あふれる「SL銀河“愛”」ラストシーズンに一層胸熱く! 沿線で全国のファンらお出迎え
今シーズン運行初日、陸中大橋駅に到着したSL銀河=25日
2014年の運行開始以来、沿線住民をはじめ全国から訪れるファンを魅了し続けてきた「SL銀河」。その姿を愛してやまない人々は、ラストシーズンの運行開始を特別な思いで見つめた。25、26日の上下運行に、沿線各地では多くの人たちがカメラを構え、通過する列車に手を振った。
25日、釜石市最西端の陸中大橋駅。列車到着の1時間前から待ちわびたのは紫波町の譽田貢司さん(53)家族。三女の朱菫さん(24)、禅太朗ちゃん(3)、すみれ子ちゃん(2)親子は、貢司さんお手製のSL銀河Tシャツと帽子、バッジを身に着け、SL愛をアピール。この日は花巻―新花巻駅間しか切符が取れず、1区間だけ乗車後、車で列車を追いかけてきた。興奮冷めやらぬ禅太朗ちゃんは「ぽっぽの音大好き。手を振ったの楽しかった」とにっこり。
「SL銀河大好き!」譽田貢司さん(中央)家族
譽田さん手作りのSL銀河Tシャツ。2人のお孫さんのために帽子やバッジも作っちゃいました!
「一般住宅の窓からも手を振ってくれる。外から来る人にも地元からもこんなに愛されている列車ってあるだろうか?釜石線の象徴がなくなるのは寂しい」と貢司さん。「せめて機関車だけでも胴体展示して、みんなが触れ合えるよう残してほしい」と願う。これまで全区間乗車を目指し、何度も挑戦してきたが夢はかなっていない。妻彩野さん(50)は「何とか6月までに…。すすまみれになりながら釜石の景色が見たい」と最後の望みをつなぐ。
SL到着時刻が近づくにつれ、駅には続々と人が集まった。県外ナンバーの車も多数。「これが最後になるかなと思って…」。新潟ナンバーの車で乗り入れたのは、14年の試運転から追いかけているという高木亘さん(50)。「(終盤になって)混むと、思うように写真が撮れなくなりそうなので」と初日に駆け付けた。今シーズンでの運行終了に「とっても残念。客車の老朽化は仕方ないが、機関車はまだ使えそう。どこかで走ってくれたら」。SL撮影が趣味で全国に足を運ぶが、「勾配のある道のり、風光明媚な沿線はここならでは。季節によって見栄えが変わるのも大きな魅力」と語った。
25日は駅以外でもSLを待つ人たちが多く見られた。野田町の踏切付近、小佐野駅近くの線路をまたぐ歩道橋では複数の人出があった。釜石駅周辺を見下ろす県道水海大渡線に集まった人たちのお目当ては、駅手前の甲子川橋梁を渡るSL。写真や映像を熱心に撮影する人たちが並んだ。
甲子川橋梁に近づくSL銀河(左)と高台の県道水海大渡線でカメラを構える人たち(右)
釜石駅手前の甲子川橋梁を進む姿は圧巻!汽笛の音とともにファンを魅了
大渡町の女性(85)は同県道が日課の散歩コース。テレビのニュースで花巻駅出発の様子を目にし、釜石駅到着時刻に合わせ自宅を出てきた。「汽笛の音だけでもいいもんね~。いつもあの辺で2、3回鳴らすんだ」。被災した釜石に元気をくれたSLに感謝。「もうちょっと走ってくれるといいんだけど。機械のことだから分からないもんねぇ」。最後の運行まで、その姿にエネルギーをもらうつもりだ。
雨にぬれながら、緩やかな坂道を上る=甲子町大橋、26日上り
26日は雨がっぱ姿の“撮り鉄”らが防水対策をした撮影機材で待機。水にぬれ、一層黒光りする蒸気機関車の車体を記録した。14年の試運転以来、毎月1、2回は撮影に来ているという神奈川県横浜市の加辺晃さん(55)。夜行バスと一番列車を乗り継ぎ、沿線に足を運ぶのも10年目となった。写真と映像の“二刀流”。釜石市内の撮影ポイントも熟知していて、この日は桜木町でカメラを構えた。
左:春の花々もラストシーズンに彩りを添える=桜木町/右:陸中大橋駅出発直後のSL銀河(ともに26日)
「SL銀河は坂道が多く、煙が多いのがいい。そういう所は人も多く集まる」と加辺さん。沿線に仮設住宅が立ち並ぶころから、復興に向かうまちの様子も目にしてきた。「高速道路ができたり街並みも変わってきたが、まだ復興途中なのだろう。この10年、SL運行が地元の力になってきたのは外から来ても感じている。いつかは終わるとは思っていたが…、ちょっと早いかな」。それでも最後までその雄姿を見届けるつもり。「来月は2回来ます」と声を弾ませた。
釜石新聞NewS
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