東日本大震災12年、大切な人をいつまでも胸に 釜石で命を思い、祈り、誓う


2023/03/11
釜石新聞NewS #防災・安全

祈りや誓いを込めて東日本大震災12年を迎える釜石市民

祈りや誓いを込めて東日本大震災12年を迎える釜石市民

 
 東日本大震災から12年、命を思う――。まちの復興は進んでも、大切な人を失った悲しみが消えることはない。でも、あの人を思い、震災の教訓を伝えながら諦めず一歩ずつ前に向かうことが、報いになると信じる。11日を前に、犠牲者を悼み地域の安寧を願う法要、追悼施設の清掃活動などが行われた釜石市。「手を合わせれば、思いが届く」「一歩ずつ前へ」「守る側になりたい」。かけがえのない人々をまぶたの裏に浮かべ、そして地域の未来や希望を胸に抱き、今日も祈り続けている。
 

眼下に広がる海に向かい手を合わす 根浜地区

  
根浜地区で行われた震災慰霊祭で、黙とうする住民ら=4日

根浜地区で行われた震災慰霊祭で、黙とうする住民ら=4日

  
 震災の津波で壊滅的な被害を受けた鵜住居町根浜地区では4日に慰霊祭が行われた。高台造成地に整備された復興団地の住民ら約30人は地震発生時刻、午後2時46分に黙とう。津波記念碑が建つ団地内の公園で「お地蔵さん」に白菊を手向けた。
 
 同地区には現在35世帯約90人が暮らす。津波で住民15人が犠牲になった。「海は起こると怖いが、海とともに育ってきたから(海が)なければ生活できない」と80代男性。隣に住んでいた親戚らが亡くなり、「何年たっても悲しみ、寂しさは変わらない」と、眼下に広がる穏やかな海を静かに見つめていた。
 
海を望む高台の公園で「お地蔵さん」に手を合わせる住民=4日

海を望む高台の公園で「お地蔵さん」に手を合わせる住民=4日

 
 追悼行事を続ける根浜親交会の佐々木三男会長(61)は慰霊祭で防災市民憲章を読み上げた。1カ月前に発生したトルコ・シリア地震に触れ、「災害はいつ起こるか分からない。命を守るため、憲章を受け止めてもらえたら。若い世代とも思いを共有し、みんなで地区を活性化させていきたい」と力を込めた。
  

十三回忌「復光」祈願法要 鵜住居観音堂

  
震災の十三回忌に合わせ鵜住居観音堂で営まれた「復光」祈願法要=5日

震災の十三回忌に合わせ鵜住居観音堂で営まれた「復光」祈願法要=5日

   
 津波で流失後、再建された鵜住居観音堂で5日、毛越寺(平泉町)の藤里明久貫主(72)らが震災の十三回忌に合わせ「復光祈願法要」を営んだ。地域住民ら約50人が参列し、読経に合わせて焼香。犠牲者の冥福と地域の安寧を願って静かに手を合わせた。親戚が行方不明のままという川崎シゲさん(82)は「悲しみは続くけれど、思いが届くかなと思った。見守ってもらっているよう」と目を細めた。
   
 昨年3月に再建された観音堂には、破損したものの流失を免れた本尊「十一面観音立像」(県指定文化財)が安置される。修復に尽力した故大矢邦宣さん(震災当時、盛岡大教授)の遺志を継ぎ、被災地に通い続けている藤里貫主は「まちの様子は変わったが、人の心はそう簡単に変わらない。諦めず、一歩一歩前に向かうことが大切。着実に進む姿を観音様が見守ってくださっている」と参列者に呼びかけた。
   
毛越寺の藤里明久貫主らを囲んで写真撮影する鵜住居地区の住民ら=5日

毛越寺の藤里明久貫主らを囲んで写真撮影する鵜住居地区の住民ら=5日

   
 観音堂を管理する別当の小山士(つかさ)さん(79)は、思いを寄せ続ける人たちに感謝を伝え、「高台にある観音堂を復興のシンボル、前向きに生きていく心のよりどころとして守り続ける」と誓った。
   
 

釜石東中生らが芳名板を清掃 釜石祈りのパーク

   
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芳名板を磨く釜石東中の生徒たち=8日

   
 市内全域の震災犠牲者1064人(関連死を含む)のうち、1002人の芳名が掲げられる鵜住居町の追悼施設「釜石祈りのパーク」。慰霊に訪れる多くの人たちに落ち着いた気持ちで手を合わせてもらおうと、8日、施設管理者や地域住民ら約20人が芳名板や石畳の洗浄など清掃作業に取り組んだ。
   
 2020年から行っていて、今回は釜石東中(佃拓生校長)の3年生35人(在籍41人)が協力。芳名板を布で丁寧に磨いた内藤龍也さんは「悲しいことがたくさんあった場所。きれいになるように」と思いを込めた。憲章の「命を守る」との文字に触れた髙清水麻凛さんは「震災当時は3歳で、守られる側だった。震災や防災のことを学んできたから、今度はもっと小さい子を連れて逃げられたらいい」とうなずいた。
   
鵜住居地区防災センター跡地に整備された祈りのパーク。解体したコンクリート片を使った階段付近でも作業=8日

鵜住居地区防災センター跡地に整備された祈りのパーク。解体したコンクリート片を使った階段付近でも作業=8日

   
 作業後、生徒たちは施設前に並んで合唱。被災を経験した当時の東中生の思いを歌にした「いつかこの海をこえて」に、「苦しみを乗り越え、希望の道を進もう」との決意を乗せた。
   
釜石東中3年生が製作したポスター。生徒の手と未来への思いを散りばめる=8日

釜石東中3年生が製作したポスター。生徒の手と未来への思いを散りばめる=8日

   
 「いつか~」は歌詞の歌い出しをつなげると、「鵜住居で生きる 夢いだいて生きる」とのメッセージが浮かび上がる。3年生はこの歌とともに「3.11今伝えたいこと」をつづったポスターを製作した。モチーフとなっているのは生徒それぞれの「手」。地域を支えたり、未来を切り開いていくという思いや言葉が添えられている。各家庭に配布。「家族の避難場所」という欄があり、話し合って記入することで完成となる。
 
 

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