森林計測の作業効率向上、省力化へ 林業関係者 無人ヘリ調査の活用学ぶ


2022/07/09
釜石新聞NewS #産業・経済

産業用無人ヘリコプターを活用した森林計測研修会=釜石地方森林組合敷地

産業用無人ヘリコプターを活用した森林計測研修会=釜石地方森林組合敷地

 
 産業用無人ヘリコプターによる森林計測サービスの活用法を学ぶ研修会が6月30日、釜石市で開かれた。釜石地方森林組合(植田收代表理事組合長)が県内の自治体、森林組合職員らを対象に開催し、約30人が参加。同市片岸町の組合事務所周辺で、計測システムを運用するヤマハ発動機(静岡県)の社員がデモフライトを実演し、航空計測の利点や解析データの活用事例などを紹介した。
 
 広大な森林面積を誇る本県。適正な森林管理は気候変動に伴う集中豪雨災害防除のためにも重要視されるが、所有者の高齢化や施業人材の不足などにより、持続的な整備には課題も多い。そうした中、森林整備に不可欠な調査業務をレーザー計測機を搭載した無人ヘリコプターで行うことで、作業の負担軽減や効率化を図るサービスが注目を集める。
 
ヤマハ発動機森林計測部・加藤薫部長が無人ヘリによる計測サービスについて説明

ヤマハ発動機森林計測部・加藤薫部長が無人ヘリによる計測サービスについて説明

 
 同サービスを提供するヤマハ社は、農薬散布を行う無人ヘリの運用実績を基に、上空からの森林計測技術を開発。無人ヘリに搭載した機器から森林にレーザー光を照射(1秒間に75万回)することで、対象範囲の立木数、位置、樹種、樹高などの詳細なデータを得るシステムを確立した。レーザーはさまざまな角度で照射でき、地表面や幹にも到達。森林を内部まで3次元デジタルデータ化することで、見たい角度から立体的に全体を把握できる。各種データは地上計測に匹敵する高い精度で得られる。
 
立木の3次元デジタルデータの例が示された

立木の3次元デジタルデータの例が示された

 
 無人ヘリは地上からの遠隔操作のほか、あらかじめ設定した航路で飛ぶ自動航行機能も備える。1回の最大飛行時間は約100分、航続距離は約90キロで、1日最大約100ヘクタールの計測が可能。デモフライトでは地上から80メートルの高度(樹高30+50メートルを想定)での飛行や降下、水平移動、旋回などを実演した。前日に市内の山林で取った試験データも見せた。
 
森林計測用無人ヘリコプターのデモフライト

森林計測用無人ヘリコプターのデモフライト

 
無人ヘリの安定飛行の様子を地上から見学

無人ヘリの安定飛行の様子を地上から見学

 
可視化された計測データの説明を聞く参加者

可視化された計測データの説明を聞く参加者

 
 計測データは同社の解析により、顧客の用途や要望、GIS(地理情報システム)に対応した可視化が可能。得られたデータは、材積計算や路網設計、間伐作業の優先度など詳細な施業計画立案に生かされる。
 
 研修会に参加した釜石市水産農林課林業振興係の宮本祥子係長は「人が山に入っての調査は時間がかかり、その間、手付かずの状態が続いてしまう。紹介されたような計測法を活用できれば、施業の遅れを回避し早期の森林整備につなげられるのでは」と期待。森林環境譲与税の施行(2019年)により、今後、個人が管理不可能な私有林を市に委託するケースが増えることも予想され、「調査作業の負担軽減、技術的補完が可能な計測サービスを利用できれば非常に助かる」と話した。
 
研修会参加者は新たな森林計測手法に興味津々

研修会参加者は新たな森林計測手法に興味津々

 
 ヤマハ発動機森林計測部の加藤薫部長は「利用者からは精度の高いデータを得られるところが一番喜ばれている。森林所有者は自分の財産をより正しく理解でき、整備を委託される側も経済性の確認がとれる。地形データにより危険な傾斜地を把握することで、労働災害防止にもつながる」とメリットを説明した。無人ヘリによる森林計測サービスは19年に同社の新規事業としてスタート。東北ではこれまでに福島県での計測実績があるという。

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