手口を知って防御!特殊詐欺 釜石のコンビニ2店機転で防ぐ 一方で被害も


2023/02/15
釜石新聞NewS #防災・安全

コンビニなどに配布されている特殊詐欺被害防止チェックシートを提示し注意喚起

コンビニなどに配布されている特殊詐欺被害防止チェックシートを提示し注意喚起

  
 各地で相次いだ強盗事件に絡み、特殊詐欺に関わったとして日本人4人がフィリピンから移送、逮捕された。このニュースに「決して人ごとではない」と思った人も少なくないだろう。釜石市内では昨年、特殊詐欺被害は確認されていないが、今年に入りすでに2件発生。一方、コンビニエンスストアや金融機関などが水際で被害を防ぐ例も増えていて、対応した店員や署員らは「氷山の一角」「手口を知ることが防御になる」と注意を促す。
  
 岩手県内の昨年の特殊詐欺認知件数は37件(前年比6件増)、被害額は約1億円(同812万円増)で、ともに増加。医療費返還などをかたる「還付金詐欺」、有料サイト利用料などを名目とする「架空請求詐欺」の増えているという。
   

詐欺被害、実在する団体をかたる

    
 市内では今年1月に80代男性が、通信事業者をかたる男らに約110万円をだまし取られる特殊詐欺被害(架空料金請求)が発生した。釜石署によると、6日に男性のスマートフォンへ利用料金に関するショートメールが届いたのがきっかけ。電話すると、NTT職員を名乗る男からスマホのウイルス感染と約10万円のアプリ利用料金があることを告げられた。身に覚えがなかったものの「後で返金される」との言葉もあり、金融機関のATM(現金自動預払機)から指定口座に振り込んだ。7日には日本個人データ保護協会、8日には日本ネットワークセキュリティ協会をかたる電話があり、それぞれ約50万円を振り込んだ。
   
 男性が連絡のあった団体のホームページで詐欺の注意喚起を行っていることを見つけて被害が発覚した。同署生活安全課の小田島徹課長は「実在の団体をかたる、ATMでの利用限度額ギリギリの金額を指定するなど手口は巧妙化している」と警鐘を鳴らす。
   

慌てた姿に直感

   
釜石署の前川署長(左)から感謝状を贈られた佐々木オーナー=1月31日、セブンイレブン釜石中妻町3丁目店

釜石署の前川署長(左)から感謝状を贈られた佐々木オーナー=1月31日、セブンイレブン釜石中妻町3丁目店

  
 1月下旬には市内のコンビニ2店が被害を未然防止。セブンイレブン釜石中妻町3丁目店では24日に対応事例が発生した。オーナー佐々木信也さん(51)によると、市内の60代男性が電子ギフト券20万円分を購入しようと来店。金額が高額だったことに加え、男性の慌てた様子を不審に思った佐々木さんが詐欺を疑って声をかけた。
   
 「急いで買わなければ」と繰り返す男性を事務所に案内し事情を聞くと「ウェブサイトの入会金として購入するよう指示された」などと話し、詐欺を確信した佐々木さんが説得、警察にも通報。男性は「詐欺ではない」と言い切っていたというが、署員の説明に納得して購入をやめた。
   
「お客さんの生活を守る」と気を引き締める佐々木オーナー(右)=1月31日、セブンイレブン釜石中妻町3丁目店

「お客さんの生活を守る」と気を引き締める佐々木オーナー(右)=1月31日、セブンイレブン釜石中妻町3丁目店

   
 佐々木さんは「レジ前では十分な対応は難しく、事務所で丁寧に話を聞き取ることができたのが良かった。親身になって話を聞くことが大事」と振り返った。同署から配布されている詐欺防止のチェックシートや「ギフト券の購入は1万円を超えたら声をかけるように」との対応を店内で共有しており、今回で3回目の被害防止に。「詐欺が多いなと感じている。警察の情報も聞きながら常に注意し、お客さんの生活を守りたい」と力を込めた。
    

少額でも…気づいた違和感

   
感謝状を受けたセブンイレブン釜石松原店の大久保店長(中)、店員の井戸さん(右)=2月9日、釜石署

感謝状を受けたセブンイレブン釜石松原店の大久保店長(中)、店員の井戸さん(右)=2月9日、釜石署

   
 セブンイレブン釜石松原店では30日に来店した80代男性が、店員の井戸麻美さん(28)にギフト券の分類を尋ねた。購入額は3000円だったが、理由を聞くと、すでに数枚のギフト券(未使用)を持っていて「違うと言われた」などと話した。用途が分からないまま、かたくなに買おうとする様子に詐欺を疑い、一緒に勤務していた店員が署に通報した。
   
 警察の聞き取りに、男性は「携帯電話に3億円当選とメッセージが届き、受け取るにはギフト券が必要だと言われた」などと答えたという。数日前に別のコンビニでギフト券(3000円分)を購入し、番号を伝えていて「1回やり取りをしてしまい、カモだと思われてしまった。よくあるケース」と同署。ただ、早い段階で止めてもらい、被害拡大は免れた。
   
「チームプレーで防ぐことができた」と振り返る井戸さん(左)と大久保店長=2月9日、釜石署

「チームプレーで防ぐことができた」と振り返る井戸さん(左)と大久保店長=2月9日、釜石署

   
 同店では昨年6月に被害防止の声かけ訓練を実施しており、井戸さんは「生かせた」と手応え。一方で「人によってケースは異なり、対応も違う。通報するタイミングを判断するのは難しい」と感じた。大久保隆規店長(61)は「高額の取り扱いを注意するのはもちろんだが、今回のような明らかに不審なケースにも注意したい。おかしい買い物には少額でも声がけするよう心に留め対応していく」と力を込めた。
   
 1月31日、2月9日に感謝状を贈った同署の前川剛署長は「詐欺被害は社会的に喫緊の課題であり、予断を許さない情勢。今回は適切な声掛けと親身な対応が水際の被害防止につながった。地域の安全安心のため連携は不可欠。一層の協力を」と求めた。また、被害が潜在化している恐れがあり、「金額の大小にかかわらず、心配な時は一人で抱え込まないで警察に相談してほしい」と呼びかける。

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