梅酒の実、再利用した加工品づくりへ 釜石地方梅栽培研究会「可能性に期待」
梅酒の実を再利用した試作品を味わう生産者たち
釜石地域で栽培されたウメの実を使い、地元の酒造会社浜千鳥(新里進社長)が製造する「梅酒」。ウメの実を提供する生産者らでつくる釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長)が、梅酒製造後のウメの実(漬梅)を利用した加工品づくりで知恵を絞っている。6月20日、会員企業で漬梅加工品の開発を進める「麻生」(本社・神奈川県)の三陸釜石工場(釜石市片岸町)を見学。試作品のジャムを味見し、「おいしい」と手応えを得た。同会事務局によると、市内外で漬梅利用の動きもちらほら。資源・副産物を再利用して環境にやさしい循環型の取り組みにする考えだ。
釜石地方梅栽培研究会ではウメの安定生産や漬梅の有効活用を考える
同会は釜石市、大槌町のウメ生産者、梅酒製造の浜千鳥、漬梅を利用した商品開発を進める食品加工業や菓子製造業、小売販売業者ら22個人・団体で組織。良質なウメの栽培や安定した生産の確保を目指し、栽培講習などで技術力の向上、栽培推進を図っている。
ここ数年、浜千鳥による青梅集荷量は3~4トンで、梅酒は継続的、安定的に製造できるようになった。課題は漬梅の活用で、「食べてもおいしい」がすべてを使い切るのは難しかった。麻生三陸釜石工場が一部を使って加工試験事業を進めているが、種抜きなどで思いのほか手間がかかることが分かった。実を細かくする作業を効率よく行えるよう、昨年、カッターミキサーを購入。同会が県や市の補助金を活用し資金を出したほか、麻生も一部を負担した。
麻生三陸釜石工場で導入したカッターミキサーを確認した
20日の工場見学には会員ら15人ほどが参加し、導入したカッターミキサーを確認。試作品のジャムを試食した。加熱し種抜きした漬梅をミキサーでみじん切りした後、さらに過熱・煮詰めた試作品は「おいしい。ハイカラな味」と評価は上々。商品化、ジャムを活用した加工品づくりへ期待感を高めた。
2022年度総会も開かれ、昨年の青梅集荷実績(4138キロ)、前年産の青梅を使った梅酒の出荷量(720ミリリットル入り約9300本)などが報告された。本年度は計4回の集荷会、せん定や病害防除を学ぶ栽培講習会、先進地研修などを計画。生産者勧誘と生産面積の拡大運動、漬梅の商品開発と試験販売にも力を入れる。
収穫したウメの実を持ち込む生産者。期待を込め浜千鳥に託す
収穫したばかりの青梅の実を持ち込む参加者もいた。今年は春先に雨が少なく、木の成長と実のなり具合に不安があるとこぼす前川会長(76)だが、漬梅の活用が広がることで、ウメの単価や生産者への還元率が上がることを期待。一方、生産者の高齢化が課題だとして、「退職後に参入できるよう受け入れ態勢を整え、この地で末永くウメ栽培を継続させたい」と前を見据える。
釜石地域の農業振興に意欲を高める会員、助言する市や県関係者
浜千鳥醸造部長で杜氏(とうじ)の奥村康太郎さん(41)によると、地元の観光施設や盛岡市のホテルなどが漬梅を使ったジェラートや和洋菓子を売り出しているという。県外から漬梅自体の販売を希望する問い合わせもあり、全量を再利用できる可能性が見えてきた。市の地域振興作物として生産力向上へ支援を受けることができるようになり、「安定生産と新たな地場産業を結びつけた取り組み。知名度が上がれば、遊休農地の活用にもつながる。釜石型の農業振興に役立てたい」と意欲を見せた。
釜石新聞NewS
復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム