある方は気軽に見学を」と呼びかける。詳しくは市立図書館(電話0193・25・2233)へ。

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